FSC認証とは・意味
FSC認証とは
FSC(Forest Stewardship Council : 森林管理協議会)認証とは、環境、社会、経済面において、きちんと管理された森林を使用した製品である証のこと。認証マークを用いて、視覚的に消費者に届けることで、経済的な利益を生産者に還元できる仕組みで、世界で一番多く木材認証を発行している信頼性の高い制度である。
FSCが誕生するまで
FSCは、ドイツのボンを国際本部とし、1994年に設立された。背景には、1980年代、欧米では環境破壊や人権侵害につながるという理由から熱帯材の不買運動が起こっていたことがある。当時は、適切な管理を行っている生産者の木材とそうでないものを区別をする制度はなく、不買運動で木材が売れなくなった林業者が森林を農地に転換してしまうといったことが起きていた。
そこで、責任ある管理がされた森林からの木材を購入できるようにするため、26カ国の環境NGOや林業者などが中心となり、FSCが設立。FSCは、「環境」「社会」「経済」の3本の柱のバランスを重視している。また、日本国内では、国際本部から承認を受けた日本を代表する機関である「NPO法人日本森林管理協議会(FSCジャパン)」が、FSC認証製品が日本の消費者に届く社会の確立を目指して活動している。
世界の森林における現状
森林は、多様な生物の住処であるだけでなく、食糧や木材などの資源、空気や水などの生態系に恩恵を与えてきた。日々の生活の糧と長期の生活基盤を森林に依存する人は、約6,000万人の先住民族を含めて世界中に約3億5,000万人いるとされている。
生物にも人間にも恵みをもたらしてくれる森林だが、その減少が問題となっている。世界の森林面積は、約40億ヘクタールと、陸地の31%を占めており、国連食糧機関(FAO)によると、2015年〜2020年の間にその面積は平均で年間1,020万ヘクタール減少しているという。これは、2.2秒ごとにサッカー場一面分の森林が消失することを意味する。
このように森林が失われることによって、光合成が妨げられ、温室効果ガスの排出増加や生物多様性の危機、紛争や貧困などの社会問題、感染症の広がりなど、多様な問題が引き起こされる。森林の減少や破壊の原因は、気候変動や干ばつなどによる森林火災や違法伐採、酸性雨による枯れ木、ゴルフ場などのレジャー施設開発など様々だが、一刻も早く、私たちにできることに取り組んでいくことが求められている。
FSC認証とラベルの種類
責任ある森林管理の証であるFSC認証は、林産物や製品を森林から消費者に届けるまでを扱う全ての組織が対象で、「FM認証」と「CoC認証」の2種類の規格を満たしていると発行が可能である。
FM認証
森林が責任のある管理をされているかの審査に通ったもの。FSC認証の認証木材は、FM認証林から生産される。2022年9月時点で国内のFM認証林は約42万ヘクタールある。
CoC認証
認証林から収穫された材料の加工・流通過程を認証するもの。消費者の手に渡るまで、複雑で長い加工・流通過程で不適格な木材と混ざらないように確認している。FM認証の森林から生産された木材は、CoC認証のある組織でない限りFSC認証として消費者に販売することはできない。
FSCラベルの種類
FSCラベルは3種類ある。「FSC100%」は、認証林からの原料を100%使用する製品に付けられる。「FSCリサイクル」は、回収原材料を100%使用している製品が該当し、「FSCミックス」は、FSCに認められている原材料が複数使用されている製品に付けられる。
FSC認証のプロセス
FSC認証を取得するには5つのステップがあり、審査を通過すると第三者認証機関が認証を提供する。FSCは認証を直接発行せず、認証機関としての独立性を保っている。
1. 認証機関への問い合わせ
費用や時間の見積もりを行う。かかる手間は事業の規模や複雑さによって会社ごとに異なる。
2. 認証機関の決定
国内では、6社がFSC CoC認証サービスを提供している。認証機関が決定したら、条件や手順の説明を受けた後、契約を結ぶ。
3. 認証機関による審査
認証機関から派遣される審査員が、事務所、工場、倉庫などを訪問し、FSC認証規格に適しているかどうか審査を行う。そのほかに管理体制や使用伝票の確認、担当者の理解度をインタビューで確認し、周辺の利害関係者への聞き取りも実施する。
4. 認証機関による認証判断
審査員による認証審査報告書に基づいて、FSC規格の要求事項をクリアしていると、認証の発行がされる。不順守が発覚した場合は、認証機関によって改善が確認されるまで認証の発行はなされない。
5. FSC認証取得
5年間有効な認証書が発行される。FSCの認証取得者データベースに認証取得組織の情報が載るほか、ロゴなどのFSC商標を使うことができる。毎年1回、認証機関による年次監査を受けることで、認証を維持することができる。
FSC認証の導入事例とFSCの活動
FSC認証の商品はパッケージなど日頃から目に留まりやすいものはもちろん、日本でも幅広い業界で普及が進んでいる。また、FSCの国際的な活動から、森林だけでなく動物も人間も豊かになっている事例を挙げる。
お仏壇「然」
株式会社はせがわと株式会社中村製材所の両社は、環境保全と持続的な社会に向けて、日本初となるFSC認証を取得したお仏壇を共同開発し、2022年10月から販売を開始した。日本製で、素材には国産檜材と中村製材所のオリジナル特許商品「SKINWOOD®︎」を使用している。
カンタブリアヒグマを絶滅の危機から救った森林管理
