ミサンドリーとは？

ミサンドリー（Misandry）とは、男性への嫌悪感から男性を差別すること。例えば、「男性は粗野で暴力的だ」「男性は女性を性的な目で見ている」といった発言がそれにあたる。また、これに対して、女性への嫌悪感から女性を差別することを「ミソジニー（Misogyny）」と呼ぶ。

ミサンドリーの例

ミサンドリーの例として、男性に対するステレオタイプ的な批判や考え方が挙げられる。

• 男性は女性を差別しており、女性の地位が向上しないのは男性のせいだ
• 男性は傲慢で暴力的で無神経だ
• 男性は常に性的なことばかり考えている

しかし、全ての男性が女性を差別し、性的な目で見ているわけではない。男性へのステレオタイプ的な批判は、男性の個人としての価値観や考え方を無視し、男性だからという理由で差別をしてしまっているのだ。

ミサンドリーとフェミニズム

「フェミニストは男性を嫌悪している」「フェミニズムは男性差別である」等、ミサンドリーとフェミニズムは、しばしば同じものだと誤解されることがある。しかし、女性を性差別から解放し、女性の権利を獲得するための主張や運動がフェミニズムであり、男性への嫌悪感から男性差別的な発言をするミサンドリーとは、本来異なるものだ。

また、フェミニズムとミサンドリーを同一視することは、「フェミニストの主張は男性差別であり認められるべきでない」といった、女性の権利や地位向上を求めるフェミニズムの主張に対する誤った批判につながったり、反フェミニズムのレトリックとして使われたりする恐れもある。

ミサンドリーに関する研究

ミサンドリーに関わる研究として、Glick氏、Fiske氏による「男性に対するアンビバレンス（両面価値）尺度」（Ambivalence toward Men Inventory、 AMI）を用いた研究（1999年）が挙げられる。慈悲的尺度（好意）と敵対的尺度（嫌悪）の両軸から、女性の男性に対する考えを調査したものだ。この研究によると、男性嫌悪の特徴は大きく３つあるという。

• 伝統的な父権主義（パターナリズム）に対する怒り（「社会的に強い立場にある男性が女性を支配している」等）
• 社会的に強い立場である男性に対して、女性は良い意味で異なる存在だという考え（「男性は傲慢だが女性は違う」等）
• 男性は女性に対して攻撃的かつ敵対的な行為を行うという考え（「男性ばかりが会話の主導権を握る」「性暴力を行う」等）

また、果たして本当にフェミニストが男性を嫌悪しているかを検証した研究もある。488名の民族多様な大学生を対象に、Anderson氏、Kanner氏、Elsayegh氏らが行った研究（2009年）では、男性嫌悪を示す割合はフェミニストである学生よりも、フェミニストでない学生に多く見られる結果となった。

まとめ

フェミニズムと混同されやすいミサンドリー。しかし、女性の地位向上のために男性差別が許容される、またはフェミニスト全員が男性を嫌悪しているという誤解は、性差別を助長してしまう恐れがある。また、ステレオタイプ的な男性差別は、男性の個人としての価値観や考え方を否定するものだ。性別に関わらず、個人としての価値観や多様性が認められる社会を目指し、一人一人が性差別と向き合うことが大切だろう。

【参照サイト】「フェミニスト」の皮を被り、男性を言い負かすことに快感を覚えていた私の話（telling,）
【参照サイト】Misandry: The Invisible Hatred of Men（Psychology Today）
【参照サイト】Definition and Examples of Misandry（FAIRYGODBOSS）
【参照サイト】Glick, P., and Fiske, S. T.（1999）、「The Ambivalence toward Men Inventory: Differentiating hostile and benevolent beliefs about men」（Psychology of Women Quarterly）
【参照サイト】Anderson, K.J., Kanner, M., and Elsayegh, N.（2009）、 「Are Feminists man Haters? Feminists’ and Nonfeminists’ Attitudes Toward Men」（Psychology of Women Quarterly）

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