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ヤングケアラーとは・意味

ヤングケアラー

ヤングケアラーとは?

「ヤングケアラー(Young Carer)」とは、本来ならば大人が担うと想定されているような家事や家族の世話、介護を日常的に行っている子どものことを指す。例えば、以下のようなケースである(厚生労働省のウェブサイトより一部抜粋)。

  • 家族にかわり、幼いきょうだいの世話をしている
  • 障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
  • 障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている(きょうだい児)
  • がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
  • アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
  • 日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている

言葉の誕生は1990年代前半で、英国で子どものケアの関係者の間で使われ始めたのがきっかけだと考えられている。その後、1993年にケンブリッジ大学教授のソール・ベッカー氏が論文で、ヤングケアラーに関する問題点を指摘し、社会問題として認識されるようになった。

ヤングケアラーとみなされる子どもの年齢は国によって異なり、公的サポートの対象とされるヤングケアラーは、英国では18歳未満、オーストラリアでは25歳以下とされている。日本では法律上の定義はないが、18歳未満とされるのが一般的だ。

日本でヤングケアラーが社会問題化している背景には、少子高齢化、家庭の経済状況の変化、子どもの貧困、地域のつながりの希薄化など様々な要因がある。また核家族化が進んだことや、共働き世帯が増加したことにより、家庭内のケアや家事の担い手が減り、その負担が子どもに及んでいることがある。

ヤングケアラーが直面する問題

家庭内での責任や負担が「手伝い」の域を超えて過度に大きくなると、ヤングケアラー自身の学業や友人関係などに支障をきたし、成育や教育に影響を及ぼしてしまう可能性がある。具体的には、下記のような問題が起こりうる。

  • 宿題や予復習の時間がとれず学業に支障が出る、遅刻や欠席が増える
  • 放課後や休日に友達と遊べない、友人と共通の話題が少なくなり孤立する
  • 睡眠時間を削るなど、無理を重ねて心やからだに不調が出る
  • 悩んでいても分かってくれる相談相手がおらず、解決策が見いだせない(自分とは立場が違う、学校の先生や友達には助けてもらえないと思ってしまう)
  • 勉強時間の不足や金銭的な問題から、進路を断念する/将来の選択肢が狭まる

世話をしてもらう家族も、ときにはヤングケアラー自身も「家族の世話をすることは当たり前だ」と考え問題意識を持っていないことも多く、世話の担い手が他にいない場合などは特に負担が大きくなり、孤立してしまいやすい。

周囲が気づかずに適切な支援がなされない場合、上記のような問題が深刻化し、ヤングケアラー自身の精神面、身体面に悪影響が及んでしまう。

「ヤングケアラーかどうか」の判断基準

家庭の事情は個々によって異なり、当事者の意思や負担の感じ方にも個人差があることから、ヤングケアラーかそうでないかを正確に判断することは簡単ではない。

しかし家族の介護や世話によって「年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担を負って」いる場合は、ヤングケアラーだと認められる可能性が高い。これは、2019年3月に行われた「ヤングケアラーの実態に関する調査研究()」において示されたヤングケアラーの定義である。

また有限責任監査法人トーマツが「令和4年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業」において支援ツールとして作成した「ヤングケアラー気づきツール(大人向け)」では、下記のような視点が挙げられている。

  • 本来、大人が担うと想定されている家族へのケアや家事を日常的に行っている
  • もしもの時に周囲に助けを求められる状況ではなく、子どもが孤立している
  • 「教育を受ける権利」や「育つ権利」、「休み、遊ぶ権利」といった子どもの権利条約で定められている権利が守られていない
  • 家族へのケアや家事が理由で、その子どもに心身への影響が見られる
  • 子どもがやりたいことを後回しにしたり、家族に必要以上に気を遣っていたりするなど、家族の関係性に心配な点や違和感がある

ヤングケアラーに必要な支援とは?

特に小さな頃から家族の世話や家事を担ってきたヤングケアラーは、それが当たり前だと感じており、自分に支援が必要だと気づいていないことがある。また家族に口止めされていたり、プライベートな問題であることから周囲に話したがらなかったりする子どももいる。

そのため、まずは周囲の大人がヤングケアラーに気づき、本人からしっかり話を聞いた上で家庭全体の状況を把握して、必要な支援につなげることが重要だ。

ヤングケアラーを見つけるのに最も効果的な場としては、学校や学童などの教育関連施設に期待が寄せられている。

周囲が支援の必要性を感じても、本人や家族がそれを求めない場合もあるため、支援が一方的にならないよう意思確認を行いながら対応を進める必要がある。

またヤングケアラーの問題では、介護や病気、経済状況など家庭内の複数の課題が絡んで子どもに負担が及んでいるケースもある。そのため個々の状況や必要性に応じて、福祉・介護・医療・教育の関係機関が連携し、様々な支援を組み合わせていくことも大切だといわれている。

その他、一例として下記のような支援サービスの提供が考えられる。

  • 相談窓口、カウンセリング、ヤングケアラー同士の交流の機会づくり
  • 幼いきょうだいがいる場合の養育や保育支援サービス提供
  • 介護サービス、障害者福祉サービス、訪問看護などの医療サービス、通院サポートなどの提供
  • 家事支援、フードバンクや子ども食堂などでの食事提供、清掃支援など
  • 学習支援、進路相談、キャリアカウンセリングなど
  • 生活保護や奨学金などの受給サポート、行政手続きの支援、就労サポート(親を含む)

