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ナラティブ経済学とは・意味

ナラティブ経済学

ナラティブ経済学とは?

ナラティブ経済学とは、2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー米イェール大学教授が提唱する経済理論。ナラティブとは、ある社会現象などについての説明や正当化を行うための「物語」のことで、ナラティブ経済学とは人々の関心を惹く「物語」が時代を通じて変化し、経済的な結果に影響を与えることを実証する学問分野である。

ナラティブの研究は、社会学、心理学、マーケティング、精神分析などの分野で先行しており、シラー教授はナラティブを考慮することで伝統的な経済学アプローチはより精度の高い経済予測を行うことができるとしている。

ビットコインはナラティブの典型例

シラー教授は、ナラティブが口コミで拡散していくさまとウイルス感染症の流行との類似性を指摘し、最近の事例としてビットコインを挙げている。

ビットコインはみなが価値があると思わなければ何の価値もないものであるが、若者を中心にあれほどの支持を得たのはなぜか。シラー教授は、その理由としてビットコインの開発者とされるサトシ・ナカモトの神秘性、先進的なIT技術への惧れに加えて、アナキズムを挙げている。

つまり、円やドルという通貨は国家が管理しているのに対して、暗号通貨であるビットコインは政府の管理下にない。この政府の統制から免れることができるという特徴が、他の要素と相まって若者の心をとらえる「物語」になったというわけだ。

日銀の異次元金融緩和はなぜ失敗に終わったのか?

1990~2000年代に日銀エコノミストとして活躍した翁邦夫氏は、同氏の論文で日銀が2013年4月に始めた異次元緩和が失敗に終わった原因はナラティブの欠落であると述べている。

日銀の異次元金融緩和とは、長引くデフレから日本経済を脱却させるために「2年以内の2%のインフレ目標」を掲げて行った金融政策である。実際に行ったことは国債の買い入れによりマネタリーベース(市中銀行が日銀に保有する預金口座の残高)を2倍にしたことだった。翁氏は、マネタリーベースの倍増が直接的に物価上昇につながるわけではなく、異次元緩和とは「将来インフレになる」と国民の脳裏に定着させる期待への働きかけであったと整理した。

翁氏はまた、多くの人々の「不安」あるいは「儲けたい」という感情に訴えることが物語がナラティブになる条件であるとした。そのうえで、異次元緩和を行った時期の物価は極めて安定的であったことに加え、そもそも日銀の金融政策は多くの人々の生活に縁遠いものであったことから、日銀は国民が「将来インフレになる」と信じるに足る「物語」を提供できなかったと結論づけている。

【参考文献】ロバート・J・シラー ナラティブ経済学 経済予測の全く新しい考え方(東洋経済新報社)
【参考文献】翁邦夫 「期待への働きかけ」とナラティブ:異次元緩和による事例研究(大妻女子大学紀要.社会学系、社会情報学研究 29巻)




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