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グリーフテック(Grief Tech)とは・意味

グリーフケア

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グリーフテック(Grief Tech)とは?

グリーフテック(Grief Tech)とは、死別などの「喪失」による悲しみや痛みを抱える人のケア・サポートに、さまざまなテクノロジーを活用する取り組みのこと。

グリーフ(Grief)とは、英語で「深い悲しみ・悲痛・悲嘆」を意味する言葉である。また喪失を体験して悲しみを抱える人に寄り添い、悲しみから立ち直り自立できるようケア・サポートすることをグリーフケア(Grief care)という。

グリーフテックはグリーフケアにおいて、IT技術や人工知能(AI)、仮想現実(VR)といったテクノロジーを用いて悲しみの処理や心の回復をサポートすることを目指す。

グリーフテックの動向

グリーフテックは、グリーフケアが盛んなアメリカをはじめとする欧米で開発が進んでいる。

例えば、グリーフケアのためのモバイルアプリやウェブコミュニティ、ビデオチャットを利用したオンラインセラピーなどが実際に提供されている。

そうしたサービスはグリーフケアを支援する非営利団体などが提供している場合もあり、アプリ内のサポートグループで仮想セッションを行ったり、チャット機能を通してメンバー同士でグリーフを共有したり、グリーフジャーナルをつけたりする。

また瞑想やマインドフルネスを通じて悲しみに対処するアプリや、パズルなどで遊びながら感情を処理していく子ども向けのモバイルゲームアプリなどもある。

さらに現在、今後のグリーフケアのあり方を変える可能性があるとして注目されているのはAIやVR技術を活用したグリーフテックだ。

AIやVR技術を活用したグリーフテック

人工知能(AI)や仮想現実(VR)技術を用いたグリーフテックは現時点ではまだ開発段階のものが多い。中でも注目されているのが、AI技術の活用だ。活用例としては、以下のようなものがある。

人工知能(AI)技術

グリーフケアを目的としたAIチャットボットを通して対話をすることにより、悲しみに向き合ったり、グリーフを乗り越えたりするためのサポートやアドバイスを提供する。

また顔認識や音声認識などの技術を用いた感情認識AIによって悲しみの感情を識別し、その人の状態に合わせて適切なサポートやケアを提案するグリーフテックがある。

そのほか音声認識AIを活用することで、生前の音声データから亡くなった人の音声を作り出し、バーチャル上でまるで故人と直接話しているかのように会話ができるシステムもある。

仮想現実(VR)技術

VRを活用したグリーフテックでは生前の写真や動画、音声データなどから亡くなった人をバーチャル上で再現することができる。

まだ実証段階のものがほとんどだが、バーチャル上で再現された故人と会話をしたり、食事を取ったりできるグリーフテックが開発されている。

こうした技術にAI技術をかけ合わせることで、よりその人らしいアバターとバーチャルで会話をすることも可能になる。

グリーフテックの事例

グリーフテックの中でも、現時点で実際にサービスとして提供されている事例を紹介する。

HereAfter AI

アメリカ・カリフォルニアに拠点をおくHereAfter AIは、生前に記録した音声と音声認識AIを使って、亡くなった人と会話することができるクラウドサービスを開発している。

ユーザーは生前にHereAfter AIアプリのチャットボットを通じて、自分の人生や思い出に関する様々なインタビューに答え、音声を記録しておく。

すると亡くなった後でも、家族や友人などがアプリを通して質問を投げかけると、呼びかけに答えたり、その人らしい言葉をかけてくれたりするシステムとなっている。

StoryFile Life

AI技術を活用した対話型ビデオサービスを提供するアメリカのスタートアップStoryFileは、生前に記録した映像や音声、画像とAIを活用して、音声だけではなくビデオを通して亡くなった人とインタラクティブに会話ができるStoryFile LifeというWebアプリを提供している。

HereAfter AIと同じく、生前にパソコンやスマートフォンで様々な質問に答えるインタビュー映像を録画しておくと、亡くなった後に家族や友人がアプリを通して、故人とビデオで対話しているような体験ができるという。

家族や友人がアプリ上で質問すると、プラットフォーム上に記録されたデータを基に、AIが尋ねられた質問に最適な答えを見つけて再生してくれる仕組みとなっている。

グリーフテックの可能性

グリーフテックは医師やカウンセラーと違い、24時間どこにいてもサポートを提供することができる。

そのため周りの人に助けを求めることをためらう人や、遠隔地や孤立地域に住む人々に、いつでも精神的なサポートや寄り添いを提供することができる。

またAI技術はグリーフケアにおいて、個々の状態やニーズに合わせてカスタマイズされたアドバイスや情報を提供することができる。それにより効率的に喪失による悲しみを緩和し、心の回復をサポートできる可能性がある。

グリーフテックに対する議論

しかしグリーフテックは人々の死への捉え方や死生観をこれまでと大きく変える可能性もあり、倫理上の問題や有用性などが議論となっている。

懸念点の一つとして、グリーフテックを通して亡くなった人とまるで本当に会話をしているかのような体験ができることで、かえって過去にとらわれ前に進むことができなくなってしまい、悲しみからの回復を妨げてしまう可能性があるといわれている。

実際に心理学における複数の研究から、亡くなった人と再びつながりを求める行為は、精神的な健康状態を悪化させてしまう原因になりうることが分かっているという。

今後グリーフテックが普及していったとしても、医師やカウンセラーに代わるものではなく、テクノロジーはあくまで人間が行うケアを補完するツールであることを忘れてはいけない。

必要な時には専門家を頼り、家族や友人など、周りの人同士が実際に寄り添い合うグリーフケアを前提に、そのサポートとしてグリーフテックを活用していくことが重要だ。

【参照サイト】HereAfter AI
【参照サイト】StoryFile Life
【参照サイト】Could Artificial Intelligence Change the Way We Grieve?
【参照サイト】The rise of ‘grief tech’: AI is being used to bring the people you love back from the dead
【参照サイト】Technology that lets us “speak” to our dead relatives has arrived. Are we ready?
【参照サイト】Technology Is Impacting Grief. But Is It Helping?
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