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昆明・モントリオール生物多様性枠組とは・意味

生物多様性

昆明・モントリオール生物多様性枠組とは?

昆明・モントリオール生物多様性枠組とは、自然と共生する世界に向けた2020年までの世界目標、愛知目標を引き継いだ2030年までに達成すべき世界目標である。

2022年12月に、カナダのモントリオールで開催された、生物多様性条約第15回締結国会議(COP15)で定められた。愛知目標の成果やギャップ、教訓などをもとに、生物多様性との関係に変容をもたらす幅広い活動を実施するため、SDGsにも即した野心的な計画になっている。

愛知目標との比較

愛知目標を引き継いだ昆明・モントリオール生物多様性枠組であるが、愛知目標が達成されなかった反省をどのように活かしたのか。中長期目標の設定の仕方や考慮事項に、その違いをあげてみよう。

2050年に向けた長期目標の明文化

愛知目標の特出すべき点として、「人と自然の共生」という概念を、2050年のビジョンとして合意したことが挙げられる。

昆明・モントリオール生物多様性枠組でも、愛知目標から引き続き2050年「自然と共生する世界」の実現を掲げた。さらに、2050年に向けた4つの明文化したゴールについて、合意できたことは違いの1つだろう。

ゴールA
1. すべての生態系の健全性、連結性及びレジリエンスを維持・強化・回復させ、2050年までに自然生態系の面積を大幅に増加させる。
2. 既知の絶滅危惧種の人によって引き起こされる絶滅が阻止され、2050年までに、すべての種の絶滅率及びリスクが10分の1に削減、在来の野生種の個体数を健全かつレジリエントな水準まで増加させる。
3. 野生種及び家畜・栽培種の個体群内の遺伝的多様性が維持され、その適応能力が保護される。

ゴールB
生物多様性が持続的に利用、および管理されるとともに、生態系の機能やサービスを含む自然がもたらすものが、大切にされ、維持され、そして現在低下しているものが回復されることで増強し、持続可能な開発の達成を支え、2050年までに現在および将来の世代に便益をもたらす。

ゴールC
国際的に合意されたアクセスと利益配分に関する法的文書に従い、遺伝資源に関連する伝統的知識を適切に保護しつつ、遺伝資源や、それに関するデジタル配列情報および該当する場合には遺伝資源に関連する伝統的知識の利用から生じる金銭的・非金銭的利益が、公正かつ公平に、必要に応じて先住民及び地域社会も含めて配分されるともに、2050年までに大幅に増加することによって、生物多様性の保全及び持続可能な利用に貢献する。

ゴールD
年間7,000億ドルの生物多様性の資金ギャップを徐々に縮小し、資金フローを昆明・モントリオール生物多様性枠組と2050年ビジョンに整合させながら、本目標を完全に実施するための、資金、能力構築、科学技術協力、技術へのアクセスと技術の移転を含む、十分な実施手段が、すべての締約国、特に後発開発途上国、小島嶼開発途上国、並びに経済移行国に対して確保され、衡平にアクセスできるようになる。

2030年に向けた中期目標に明記された数値

愛知目標で設定された中期目標の反省点の1つに、数値目標を盛り込んだターゲットが少なく、成果を測りにくいことがあった。

その反省を活かし、昆明・モントリオール生物多様性枠組では、30by30をはじめより多くのターゲットに対して数値目標が掲げられた。

30by30の他には、ターゲット7に書かれた、過剰栄養塩や農薬の半減や、世界の食糧廃棄の半減、生物多様性に有害なインセンティブに対して年間5,000億ドルの削減などが明記されている。

目標達成に向けた考慮事項

昆明・モントリオール生物多様性枠組には、達成すべき目標だけではなく、達成に向けた考慮事項も書かれている。考慮事項の中に、愛知目標の時と比べ、大きく異なる点が2つある。

1つは、先住民および地域社会の権利への配慮に関してである。

愛知目標では、中期目標の中で1つだけが配慮をする形であったが、「枠組のいかなる内容も、先住民が現在有しているか将来獲得する可能性のある権利を制約または消滅させるものと解釈されるべきではない」と昆明・モントリオール生物多様性枠組には明記された。

また、この枠組みが成功したといえるのは、“生物多様性が保全、回復されるだけではない”とも明記されており、「ジェンダー平等と女性の地位向上および格差の提言の確保に依存」して、成功か否かを評価するとされている。

社会問題の同時解決が求められる現在。この10年間で、世界的な視座がどれほど変わったのか、配慮事項の大きな変化からも認識することができる。

【参考サイト】昆明・モントリオール生物多様性枠組(暫定訳)
【参考サイト】生物多様性条約第15回締約国会議第二部等の結果概要|外務省
【参考サイト】「昆明-モントリオール生物多様性世界枠組み」が採択! – 日本自然保護協会オフィシャルサイト
【参考サイト】ポスト2020生物多様性枠組み(GBF)は政治決断の舞台へ ― 成否を見極める5つのポイント ― – 日本自然保護協会オフィシャルサイト




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