カンタブリアヒグマが生息するスペイン北西部のアストゥリアス地方では、1980年代に違法な密猟や狩猟、人間の生活圏の拡大などによって、山の中でヒグマを見つけられないほど絶滅に追い込まれた歴史がある。
そこで、地元の自然団体FAPASとFSCが協力し、クマの保護を始めた。森林に野生のさくらんぼやりんごなどの固有の果実を植え、オーストラリアから持ち込まれた外来種のユーカリを駆除し、植林などを行った。その努力が実り、2020年現在、カンタブリアヒグマの生息数は300頭まで増えたという。
コンゴのバヤカ族と森林を守る
世界の生物多様性の80%が、先住民族が管理する土地面積の22%に存在している。自然への配慮が見られる先住民族たちの伝統的な知識や生活手段、消費のあり方には、学ぶことが多く、SDGsの達成に必要不可欠だ。にもかかわらず、彼らが持つ知識はしばしば無視されてしまっている。
コンゴのポコラ村には、木材伐採会社のCongolaise Industrielle des Bois(CIB)OLAMという会社がある。1968年に設立された同社は、コンゴの国有林210万ヘクタールを所有しており、そのうち200万ヘクタールがFSC認証を取得している。
FSC認証の原則の1つには、労働者の権利と雇用条件の保護が定められており、林業の最低賃金以上の支払いや安全衛生が実施される。これらによって、バヤカ族を含む従業員たちの権利が保障され、彼らは近代的な医療や教育にアクセスできるようになった。
FSC認証を取得する企業が少数民族や先住民族の暮らす地域にあることで、現地の人の生活が保障され、その結果自然環境も維持されることにつながった例だ。
まとめ
森林は世界中で減少している。FSC認証があることで、普段の消費から森林を守るだけでなく、森林に生活を依存する人々や生態系を傷つけない消費をすることができる。まずは、近くにある紙製品にFSC認証がついているかどうか探してみることから始めてみてはどうだろうか。
【関連記事】森林破壊
【参照サイト】Forest Stewardship Council FSC認証について
【参照サイト】Stewardship Council Good forestry saves the Cantabrian brown bear from extinction
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F
- FaaS(Farming as a service)
- Fab Lab(ファブラボ)
- Farm to Fork
- FemTech(フェムテック)
- FinTech(フィンテック)
- First Movers Coalition(FMC)
- Flight shame
- FOMO(Fear of missing out)
- FSC認証
- FtM(Female to Male)
- FTSE4Good Index(フッツィー・フォー・グッド・インデックス)
G
- GHG排出ピークアウト
- GNR革命
- GovTech(ガブテック)
- Green Climate Fund(緑の気候基金)
- Green Dating
- GRI(Global Reporting Initiative)
H
I
- IaaS(Infrastructure as a Service)
- IIRC(国際統合報告評議会)
- Inner Development Goals(IDGs)
- InsurTech(インシュアテック)
- Internet of Abilities(能力のインターネット)
- Internet of Animals(動物のインターネット)
- Internet of Behavior(行動のインターネット)
- Internet of Customers(顧客のインターネット)
- Internet of Human(ヒトのインターネット)
- Internet of Skills(スキルのインターネット)
- Internet of Things(モノのインターネット)
- IPCC
- ISSB
- IUU漁業
J
L
- LAC(Living Anywhere Commons)
- LCA(ライフサイクルアセスメント)
- LEAPアプローチ
- LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)
- Learning by doing
- Less is more
- Life-Centered Design
- LOHAS(ロハス)
M
- MaaS(Mobility as a Service)
- MAPA(Most Affected People and Areas)
- MENA(ミーナ)
- Medtech(メドテック)
- MDGs(ミレニアム開発目標)
- MSC認証
- MtF(Male to Female)
N
O
P
Q
R
S
- SaaS(Software as a Service)
- 里山イニシアチブ
- SASB
- SBT(Science Based Targets)
- SBTs for Nature(Science-Based Targets for Nature)
- SDGsウェディングケーキ
- SDGsウォッシュ
- SFDR
- Shecession
- Shecovery
- SOGI(ソジ)
- SPO(Sustainable Public Equity Offering)
- STEAM教育