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ソーシャル・オーディットとは・意味

工場にいる女性

ソーシャル・オーディットとは?

ソーシャル・オーディット(Social Audit)は、日本語では「社会的責任監査」と呼ばれ、企業の社会的責任に関する活動、例えば、自社内やサプライチェーン上の取引先における労務・人権・環境等に関する対応を対象として、監査・評価を行うことを指す。

ソーシャル・オーディットの背景と発展

ソーシャル・オーディットの概念は、ビジネスの非財務パフォーマンスを可視化するという試みの中で1940年頃に誕生していた。しかし、現代的な意味でのソーシャル・オーディットが注目されはじめたのは、1990年代に大手アパレルメーカーの下請工場での児童労働が社会問題となったことが発端であるという。アパレルメーカーは、自らの社会的責任を担保しレピュテーションリスクに対応するために、サプライチェーン全体の環境・社会への配慮に関するソーシャル・オーディットを活用している。

ソーシャル・オーディットには、自社で行うものと外部の監査サービス機関が実施するものがあるが、後者についてはAPSCA(Association of Professional Social Compliance Auditors)という業界団体があり、2022年10月時点で105 か国、55の監査機関が加入している。外部機関によるソーシャル・オーディットの市場は、3億ドルを超えると推定されている。

ソーシャル・オーディットの内容

ソーシャル・オーディットを行う際に準拠される主な国際基準や枠組みは複数あり、それぞれの概要や特徴は以下のとおりである。

BSCI行動規範

ベルギーを拠点とするFTA(Foreign Trade Association、現在のamfori)が2003年に設立したBSCI(Business Social Compliance Initiative)により、グローバルサプライチェーンにおけるソーシャル・パフォーマンス向上のために策定された行動規範。現行の規範は2014年に改定されたもので、公正な報酬や児童労働の排除を含む、11の原則で構成される。ambofiメンバー並びにビジネスパートナーは、原則に沿って自社のグローバルサプライチェーンにおいて人権デューデリジェンスと環境保護を実施することへの決意を表明する。

SA8000基準

米国を拠点とするSAI(Social Accountability International)によって策定された認証規格であり、国際人権宣言、ILO条約、その他の国際的な人権・労働に関する国家法規に基づき、従業員や取引先労働者の権利の行使及び保護を目的としている。児童労働、強制労働、差別の撤廃、健康・安全など9つの分野について、企業が第三者機関の認証を受けるものである。

Sedex(Supplier Ethical Data Exchange)

英国の小売業者や監査会社を中心に2001年に設立された会員制組織であり、企業がグローバルサプライチェーンにおける労働条件を管理・改善するためのオンラインプラットフォームである。世界180カ国60,000以上のサプライヤー及びバイヤー企業・組織が登録されており、サプライヤー情報の共有や、人権や環境などの社会的な潜在リスクに関する評価・分析が可能なウェブプラットフォーム及びツールが提供されている。会員間のコラボレーションと情報収集・共有を通じて、「責任ある調達」や「サプライチェーンの透明化」を目指している。

RBA(Responsible business alliance)

グローバルサプライチェーンにおいて、社会・環境・倫理状況の改善に取り組む主要企業からなる非営利企業連盟。電気電子機器産業、またはそれらが主な部品である産業およびそのサプライチェーンにおいて、労働環境が安全であること、労働者が敬意と尊厳を持って処遇されること、さらにその事業活動が環境に対し責任を持ち倫理的に行われることを確実にするための基準を定めている。

ソーシャル・オーディットの課題

ソーシャル・オーディットは、サプライチェーンにおける労働環境や安全性の向上に貢献してきた一方で、十分な役割を果たせなかった事例もある。

例えば、ファストファッションの課題を浮き彫りにしたラナ・プラザ崩落事故では、ブランドへの批判と合わせ、ソーシャル・オーディットへの批判も寄せられた。なぜなら、崩壊したビルに入っていた2つの工場に対して、崩壊の数か月前にソーシャル・オーディットが実施され、BSCIの認証を取得していたからである。ビル崩壊の原因となった耐震性を無視した違法な増築については、ソーシャル・オーディットで見過ごされていたという訳である。

ソーシャル・オーディットを請け負った企業は、建物構造の技術的検査はBSCI監査の対象外であったと声明を出しており、BSCIも「ソーシャル・オーディットに過度な期待を寄せないことが重要だ」と述べているが、このような事例は、ソーシャル・オーディットへの期待や信頼が揺るぐ要因となった。

上記のような課題のほか、ソーシャル・オーディットは企業が自社の社会的パフォーマンスを測定するために任意に実施するものであるため主観的になりやすいという点や、確立された統一の基準が設定されていないという点などが課題として挙げられる。

ソーシャル・オーディットの今後

企業のサステナビリティへの対応の重要性はますます高まっており、サプライチェーンにおける社会的責任の推進は急務となっている。このような中、ソーシャル・オーディットが果たす役割や期待は大きく、国際的な基準の発展や統一化についても、今後進展していく可能性があるだろう。

【参照サイト】ソーシャル・オーディットに関する一考察 ~その歴史、事例と課題~
【参照サイト】APSCA
【参照サイト】amfori BSCI
【参照サイト】SA8000® Standard
【参照サイト】Sedex
【参照サイト】Responsible Business Alliance




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