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キャップ・アンド・トレードとは・意味

キャップ・アンド・トレード

キャップ・アンド・トレードとは?

キャップ・アンド・トレードとは、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量取引制度の一つで、企業に排出量の上限(キャップ)を設け、余剰排出量や不足排出量を売買する仕組みだ。

この制度のポイントは、単純に排出枠に限りがあるだけでなく、余剰分に価格が付き取引が行われること。つまり、自ら取り組むことができない、または取り組んでも決められたキャップ以内に炭素排出量を収めることができない企業は、他の企業から「空いた枠」を購入することになるのだ。そして、排出枠に満たない「エコ」な企業が得をするようになる。この制度がインセンティブとなり、炭素排出の少ないソリューションの需要が拡大し、低炭素技術の開発や進歩にもつながるというメリットがある。

主だった排出量取引制度が初めて導入されたのは、1990年のアメリカだ。石炭火力発電所からの硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)が対象になり、効果が見られたことから、欧州も追随した。EUの事例では、2005年のプログラム開始時と比べて、2018年には建造物のからの排出量が29%削減されることとなった。

似たような炭素排出量の価格付け(カーボン・プライシング)で、北欧スウェーデンなどが導入した「炭素税」という方法もある。世界最大の炭素排出国である中国も、取り組みを開始している。

キャップ・アンド・トレードとベースライン&クレジットとの違い

キャップ・アンド・トレードと比較される制度に、「ベースライン&クレジット」というものがある。

キャップ・アンド・トレードは、政府が炭素の総排出枠を定め、それを事業者に割り当てて、事業者間でその枠の取引を行う制度のことである。

一方ベースライン・アンド・クレジットは、それぞれの事業者に排出枠が割り当てられておらず、炭素排出の削減等を実施し、その削減した分がクレジットとして認定され、そのクレジットを取引する制度だ。ともに炭素削減の制度ながら、その構造には違いがある。

キャップ・アンド・トレードの問題点

この制度の課題として、どういった事業に、どのくらいの割り当てをすると適切なのかという判断が非常に難しく、基準づくりが難しいことが挙げられる。

また、価格が低迷すると排出枠の確保が容易になることも課題だ。目先の購入にばかり目がゆき、実際に炭素を削減しようとするインセンティブが弱まってしまい、長期的な事業の低炭素化に向けた動きが鈍化する懸念もある。

さらに、事業に行政が深く関与し調整する必要があるため、行政側の費用が増大し、逆に非効率に陥ってしまうという課題もある。この制度では、エネルギーを多く必要とする産業の競争力の低下や、排出規制が緩い海外へ事業所を移転することで、逆に排出量が増えるカーボンリーケージ(炭素漏れ)が起こりうるというデメリットもある。

日本国内で行われるキャップ・アンド・トレード制度

キャップ・アンド・トレードは、日本でも行われている。「東京都キャップ&トレード制度」は、都内にある約1200の大規模事業所に、燃料、熱、電気の使用に伴うCO2排出量削減の義務を課すものだ。

5年毎に実施され、2020年より第3期に突入した。基準排出量から平均27%の削減が設定されているので、今後の進展に期待だ。

【参照サイト】環境省
【参照サイト】国際環境経済研究所
【参照サイト】Environmental Defense Fund

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