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CSR(社会的責任)とは・意味

CSR(社会的責任)とは?

CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)とは、企業が事業活動を行うに際して環境や社会に対して果たすべき責任のこと。国内外で広くCSRが注目されるようになった背景として、企業活動のグローバル化、環境問題の深刻化、政治家や公務員への賄賂などの不正の蔓延があげられる。

企業には、経済的利益の追求のみに注力するのではなく、法令や国際規範の遵守により環境や社会への負の影響を最小限に抑えるとともに、事業を通して社会的価値を提供することが求められている。

企業が遵守すべき国際規範

CSRにおいては企業が遵守すべき国際規範には、国連グローバルコンパクトなどがある。これらの国際規範は法令とは異なり罰則規定はないが、抵触した企業は顧客の信頼の喪失によるビジネス面の影響のほか、ESG投資を行う機関投資家の投資対象から除外されるなど資本市場での影響も免れない。

OECD多国籍企業行動指針

1976年に経済開発協力機構(OECD)は、企業に対して期待される責任ある行動を自主的にとるよう参加国の多国籍企業に対して勧告するため「OECD多国籍企業行動指針」を策定した。同指針に法的拘束力はないが、人権、雇用及び労使関係、環境、贈賄・贈賄要求・金品の強要の防止、消費者利益、科学及び技術、競争、納税等、幅広い分野における責任ある企業行動に関する原則と基準が定められている。

国連ビジネスと人権に関する指導原則

2011年に国連人権理事会で「ビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding Principles on Business and Human Rights」が採択された。国連での採択が全会一致であったことから「ビジネスと人権」に関する国際規範として広く浸透しており、国内外の政府、企業レベルで取り組みが進められている。我が国においても2020年に「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)が策定された。

国連グローバルコンパクト(UNGC)

国連グローバル・コンパクトは、国連と民間セクターが協力して健全なグローバル社会を築くことを目指して2000年に発足したイニシアチブである。UNGCの署名企業・団体は、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野・10原則へのコミットメントとその実現に向けた継続的な努力が求められる。

CSRが世界的に広まった背景

企業活動がグローバル化し、バリューチェーンが複雑に広がり、資本主義市場の競争が激化した1990年代以降、企業が社会経済や地球環境に及ぼす負の影響が注目されるようになった。地球温暖化や生物多様性の損失に加えて、サプライチェーンの上流で起きる児童労働や強制労働、環境汚染、また汚職や不正、食品安全、会計偽装といったコンプライアンス上の問題も頻発。特に多国籍企業は、地球規模の課題に対して影響を与える存在となっていった。

そうしたなか、欧米を中心としたグローバルなNGOが、多国籍企業に対する監視役として企業活動に対して圧力をかけるようになり、政策における「CSR」という考え方が欧州で登場するようになった。その後、「国連グローバル・コンパクト(2000年)」「リスボン戦略(2000 年)」「組織の社会責任ガイダンス規格 ISO26000(2010年)」を含む、様々な国際会議の場において、組織や企業の活動が与える影響が重視され、その責任の強化が言及されるようになった。

2011年、CSRの定義は「企業が社会において及ぼす影響に対する責任」と改定され、経済産業省も「企業が社会や環境と共存し、持続可能な成長を図るため、その活動の影響について責任をとる企業行動であり、企業を取り巻く様々なステークホルダーからの信頼を得るための企業のあり方」と定義している。

また、現在は「GRI スタンダード」と言われる、企業がCSRに関する情報開示を行う際の指針として参照されているサステナビリティ報告ガイドライン(NGO Global Reporting Standard)は、組織がサステナビリティに及ぼす影響について報告することを求めている。これまで外部化していた社会的コストを、自主的・主体的に管理、低減することがCSRの対応の基本であり、今、企業には活動やその結果について説明責任を果たすことが求められている。

日本の歴史とCSR

日本では、高度経済成長期の終わり、企業が公害などの多くの社会問題を発生させた反省をきっかけに、CSRが改めて注目されるようになった。一方、日本では古くから「自らばかりが儲けるのではなく、自分の行った商売の結果、 社会もよくなるものでなければならない」という教えもある。

現在の滋賀県の位置にあたる近江国の出身で、全国で活躍した近江商人は、利益は真摯に努力し責務を果たした結果の「おこぼれ」に過ぎないという戒めにより、利己主義に傾かないように自らを律していた。近江商人は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、いわゆる三方よしの精神を根底に持っていたことで知られ、物不足の際に、価格を吊り上げたり買い占めたりするようなことは行わなかった。その一方で、地域の公共事業には積極的に投資をしたとされる。

江戸時代の思想家で、石門心学という倫理学を確立した石田梅岩(いしだ ばいがん)は、「実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」と、自身と共に相手のことにも配慮して事業を行う重要性を説き、現在でいうCSRを的確に言いあらわしている。実はCSRは、日本の歴史に深く根付いていたのだ。

SDGsやESG、そしてCSRという言葉が一般的になった今、環境や社会に配慮した取り組みを企業が行うことはもはや「当たり前」となった。そんななか、社会をよくすることはもちろん、投資家や消費者からの評価や信頼など、企業イメージの向上を理由に、社会貢献に取り組む企業も少なくない。

活動を実践すること自体が大切なことである一方、昔から日本に受け継がれてきた「商人の精神」としてのCSRに立ち返り、それを行う意義を改めて考えながら自社の取り組みについて考えてみてはどうだろう。それは、「グリーンウォッシュ」や「表面的」な取り組みで終始しないための、大切なプロセスではないだろうか。

企業の取組みはCSRからサステナビリティへ

CSRは企業活動に伴う負の外部性を抑制することに重点を置いている。近年、2015年に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されたことが契機となり、環境や社会への負の影響を抑制するにとどまらず、環境問題や社会課題の解決に積極的に貢献することが企業に求められるようになった。

こうした変化を受けて、企業の事業を通した環境・社会への貢献を表す言葉として、ネガティブインパクトの抑制とポジティブインパクトの創出をともに包含する概念である「サステナビリティ」がCSRに代わって用いられるように変わってきている。

【関連記事】プラスチック削減に向けた、大手企業10社のCSR事例
【参照サイト】外務省 OECD多国籍企業行動指針
【参照サイト】UNIDO What is CSR?
【参照サイト】一般財団法人 企業活力研究所 「SDGs 達成へ向けた企業が創出する『社会の価値』への期待」に関する調査研究報告書
【参考文献】近江商人学入門―CSRの源流「三方よし」(淡海文庫)末永 国紀 著

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