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EU-ETSとは・意味

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EU-ETSとは?

EU-ETSとは、欧州連合域内排出量取引制度(European Union Emissions Trading System、以下EU-ETS)のことである。わかりやすく言うと、EU圏内で二酸化炭素をはじめとする環境汚染物質(温室効果ガスなど)の排出量を減らすための取り組みだ。

EU-ETSは世界最大の炭素排出量取引制度であり、2005年に施行されて以来、すべてのEU加盟国および、アイスランドやリヒテンシュタイン、ノルウェーなどの非EU加盟国でも運用されている。制度の適用期間は以下の4つのフェーズに分類される。

  • 第1フェーズ:2005-2007年
  • 第2フェーズ:2008-2012年
  • 第3フェーズ:2013-2020年
  • 第4フェーズ:2021-2030年

この制度は、1997年採択の京都議定書で定められた「温室効果ガス削減目標」を達成するためのEUにおける重要な取り組みの1つだ。EU-ETSは、EUのエネルギー気候変動政策枠組みの中でも約4割の排出量をカバーする主要な取り組みとして位置づけられている。

EU-ETSの仕組み

EU-ETSはキャップ&トレード制度で、対象国全体の排出量に上限を設け、その中で取引することを原則としている。対象者はその範囲内で必要・不要な排出枠の売買が可能だ。1つの排出枠を持つと、その枠の保有者は1トンのCO2を排出できる権利を有する。

つまり、排出量を所有する排出枠の範囲内に収めた企業は、余剰排出枠を市場で売ることができる。一方で排出量が所有する排出枠を越えてしまう企業は、以下のような方法で対応する必要がある。

  • より効率のよい技術に投資する
  • 利用するエネルギー源をカーボン集約的でないものに変更する
  • 市場で排出枠を買う

多くの企業は、これらの選択肢を組み合わせるなどしてコスト効率の最も良い方法を導き出して対応している。

EU-ETSの対象

EU-ETSでは、当初より主に以下のようなエネルギー部門と産業部門における1万2,000以上の施設を対象としている。

  • 発電
  • 鉄鋼
  • セメントやガラス製造のような鉱物処理業(窯業)
  • パルプ・紙製造業

さらに2021年の改正案では、海運、道路輸送、建物(化石燃料などの暖房を利用する住宅等)も対象に加えられている。

排出枠の配分について、第1・2フェーズにおいては過去排出量の既得権を優先したグランドファザリング形式での配分がなされていたが、第3フェーズ以降においてはベンチマーク方式に切り替えられている。ベンチマーク方式は排出削減の努力を行ってきた企業に有利に働くため、より公平な割り当てがなされていると言えるだろう。

EU-ETSの課題

第4フェーズに突入している現在、景気の低迷や補助制度の運用などもあり全体的な排出量は当初より減少傾向にある。

しかし、こうした急激な脱炭素化への動きや排出枠価格の高騰などが、世界的インフレを助長するという課題もある。

多くの企業は排出量の削減が追いつかず排出枠の購入を余儀なくされており、そのコストを商品の価格に転嫁する動きも出てきている。このようなグリーンインフレーション(緑のインフレ)と呼ばれる気候変動対策に由来する物価上昇は、私たち消費者の生活にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

地球規模での脱炭素化に向けた取り組みは不可欠だが、各企業にとってその投資にかかる費用や労力は時に収益を圧迫しかねないほど膨大だ。しかし積極的に努力する企業が損をする社会であってはならないため、今後も社会の仕組み作りが不可欠となるだろう。

そして、企業の脱炭素化に向けた取り組みを最終的に評価するのは消費者である私たちだ。消費者である私たちも社会の一構成員として、サステナブルな社会へ貢献する企業が生き残っていく仕組みを築いていかなければならないのだ。

【参照サイト】一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 – 海外の炭素税・排出量取引事例と我が国への示唆
【参照サイト】WWF ジャパン – 欧州排出量取引制度(EU ETS)に関する Q&A
【参照サイト】North – 脱炭素化への舵取り:「EU-ETS」を理解する
【参照サイト】JETRO – 欧州委、排出量取引制度(ETS)改正案を発表、道路輸送や建物も対象に
【参照サイト】時事通信社 – 排出権高騰、脱炭素の課題に 「緑のインフレ」に拍車―欧州




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