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Eco-DRRとは・意味

上空から見た森

Eco-DRRとは?

Eco-DRR(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)とは、生態系を活用した防災・減災のことを指す。主に開発途上国において、森林などの生態系が本来有する防災・減災機能を発揮させることで、自然災害リスクの低減および地域社会の発展、生物多様性の保全を実現するための取り組みとして注目されている。

温室効果ガスの増加に伴う気候変動により、海水面の上昇だけでなく集中豪雨、異常熱波などの発生頻度は年々増加しており、洪水・斜面崩壊・高潮被害など自然災害の発生リスクは世界的に高まっている。特に、開発途上国で人口が急速に増加し経済成長に伴い都市が発展することで、災害リスクの高いエリアの土地開発などが進み、災害時の被害を拡大させてしまう危険性は大きい。

一方でSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるように、サステナビリティや自然環境保全に対する社会的な関心が日々高まっている。そんな中で、土砂災害の防止や土壌保全をする「森林」や海岸線を守る「サンゴ礁」、洪水を緩和する「湿地」など、防災・減災機能を持った生態系を活かすことの重要性が再認識され始めているのだ。

Eco-DRRの考え方

Eco-DRRの基本的な考え方は、以下の2点に集約される。

  • 自然災害の被害に遭いやすい土地の利用や開発を避け、被災リスクを低下させる
  • 生態系の持続的な管理・保全・再生を行うことで、災害に強い地域をつくる

具体的には、土砂災害被害リスクの高い急斜面の近くや、津波・高潮の被害を受けやすい海沿岸部などの土地での居住やインフラ施設の建設を避けることで、人命や財産をそもそも危険から遠ざける。また、食料などの資源供給や観光・休養の場の提供、災害時の被害軽減など多面的な機能を持つ生態系を適切に保護することで、持続可能な地域をつくっていくのだ。

なお、Eco-DRRは生態系を活用した防災・減災への取り組みだが、ダムや堤防といった人工構造物による防災対策と相反するものではない点には注意が必要だ。Eco-DRRは地域の特性や土地の利用状況、地域の人々のニーズなどに応じて、生態系と人工構造物をうまく組み合わせて活用することを目指している。

Eco-DRRの事例

生態系の防災・減災機能についてはまだ定量的に明らかになっていない部分も多いが、すでにEco-DRRが実践されている事例は多くある。

中米ニカラグアのブラフという小さな漁村では、1988年に起きたハリケーンの影響によって砂浜が破壊され、本土から分断されるという問題が発生した。以降、以下のような自然と人工建造物を上手く使い分けた対策によって、防災・減災への取り組みが行われている。

  • 消波ブロックの設置:自然の漂砂現象により砂浜が回復し、子どもたちの遊び場として親しまれているだけでなく災害時の内陸への避難路としても機能
  • 海岸地域における植林:海からくる風の影響を軽減し、船舶の停泊や旅行者の安全確保が可能に
  • 人口や重要施設が集中した港周辺にコンクリートの海岸保全施設を整備:高潮発生時の被災リスクを抑え、人命や財産の保護

その他にも、マケドニアでの森林火災危機管理能力向上プロジェクトや、イランでの湿原環境管理プロジェクトなどさまざまな取り組みが進められており、日本の国際協力機構(JICA)も支援を行っている。

日本におけるEco-DRR

日本は降水量が多く地形が急峻だ。およそ150年前までは、過度の薪炭利用などが続いたことにより、土砂災害や洪水による被害が多発していた。そのため、対応策として植林や治山事業に取り組み、森林の防災・減災機能の活用技術や知見が多く蓄積されている。

日本で実践されている主な森林分野のEco-DRRの取り組みとしては、以下の3つがあげられる。

  • 保安林制度:防災・減災や観光・地域産業振興、環境保全などさまざまな目的に合わせた森林機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更などを規制する制度
  • 森林計画制度:長期的な視点に立った計画的で適切な森林の取り扱いを推進する制度
  • 治山事業:山腹の斜面崩壊を抑制するためのダム整備や植林など、森林機能の確保に必要な事業

各地域によってその環境や特性は異なるため、ハザードマップの作成などによって危険な箇所を洗い出し、それぞれの危険度や緊急度に応じた生態系活用の計画が各地で進められている。

またEco-DRRはこのような大々的なプロジェクトだけを指すのではなく、川の土手に植えられた桜の木が梅雨時期の増水への備えになるといったものも含み、私たちにとって身近なものでもあることも念頭に置いておきたい。

生態系は人間に多くの恩恵をもたらす一方で、無知なままに利用したり破壊したりすれば人間の脅威となる。サステナブルな社会を実現するために、私たちは改めて生態系への理解を深め、共存していくためのベストな方法を学び追求していかなければならないだろう。

【参照サイト】独立行政法人 国際協力機構 – 生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR)の実践
【参照サイト】環境省 – 自然の持つ機能の活用 その実践と事例




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