海洋温度差発電(OTEC)とは・意味
海洋温度差発電とは?
海洋温度差発電とは、海表面の温かい海水と深層の冷たい海水の温度差を利用した発電技術のこと。環境に配慮した再生可能エネルギーのひとつである。英語表記「Ocean Thermal Energy Conversion」の頭文字をとって、通称OTECとも呼ぶ。
海洋温度差発電は、日本をはじめ、米国、フランス、中国などで盛んに開発が行われている。
海洋温度差発電に適しているのは、海水の表面と深層で年間平均20℃以上の温度差がある亜熱帯、熱帯地域の海洋(赤道から南北緯度20度以内)だといわれている。日本では沖縄周辺、小笠原諸島、黒潮流域などだ。海面の温度が高く、深海との温度差が大きいほど効率的に発電できる。
海洋温度差発電の仕組み
具体的には以下のような仕組みで、海水の温度差を電気に変える。
まず、海洋温度差発電では、蒸発器、凝縮器、タービン、発電器、ポンプの5つがパイプで連結されている。この発電機器に、沸点が低く気化しやすいアンモニアや代替フロンなどの物質を循環させて電気を作る。
- アンモニアなどの物質をポンプで蒸発器に送り、表層の温かい海水で温めて蒸気にする。
- 発生した蒸気の力でタービンを回し、発電する。
- タービンから出たアンモニアの蒸気を、凝縮器に送る。
- 凝縮器内でアンモニアを深海からくみ上げた冷たい海水を使って冷やし、液体に戻す。
これを繰り返し行う。
海洋温度差発電の特徴・メリット
海洋温度差発電には、以下のような特徴とメリットがある。
CO2を排出せず環境にやさしい
海洋温度差発電は、化石燃料やウランなどを使用せずに発電ができ、発電時にCO2を排出しないため大気汚染の心配がなく環境にやさしい。原子力発電のような廃棄物処理の問題がないのも、海洋温度差発電のメリットだ。
安定した電力供給が可能
海の表面と深海の温度差は年間を通じて一定である。このため海洋温度差発電は、風力発電や太陽光発電と比べ、気候の変化に左右されることがない。また、昼夜問わず発電ができ、発電量の予測も容易なため、電力の安定供給が可能だ。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の報告書によると、日本の排他的経済水域内の海洋温度差発電のポテンシャルは1368TWhと推算されている。これは日本の年間電力需要を賄える規模で、約1億トンの石油に相当するエネルギー量だという。
発電後の海水を複合利用できる
海洋温度差発電に利用した海洋深層水は、発電以外にも活用することができる。例えば、養殖場への活用だ。海洋深層水はプランクトンなどの栄養素が豊富に含まれているため、サンゴや海藻、魚介類養殖に適しているといわれる。
ほかにも、冷房、冷却土耕栽培、レアメタル採掘、海水淡水化、水素製造などへの活用が期待されている。
海洋温度差発電のデメリット
反対にデメリットとしては、大きくコスト面と生態系への影響がある。
発電プラントのコスト
海洋温度差発電では深海から冷水を汲み上げる配管が必要となり、発電プラントを陸上に作る場合は配管の全長が長くなるためコストがかかる。
生態系への影響
海洋温度差発電では海洋深層水を海面に引き上げ、また深層へ戻すという工程を繰り返す。この工程が深海の生態系に影響を与える可能性があるといわれている。今後、研究開発にあたっては充分な生態系調査が必要だ。
海流への影響
発電プラントの規模が大きいと、海流を邪魔する可能性があるといわれている。それに伴う影響についてもこれから検証が必要だ。
日本の海洋温度差発電への取り組み
日本で主に海洋温度差発電の研究開発に取り組んでいるのは、佐賀大学の「海洋エネルギー研究センター」だ。技術水準は世界トップレベルだといわれている。
2013年、佐賀大学の研究チームは沖縄県久米島に世界唯一の「海洋温度差発電実証プラント(出力50kW)」を開発した。この実証プラントは沖縄県が主体となって建設され、試験運転を開始している。現在、商用レベルである1〜2MWの発電設備の開発が計画されている。
世界の海洋温度差発電への取り組み
一方、世界でも欧米諸国を中心に開発が進んでいる。
フランス
ベンチャー企業のAkuo Energy社が、2014年に西インド諸島マルティニークに16MWの浮体式海洋温度差発電「NERO」の建設を開始。タヒチと仏領レ・ユニオンにおいても10MW規模の開発プロジェクトが計画されている。
オランダ
オランダはインドネシアの数社と提携し、バリ島で100KWの海洋温度差発電プラントの研究を成功させている。
アメリカ
アメリカは1974年、ハワイ州立自然エネルギー研究所(NELHA)で海洋温度差発電の研究を開始。最近では、インド洋のイギリス領ディエゴガルシア島のアメリカ合衆国海軍基地向けに8MWのプラントを計画している。
海洋温度差発電の今後の課題
現在、海洋温度差発電は商用化に向けた研究開発も進んでいるが、以下のような課題がある。
耐久性
海洋温度差発電の発電容器はほぼ真空状態で動作するため、漏れがないよう台風や波浪でも損傷しない耐久性が必要となる。また、海洋生物の付着による劣化や、大型生物の衝突による破損の可能性についても考慮が必要だ。
コスト面
先述したように、海洋温度差発電は発電プラントの規模が大きくなるほどコストがかかる。このため今後、よりコストの低い材料や技術の開発を進めなければならない。
まとめ
実用化されれば安定的な電力供給が可能なだけでなく、エネルギー資源問題の解決やCO2の排出削減にもつながるといわれる海洋温度差発電。今後は課題解決に向けた技術開発と、海洋への影響などについて研究を進めていく必要がある。
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【参照サイト】NEDO 再生可能エネルギー技術白書 7 海洋温度差発電の技術の現状とロードマップ
【参照サイト】NEDO 再生可能エネルギー技術白書第2版 第6章 海洋エネルギー
【参照サイト】海洋温度差発電(佐賀大学海洋エネルギー研究所)
【参照サイト】海洋温度差発電のしくみ(OTEC沖縄)
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