Shecession(シセッション)とは?
働く女性にとって他人事ではなくなった言葉の一つが、“Shecession”である。2020年から続く新型コロナウイルスの影響で離職・失業する女性「She」と、不況や経済後退をあらわす「Recession」を合わせた造語だ。
2020年にマッキンゼー・アンド・カンパニーとLeanIn.Org が発表したレポートによると、調査の対象者となった女性の4人に1人は、新型コロナで休校になった子供の世話などに追われ、職場が柔軟な対応をできないがために、キャリアのシフトダウンまたは仕事を辞めることを検討したという(※1)。
また、アメリカの労働統計局が2021年4月に発表した調査によると、成人女性の失業率は2月の3.1%から約15%にあがった(※2)。それらのことから、アメリカメディアやSNSなどで「Shecession」という言葉が生まれる。当時、アメリカのカマラ・ハリス副大統領が当時、その状態を「国家緊急事態である」と発言したほどだ。
新型コロナが、特にワーキングマザーにとって大きな打撃となっていることがわかる。
日本におけるShecession
男女共同参画局によると、緊急事態宣言が発出された2020年4月、日本では就業者数が前月(2020年3月)から大きく減少した(※3)。男女別に見ると、女性の就業者数が70万人減少したのに対し、男性は39万人の減少。女性の減少幅が男性の1.75倍と大きいことがわかる。
就業者数の減少幅が大きい業種を男女別に比べると、女性の場合は、「飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「小売業」の順に多く、男性の場合は、「飲食サービス業」「建設業」「製造業」「小売業」の順に多い。
また、雇用形態を比べると、女性就業者全体の半分以上が非正規雇用であり、特にコロナ禍の影響を受けた「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」で非正規雇用の割合が高い。その一方で、男性就業者全体における非正規雇用率は低く、全体の約8割が正規雇用である。
このように、女性の雇用悪化が進んだ一因として、新型コロナウイルスに伴う経済的影響を受けた飲食業、サービス業、小売業における、女性の非正規雇用者の多さが挙げられる。
世界におけるShecession
マッキンゼーの調査によると、コロナ禍における女性の雇用悪化は、世界的な傾向だという(※4)。下記は、Shecessionに関するデータの一例だ。
- 新型コロナウイルス拡大に伴う雇用のぜい弱性は、女性の方が男性と比べて1.8倍高い
- 雇用全体に占める女性の割合は39%であるのに対し、コロナ禍の失業数全体に占める女性の割合は54%
女性の失業者数が多い理由として、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済的影響を受けやすい業種(飲食業、小売業、サービス業)に就く女性が多いことが挙げられる。
また、アメリカとインドを例に見ると、
- アメリカでは、コロナ禍以前の就業者全体に占める女性の割合が49%だったのに対し、コロナ禍の失業数全体に占める女性の割合は55%
- インドでは、コロナ禍以前の就業者全体に占める女性の割合が20%だったのに対し、コロナ禍の失業数全体に占める女性の割合は23%
と、国により差はあるものの、就業者数と失業者数の傾向が男女で逆転しているのが現状だ。
なぜShecessionが起きるのか
世界各国で起きてしまったShecession。その理由として、以下が挙げられる。
- 非正規雇用の割合が、女性の方が男性より高い
- テレワークが可能な職種に就いている割合が、男性の方が高い。その一方で、対面接触型の職種(飲食業やサービス業等)に就いている割合は、女性の方が高い
- コロナ禍以前から、家事、育児、介護といった家族のケアを男性より女性が担う傾向にあった。しかし、コロナ禍で学校や病院に通いにくくなる中、その傾向がさらに強まり、女性の就業機会が減少した
働く女性が職場に復帰するための “Shecovery”
そんな中で、企業側がより柔軟な働き方を促進し、女性の職場復帰を促す“Shecovery(シカバリー)”という概念が登場した。
これは、コロナ禍で家事と育児をしながらも仕事をしたいと願う女性が、職場に復帰するためのシステムや取り組みを指す。アメリカの大手広告代理店ジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)が発表する、「2022年で最も重要なキーワード」の一つにも選ばれた言葉だ。
実際の取り組みとして、ITの巨人であるメタ社(元:フェイスブック)やツイッター社などは、女性の離職を防ぐため、そして従業員の健康的で柔軟な働き方のため、在宅勤務を基本とするポリシーを設けた。
他にも、写真共有サービスを展開するPinterestは、女性や育児をする人に向けた有給での育児休暇を設けているなど、現在さまざまな企業で、女性が復帰しやすい制度づくりが進んでいる。
女性の離職は、国全体の経済にも打撃を与える。これから、いかにShecessionを回避していくか。各企業の対応が問われていくだろう。
※1 Women in the Workplace
※2 Employment Situation Summary
※3 男女共同参画白書 令和3年版(男女共同参画局)
※4 COVID-19 and gender equality: Countering the regressive effects(McKinsey&Company)
【参照サイト】Why Some Women Call This Recession a ‘Shecession’
【参照サイト】‘The liberation of the workplace’: Industry experts sound off on 2022, the year of the ‘Shecovery’
【参照サイト】IMF Working Paper – COVID-19 She-Cession: The Employment Penalty ofTaking Care of Young Children(International Monetary Fund)
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