代替肉(フェイク・ミート)とは・意味
代替肉とは?
代替肉とは、肉に風味や見た目を似せた、植物性タンパク質でできている食べ物のこと。
ベジタリアン、ヴィーガン、フレキシタリアンなどの肉を食べない人や、食べる量を減らす人が増えている中で、今代替肉の市場規模は大きくなっている。
アメリカでは西海岸を中心に、フードテックにおける代替肉の成長がめざましく、The Good Food Institute によると、代替肉市場は2017年から2019年にかけて、37.8%の伸びを見せている(※1)。特に、ハンバーガーの代わりとなる牛肉のパティに似せた植物性代替肉から始まったビジネスは、多くの著名人からも投資を集め、ユニコーンビジネス(価値総額が10億ドルを超える企業)となった。
主な代替肉の企業
代替肉の先駆け的存在が、ビヨンドミートだ。ビヨンドミート社は2009年にカリフォルニアでスタートし、100%植物性の肉代替品を作っている。彼らが掲げるミッションの軸は4つ。人体の健康を考え、環境へポジティブに働きかけ、地球上の資源の問題に立ち向かい、動物福祉を改善すること。
ビヨンドミート社の代替肉はえんどう豆が主成分で、ココナッツオイルでテクスチャを、ビーツで色を再現している。従来のハンバーガーと比較すると、水利用を99%、土地利用を93%、温室効果ガスを90%、エネルギー利用を46%抑えることができる。
現在、ビヨンドミートの代替肉はハンバーガーパティに限らず、ソーセージやミートボール、ひき肉など幅広く展開。アメリカの大手スーパーマーケットの多くで購入でき、家庭でさまざまな料理を楽しむことができるほか、ダンキンドーナツやサブウェイなどのファストフードチェーンや飲食店でも取り扱われている。ケンタッキーフライドチキンにチキンナゲットも提供しており、牛肉の代替だけではなく鶏肉の代替肉市場にも進出済みだ。
ビヨンドミートと肩を並べるように勢いを見せているのが、インポッシブルフーズだ。 カリフォルニアを拠点に2011年に設立された。スローガンは、「肉を食べて、地球を救う」。ここで言う肉とは、代替肉のことだ。
彼らの代替肉は大豆のタンパク質でできている。限りなく本物に近い肉の風味を再現すべく、大豆から抽出したヘム(ヘモグロビンに似た独自の成分)に自信を持っている。インポッシブルフーズ社も、従来の肉と比較し、水利用を86%、土地利用を96%、温室効果ガスの排出を89%削減できることを掲げている。
インポッシブルフーズの代替肉は、アメリカ大手ハンバーガーチェーン・バーガーキングの看板商品であるワッパーのベジタリアン版「インポッシブルワッパー」や、スターバックスの朝食用のサンドウィッチに使用されるなど、広がりを見せている。またチェーン店だけでなく、多くの一般飲食店でも取り扱われている上に、最近は家庭向け調理用の商品もスーパーマーケットなどで手に入るようになった。
ビヨンドミート社とインポッシブルフーズ社のいずれも、アメリカ以外の国や地域でも展開されている。
日本における代替肉
フードテックと呼ばれる規模ではなくても、日本でも代替肉を日常生活の中で目にする機会は珍しくなくなってきた。
例えば、モスバーガーのグリーンバーガーやドトールの全粒粉サンドのパティはいずれもプラントベース。さらに、2020年7月にはコメダ珈琲店が銀座に全メニュープラントベースの店舗をオープンした。
チェーンのカフェや飲食店に加え、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでも、大豆ミートなどの代替肉商品は増えている。
代替肉が注目される理由は?
代替肉市場がここまで大きく成長している背景には、大きく分けて4つの理由がある。
現在世界で流通している食肉のほとんどは工場式畜産のシステムからきており、動物を人の手で搾取し商品として製造・販売する大規模な畜産のあり方に疑問視する声が増えている。
多くの水を要する上に水質を汚染し、さらには飼料栽培も含め地球上の土地の大部分は今畜産に充てられている。それは増加しているため、アマゾンの森林火災や世界中の森林伐採にもつながっていることに加えて、大量のメタンガスを発する牛は、地球温暖化の大きな一端を担っている。
商業的畜産が拡大すると同時に、世界で食の不均衡も生まれている。現在世界で育てられている大豆のうち、家畜の飼料に充てられている量は9割に近い(※2)。大豆や穀物を育て、家畜に与え、精肉し、一部の人しかそれを食べられない現状は効率がいいとは言えない。現に、畜産は全体の18%のカロリーを提供するにとどまるのに、世界中の農地の83%を占めている(※3)。畜産を減らし、多くの人が充分に食べるものへのアクセスがある仕組みに変えることで、世界の飢餓人口を減らすことができる。
そして、個人の健康面を考慮した選択。肉食過多の食生活の場合、がん、糖尿病、高血圧、心臓疾患など健康上の支障が出る可能性が高まると言われている。特に赤身肉と加工肉の摂取量に関しては注意が必要だ。また、体質的な側面が理由の場合もある。
代替肉の問題点
インポッシブルフーズ社は商品化にあたり、FDA(Food and Drug Administration、アメリカの食品医薬品局)から食品として安全性の認可を受けるため、最小限に規模を抑えつつも動物実験をした事実がある。画期的なプロジェクトであるゆえの決断には、賛否両論がある。また、インポッシブルフーズ社は、原料に遺伝子組み換えを行っている。一方で、ビヨンドミートは、動物実験も遺伝子組み換えも行っていない。
また、代替肉は往々にして加工品であり、健康的かどうかの判断は個人間で差異が出る。
代替肉の今後
先述の The Good Food Institute のレポートによると、現在代替肉が占める食肉市場全体の割合は1~2%。まだ小さな市場であるが、その成長率は、現在牛乳・植物性ミルク市場の14%を占める植物性ミルクが成長を見せ始めた頃の兆しに似ているという分析もある。
また、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックに伴い、アメリカで代替肉の売り上げは264%伸びたという報告もある(※4)。肉の流通が止まったことや、さまざまな感染症と食肉市場の関連がニュースで頻繁に取り上げられたことなど、考えられる理由は多くある。
動物倫理、気候危機、食料不均衡、健康維持、そして世界的なパンデミック。畜産と肉の消費について、見つめ直す理由は揃ってきている。代替肉は、多くの生活者にとって身近な肉の、文字通り代わりになる存在として、今後も大きく伸びることが予測されている。
※1 “Plant-Based Market Overview” The Good Food Institute
※2 “Soy Facts” Oildseed and Grain News
※3 “Avoiding Meat and Dairy is ‘Single Biggest Way’ to Reduce Your Impact on Earth” The Guardian
※4 “Demand for Meatless Meat is Skyrocketing During the Pandemic” Vox
【参照サイト】“Beyond Meat Says One Overseas Market Has Desperate Need For Plant-Based Protein” CNBC
【参照サイト】Impossible Foods
【参照サイト】“IARC Monographs Volume 114: Evaluation of Consumption of Red Meat and Processed Meat” WHO
【参照サイト】THE AGONIZING DILEMMA OF ANIMAL TESTING
【参照サイト】DOES IT CONTAIN GENETICALLY MODIFIED INGREDIENTS?
【参照サイト】BEYOND THE HEADLINES: A CLARIFICATION REGARDING BEYOND MEAT AND IMPOSSIBLE FOODS
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