世界の状況

Carers Trustによると「ヤングケアラー」という言葉が生まれた英国では、2016年の時点でティーンエージャーのおよそ12人に1人がヤングケアラーになっている。この問題に対処するため、政府は2014年に、地方自治体がヤングケアラーを特定して適切な支援につなげることを義務づける「子どもと家族に関する法律」を成立させた。

また、ヤングケアラーはどの国にも存在しており、その支援状況は国によってまちまちだ。ヤングケアラー研究を牽引するソール・ベッカー教授によると、ヤングケアラーに対して先進的な支援が講じられているのがイギリス、中程度の支援が講じられているのがオーストラリア、ノルウェー、スウェーデン、支援が準備段階にあるのがオーストリア、ドイツ、ニュージーランド。ほか十数か国では支援が必要だという認識が起きたり、広まったりしつつあるものの、多くの国では支援の動きがみられないのが現状だという。

さらに教授は、ヨーロッパの先進国のなかには、家庭内で家族を介護することが推奨されている国があるため、よりヤングケアラーが増えやすい、という問題についても指摘している。

日本の状況と取り組み

日本では2021年はじめに、中学生のおよそ17人に1人、全日制の高校に通う生徒のおよそ24人に1人がヤングケアラーだという調査結果(※)が発表された。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2021年5月に、学校や地域などでの「早期把握」「相談支援」「家事育児支援」「介護サービスの提供」の4つの支援策を発表した。

教育現場へのスクールソーシャルワーカー等の配置支援のほか、特設サイトや関係省庁・自治体等へ掲出するポスター・リーフレットを作り、啓発活動も進めている。特設サイトの「相談窓口一覧」には、ヤングケアラー向けの相談窓口、当事者および元当事者同士の交流会、家族会などの情報を複数、載せている。

その他には、ヤングケアラーと支援者同士の交流を促進し、孤独・孤立を防ぎながら継続した相談・支援体制を築くための施策として、民間団体等へ啓発イベントやシンポジウム開催のための補助金を創出する取り組みも行われた。

こうしたヤングケアラー支援の政策や取り組みについては、2023年4月以降、新しく設置されたこども家庭庁に引き継がれている。

自治体の取り組み

自治体の動きとしては、埼玉県が2020年3月に全国で初めてヤングケアラーを対象に含む「ケアラー支援条例」を制定し、ヤングケアラーのためのLINEチャンネルで相談を受け付けたり、情報発信をしたり、交流の場としてヤングケアラー・オンラインサロンを開催したりしている。

また、2021年7月から学校で元ヤングケアラーによる出張授業を実施。授業を通して自身がヤングケアラーだと気づいた生徒もいるなど、成果につながっている。

そのほか、大阪市が2022年度当初予算案で「ヤングケアラー」の支援に向けた取り組みとして3億8千万円を計上した。

民間の取り組み

近年、民間の動きも活発化している。地域の子どもや家庭を支援している施設「児童家庭支援センター」は、栃木県、福井県、大分県、横浜市、福岡市の5つの県と市にある同団体の施設でヤングケアラーの相談に応じたり、精神的なケアや、食事や掃除の家事援助などの支援を行ったりしている。

また、病気の子どもの兄弟姉妹である「きょうだい児」へのサポートも一部で行われている。2003年に立ち上がったボランティアグループ「しぶたね」では、病気の子のきょうだいや親に向けたワークショップ、イベント等の開催、面会制限によって病院で一人ぼっちで親を待つきょうだいのための居場所づくり、病院やきょうだいのためのツールや冊子の作成など、直接的なサポートと啓発活動を両輪で続けている。

ピンチの時に誰かが隣にいる社会に。病気の子の「きょうだい」を支えるヒーロー

「ヤングケアラー」の課題と今後

ヤングケアラー支援における最大の課題は、本人や周囲が抱く「家族の世話をするのは当たり前」という意識だ。

一般的に子どもが担っても良い「手伝い」の範囲を明確に定めることは難しく、周囲にケアや家事の担い手がいない、小さい頃からそうした環境にいて違和感がない、家族のためだと強い責任感を抱いているなど、個々の意識や状況によってヤングケアラーの問題が表面化しないケースも多くある。

そのため周囲が丁寧に向き合い信頼関係を築きながら、ヤングケアラーの苦しみに気づき、支援につなげていく必要がある。

各自治体や支援団体が提供するガイドブック等も増えてきているが、教育や福祉、医療の現場での啓発や支援体制を今後より拡充していくことが求められている。またヤングケアラーが置かれている状況は多岐にわたるため、関係機関が連携して、本人だけでなく世帯全体に各分野の垣根を超えた支援を提供することも重要だ。

世界で、日本で、ようやく可視化されてきたヤングケアラー。今後は様々な取り組みを通して、彼ら自身が声をあげ、頼れる環境を作っていくこと、多くの人にヤングケアラーの問題を周知し、誰もが気づきやすい状況にしていくことが大切だろう。

※ 令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書(三井UFJリサーチ&コンサルティング)

【参照サイト】子どもが子どもでいられる街に。~みんなでヤングケアラーを支える社会を目指して~(厚生労働省)
【参照サイト】一般社団法人ヤングケアラー協会
【参照サイト】ヤングケアラー支援の先進地イギリス ソール・ベッカー教授に聞く(NHK)
【参照サイト】ヤングケアラー 国がまとめた4つの支援策って?(NHK)
【参照サイト】ヤングケアラー支援整備 大阪市新年度予算案(大阪日日新聞)
【参照サイト】“ヤングケアラー”支援のモデル作りへ 児童家庭支援センター(NHKニュース)
【参照サイト】ヤングケアラー支援に係る アセスメントツール等の 使い方ガイドブック




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