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共感疲労とは・意味

共感疲労

共感疲労とは?

つらい状況に置かれた人の苦悩や悲しみに寄り添いすぎてしまい、自分自身の心が疲れストレスを感じてしまうこと。ひどくなると無気力状態に陥ってしまうこともある。

Carla Joinsonが1992年に看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)について言及したことが始まりと言われている。その後アメリカの心理学者Charles Figleyが著書の中で「共感疲労(Compassion fatigue)」を定義し、当初は医療従事者や心理カウンセラーなど他者を支援やケアする職業の人々に起こりやすいものと考えられていた。

しかし、2001年にアメリカで発生した同時多発テロや、2011年の東日本大震災など、テレビなどで繰り返し流される大惨事の映像を見ることで、心身に不調をきたす人達が現れた。また最近では、ロシアのウクライナ侵攻や、パンデミック、韓国・梨泰院の転倒事故などの衝撃的な映像やニュースに影響を受け、共感疲労を引き起こす人が増加している。こうした背景にはスマートフォンやSNSの普及によって、災害や事故のニュースを簡単に入手し、繰り返し閲覧できる状況などが身近にあることも考えられる。

共感疲労の主な症状

出来事の種類によっても少しずつ異なる部分はあるが、共感疲労の主な症状として下記のものなどが挙げられる。

  • 身体的、心理的、感情的な疲労を感じている
  • 無力感、絶望感、無気力感を感じる
  • イライラしたり、怒ったり、悲しんだり、無感覚になったりする
  • 様々な活動から遠ざかったり、またはそれに対する喜びや楽しさが減少したりしている
  • 他人の苦しみについて反芻し、その苦しみの原因となっている出来事や人に対して怒りを感じる
  • 苦しんでいる人を助けるために十分なことができなかったなどと、自分を責めたり、悩んだりする
  • 個人的な達成感や仕事上の達成感が減少する
  • 世界観やスピリチュアリティが変化する
  • 食欲や睡眠障害、吐き気、めまいなどの身体的な症状がある

共感疲労になりやすい人の特徴

ものごとの捉え方や感じ方は人によって様々で、同じニュースを見たり、状況を体験しても共感疲労になる人とそうでない人がいる。ここでは一般的に共感疲労を感じやすいとされる人の特徴をいくつか紹介する。

  • 他人に親切で、相手に気を遣いすぎる人
  • 感受性が強く、心の微細な動きを感じ取れる人
  • 過去にトラウマ的な事柄を経験したことがある人
  • 好奇心が旺盛な人
  • 自分の役割や社会的立場に使命感を持っている人
  • ネガティブ思考の人
  • 理想と現実にギャップを感じやすい人
  • 公私の境界が保ちにくい人
  • 自己肯定感が減少している人

共感疲労にならないためには

共感疲労は、どんな人でもその心の状態などによってなり得ることがある。またそういった状態が長く続くことで、うつ病や不安神経症、強迫性障害など心の病いを引き起こし、最悪の場合、薬物使用障害などにつながる恐れもある。大切なのは、自身が「共感疲労かもしれない」と認識し、セルフケアできるように普段から心がけておくことだ。自分を大切にするためにも下記のような対策方法を知っておこう。
定期的な休暇、十分な睡眠、健康的な食事をとるようにする
体の不調は心の不調にもつながりやすいため、体調を管理し、健康的な生活を心掛けよう。瞑想や定期的な運動も効果的だ。

デジタルデトックスなど、意識的に情報から遠ざかる

現在では生活の中にスマートフォンやパソコンが身近なところに存在し、様々な情報に簡単にアクセスすることができる。しかし予期せず見たくない情報や映像にも触れてしまうこともあるため、ながら見などをせず、意識的にデジタルデバイスから距離を置く習慣を作ってみる。

仕事とプライベートのバランスをとり、オンとオフの切り替えを積極的に行う

最近はリモートで仕事をする人も増え、オンとオフの境界が曖昧になっていることも多い。夜になったらパソコンの電源を落とす、休日に仕事のメールを見たとしても返事は月曜の朝にするなど、自分なりのマイルールを設定しプライベートの時間を確保する。

信頼できる人や専門家と、感情について話し合う

疲れたり苛立ちを感じたりするときは、自分の中に溜め込まず、こちらの話にきちんと耳を傾けてくれる人にシェアしてみよう。心の中のモヤモヤを「別の誰かに話す」ことによって自分の外に出すことで、その原因と距離が生まれ、心が楽になることがある。

自分がコントロールできるものに意識を向ける

自分がコントロールできないものに過度な期待や落胆するのではなく、部屋の片付けや植物への水やり、身近の誰かに優しくするなど、自分でコントロールできるちょっといいことに焦点を当てると、ネガティブな感情が薄れていく。また、チャレンジしたかった学びや趣味などに時間を使うことも、ポジティブな思考につながる。

まとめ

辛い状況に置かれた人たちに心を寄せ、共感をするのは人間として大事な感情のひとつではある。
しかし、すべての人が同じ環境で生きているわけではなく、また、自分のタイミングで世界が動いているわけでもないので、今すぐ行動を起こしたくても叶わない場合もある。そうした場合に、世の中や自分の非力を嘆くのではなく、人にはそれぞれ与えられた役割があることを受け止め、今この瞬間や目の前の日常に感謝し、自分自身を大切にすることに目を向けてみよう。いざ、自分が誰かの役に立てることが見つかったときにすぐに動けるように、まずは心身を健やかな状態に保つことを心掛けてみてはどうだろうか。

【参照サイト】Psychology Today | Compassion Fatigue
【参照サイト】Banner | Compassion Fatigue: Watch for These Warning Signs
【参照サイト】読売新聞オンライン | 事件や事故の映像見て心身に不調…「共感疲労」、SNS繰り返し閲覧に注意 情報得る手段のコントロールを




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