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クラウド・シーディングとは・意味

雨が降る

クラウド・シーディングとは?

クラウド・シーディングとは日本語で「人工降雨」と呼ばれ、自然の雲にヨウ化銀やドライアイスなどの物質を撒くことで雲の内部構造を変化させ、人工的に雨を降らせる技術のことを指す。

この技術は、1940年代にアメリカのジェネラルエレクトリック社のノーベル賞受賞者アーヴィング・ラングミュア博士らによる研究から生まれた。彼らは、過冷却(※)の小さな水滴でいっぱいになった冷蔵庫にドライアイスの破片を落としたところ無数の氷晶が発生することを偶然に発見したのだ。

※水などの液体が凝固点(凍って個体になる温度)よりも低い温度になっても液体のまま冷やされている状態のこと

この発見をもとに、ラングミュア博士らが実際に小型飛行機を使って零度以下の冷たい雲にドライアイスを撒いたところ、過冷却の小さな水滴から大量の氷晶が生まれ雪となって落下していった。この実験をきっかけに、世界中でクラウド・シーディングについての研究が進められることとなった。

クラウド・シーディングの研究・活用例

クラウド・シーディングの技術は、主に水不足の解消や猛暑により引き起こされる災害の抑制を目的として世界中で研究が進められている。世界保健機関(WHO)によると、米国や中国・タイ・インド・オーストラリアなど約50ヵ国以上の国々が何らかの形で研究を行っているようだ。

中でも特にクラウド・シーディングの研究に力を入れているのが中国である。中国は1960年代ごろから耕作地面積の拡大を目的とした気候改変のための技術習得に取り組んでいたが、近年では猛暑や干ばつへの対策なども狙いとして、2012年から2017年にかけておよそ13億4000万ドル超もの資金を投入している。

こうした災害への対策だけではなく、大きなイベント当日を晴天で迎えるため、クラウド・シーディングの技術を利用して事前に人工的に雨を降らせておくというプロジェクトも実際に行われている。例えば2008年に行われた北京オリンピックや、2021年に行われた中国共産党100周年記念式典の前にもこの技術を活用し、イベント直前に人工的に雨を降らせたと言われている。

中国政府は、「人工降雨などの気象改変プログラムの対象地域を2025年までに550万平方キロ超に拡大する」方針を明らかにしている。これは中国の国土面積の5割以上、またインド総面積の1.5倍以上に相当する広さである。気候改変プログラムに従事するスタッフも約3万5000人と世界最大規模を誇っていることからも、力の注ぎ具合がうかがえるだろう。

クラウド・シーリングのメリット・デメリット

クラウド・シーディングは、水不足や干ばつの解消に大いに貢献する技術として注目されている。

実際にオーストラリアでは、2005~2009年に行われたクラウド・シーディングプロジェクトによって、対象エリアの降水量が14%増加したという研究結果が発表されている。同様に、アメリカのワイオミング州においても15%降水量が増えたとの報告もある。

しかし一方で、地球環境や生態系に与える影響について未解明である部分も多く、また国際ルールが整備されていないために、国家間の水資源の奪い合いなどに発展するのではないかという懸念が指摘されている。

こうした画期的な技術の研究・開発は、世界中の人々の生活を改善するための大きな可能性を秘めていると同時に、何らかのリスクを抱えているおそれもある。技術を大々的に活用していくためには、影響・リスクの解明やルールの整備などが研究と並行して進められる必要があるだろう。

こうした情報を知識としてインプットし自分なりに理解・分析することは、差し迫る気候変動問題に対して、私たち自身に何ができるのかを考えるヒントとなりうるのではないだろうか。

【参照サイト】人工降雨(村上正隆)
【参照サイト】INHABITAT – Is human made rain the way to help the increasing droughts?
【参照サイト】CNN – 中国、気象改変プログラムを拡大へ インド超える面積が対象に
【参照サイト】独立行政法人経済産業研究所 –
世界的な異常気象、中国の気候改変プログラムが影響か…中国全土に豪雨災害、「気象兵器」レベル
【関連記事】世界で研究が進む「人工的な雨」は、干ばつを救えるか

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