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エコファシズムとは・意味

エコファシズム

エコファシズムとは?

エコファシズムとは、エコロジー(ecology・環境主義)とファシズムを関連付けた用語。人間よりも人間以外の生物や自然の保護を重視する環境主義を理由に、ファシズム的な全体主義・権威主義・人権抑圧などを正当化する思想や傾向を指す。具体的には、「地球環境を保全するためであれば、個人の権利が踏みにじられても良い」「人口の増加が地球に悪影響を及ぼしているのだから、人間の数を減らすべきだ」などのような考え方はエコファシズム的だと言える。

「エコファシズム」という考え方は、環境倫理学の議論の中での使用が始まりだとされる。「環境ファシズム(environmental fascism)」という言葉を最初に使ったのはトム・リーガン(米国)で、彼は1980年代の著書で、動物や人間すべての個の固有の価値を重視する立場から、人権を軽視する地球全体主義を、個々の生命の犠牲を容認するファシズムであると批判している。

エコファシストの特徴

エコファシストは、環境保護主義を口実に、ある人種の他の人種に対する優位性を認めたり、多文化主義に異議を唱えたりする。また、先進国が過去に引き起こしてきた環境汚染のことや、途上国の資源を利用してきたことを忘れ、「環境問題を引き起こした原因は途上国や難民などのマイノリティグループである」と信じているのもエコファシストの特徴の一つである。

【例】

  • 人口の増加が地球環境を悪化させていると考え、「地球のために(白人ではなく)途上国の人々を排除しよう」と主張する
  • 移民の増加が環境悪化の原因であると考え、国境の封鎖を求める
  • 気候変動を引き起こしたのは途上国の人だと決めつけ、一方的に非難する

おもな事例

    • ナチス政権下のドイツでは、動物の虐待の禁止、麻酔なしの生体解剖の禁止、野生生物の保護のための雑木林の保護などが行われた。その一方でユダヤ人虐殺などが行われており、エコファシズム的だったという指摘がある。

 

    • 2019年3月にニュージーランド・クライスチャーチのモスクで銃乱射をおこなった犯人は、環境問題と人口爆発、移民問題を結び付けて考えており、自身を「エコファシスト」と称していた。また、同年8月に米国テキサス州エルパソの銃乱射事件の犯人も似通った考え方の持ち主で、関連する声明には水質汚染やプラスチックごみ問題、未来の世代に多大な負担を強いるアメリカの消費文化を嘆く表現があった(※1)

 

  • 作家のNaomi Klein氏は、新型コロナウイルスの蔓延に伴い、人々の移動が減った結果、ベネチアにイルカなどの野生生物が戻ったことを告げる動画について、暗にエコファシズム的なメッセージを発してしまう可能性があると指摘。「行き過ぎると『人間がウイルスだ』『人間が悪い』という考えにつながる可能性がある」点がエコファシズム的だと述べている(※2)

「エコファシズム」の問題点

エコファシズムの一番の問題点は、人権とのバランスの危うさにある。「環境を守るためなら周縁化された人々への差別をしても良い」という論が正当化されてしまう危険性があるのだ。

例えば、一部のエコファシストは、開発途上国の人々がプラスチック製のレジ袋やプラスチック製のタッパーなどを多用している様子を見て、彼らこそが気候変動を加速させる原因であると批判している。しかし、途上国の人々がプラスチック製品を多用する背景には「金銭面の問題から、安価なプラスチック素材以外を選べない」「外来企業が安価なプラスチック製品を多く納品し、プラスチックなしでは成り立たないシステムを作ってしまった」など様々な事情があるはずだ。そういった様々な状況を無視して、盲目的な見方を貫き、一部の人に責任を押し付けるエコファシスト的な考え方は、差別を助長する可能性がある。

また、「エコファシズム」「エコファシスト」という言葉は、本来の意味とは関係なく、環境保護に反対する人々が環境保護活動をむやみに揶揄する際に使われやすいという問題もある。例えばデモ活動をおこなう団体が、活動の一部を切り取った報道だけで「エコファシストだ」と判断され、一方的に非難されるケースもある。一部の環境活動家からは「エコファシズム」「エコファシスト」という言葉を使うことは「環境活動を揶揄し、弱体化するための論法だ」との声もあがっている。

「エコファシズム」の今後

コロナ禍では、「人口が減少したり、人間活動がストップしたりしたことで、地球環境が改善された」というニュースも多く報じられた。ニュースを見て「地球にとって人間は害悪なのだろうか」「地球のためには人口を多少減らすべきなのだろうか」……そんなことを感じた人もいたのではないだろうか。こうした身近なところにも、人間の権利を無視するエコファシズム的な思想のかけらは潜んでいる。また、気候変動への対策が待ったなしとなり、多くの人々が危機感を持っている現在、「環境主義」を掲げ、エコファシズム的な政策を進める政党が出てくる可能性も否めない。今後は、支持政党や政治、環境活動のあり方、そして何より自分自身の考え方がエコファシズムに陥っていないかどうか、チェックすることが、より一層重要になっていくだろう。

ファシズム的な思想は、気づかぬうちに浸透していきがちなことが最も恐ろしい点だ。それを防ぐには、まずは私たちが「エコファシズムとは何か」を知り、何がその思想に近い考え方か気づくための判断軸を持つことが重要だ。エコファシズムに陥らないよう、自分自身、そして世の中の動きに注意を払っていこう。

※1 Two mass killings a world apart share a common theme: ‘ecofascism’(The Washington Post)

※2 Eco-fascism: What It Is, Why It’s Wrong, and How to Fight It (Teen Vogue)




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