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クィア・アーバニズムとは・意味

Washington DC, USA, June 11, 2017. Equality March for Unity and Pride in Washington, D.C.,

クィア・アーバニズムとは?

クィア・アーバニズム(Queer Urbanism)とは、「クィア」の人々の視点を取り入れながら、人々が生きやすい都市をデザインすることを指す。クイア・アーバニズムとも呼ばれる。

クイア(クィア)とは、性的少数派であったり、既存の「男女」という性のカテゴリに当てはまらないとする人々の総称である。もともと「奇妙な」を意味する言葉で、その時代や文化のなかで「一般的でない」マイノリティとされる人に対して使う言葉である。自分が認識する性が定まっていない、揺らいでいる「クエスチョニング(Questioning)」と同様、LGBTQ+の「Q」にあたる。

コミュニティ・スペースを創る地域団体「CultureHouse」は、ブログプラットフォーム「Medium」にて、そんなクィアの人々が「都市デザインから制度的に排除されている」と述べている。

なぜクィア・アーバニズムが重要なのか

性的指向と性自認に関する法律と公共政策について調査・研究を行うウィリアムズ研究所によると、アメリカ国内において、性的マイノリティの人々は、そうでない人と比較して所得が低く、子供を持つ人も少ない。しかしアメリカの社会インフラの多くは有料であり、無料の社会インフラの多くは学校や公園の遊び場といった子どもを持つ人々を対象としたものが多い。また主要な公共空間である路上では、クィアの人々が差別的な中傷や攻撃にさらされ、安全な場所とはいえない、としている。

公的空間で生きづらさを感じるため、私的空間がクィアの人々が中心でいられる唯一の場所となることが多い。だが同研究所によると、アメリカにおいてクィアの人々はホームレス状態になることも数多く報告されているといい、彼らの多くが唯一安全でいられる場所から締め出されることになる。

米ミズーリ大学(University of Missouri)都市計画・デザイン学科准教授のマイケル・フリッシュは「ヘテロセクシスト・プロジェクトとしての計画」という論文の中で、区画規制から公共空間のデザインといった都市計画の構造が、シスジェンダー(生まれた時の性と、自分で認識する性が一致している人)やヘテロセクシャル(異性愛者)のアイデンティティを促進する一方、クィアの人々を抑圧していると論じている。これらの構造は、ヘテロ規範的な家族や関係の構造を「標準」と定義づけており、クィアの人々を排除するシスヘテロ規範的な都市景観を作り出している、と述べた。

これらの研究・論文から、都市にはクィアの人々が安全でいられる場所が存在しない訳ではないが、社会的な仕組みが構造的に変化しない限り、その存続が保証されることはないと言える。

クィア・アーバニズムは、クィアの人々が居心地が良いと思える公共空間を創るだけでなく、多くのマイノリティにとって住みやすい都市環境を創り出すシステムとされている。

クィア・アーバニズムの事例

アメリカの地域団体「CultureHouse」はクィア・アーバニズムに根ざした活動を行っている。過去に開催されたコミュニティ・ポップアップでは、プライド月間を祝ったり、クィアの人々が運営するブックストアを主催したりといった活動が行われてきた。

「CultureHouse」が用意するコミュニティ・スペースは無料で入ることができ、子どものいない人たちと子どものいるあらゆる形態の家族が一緒に使うことができる。

インドの都市コルカタにある「アムラ・オブード・カフェ」は、LGBTQ+の人々、特に家族から追い出された若者たちに安全な空間を提供し、彼らをサポートする数少ない場所のひとつだ。

また、「Stalled!」というプロジェクトは、アメリカ国内に年齢・性別・人種・宗教・障害の有無を問わず、すべての人にとって「安全」で「包括的」な公衆トイレを作り、そういったスペースを増やそうとしている。このプロジェクトは、クィアの人々や障害のある人々、それぞれ異なる宗教を進行する人々などが公共空間を安全に利用できない現状について問いかける。

「Queering the Map」は、クィアの人々の体験をデジタルで記録するカウンター・マップ・プロジェクト。ユーザーは地図上に、自分たちの個人的なクィア体験を投稿できる。投稿の内容は、カミングアウトしたときの物語や暴力的な出来事に遭遇したときの話、歓喜の愛の瞬間など、さまざまだ。投稿された物語には以下のようなものが挙げられる。

  • 初めて女の子を好きになった場所
  • ミニスカートに黒タイツ、背の高いフェムブーツという「エクストリーム・フェムボーイ」モードで人前に出ることに緊張しながら、お洋服を買った場所。年配の男性が私の服装が素敵だと声をかけてくれた。それ以上には発展しなかったけど、嬉しかった。
  • 私が12歳ぐらいで、トランスであることを自覚していた頃、母の服を借りているところを両親に見つかった。父は私を部屋まで追いかけてきて、私の部屋のドアを叩いて怒鳴った。両親へ。あなたたちの娘がカミングアウトできないように、12年間も性別移行を邪魔してくれてありがとう!(皮肉を込めて)

「Queering the Map」はクイア体験の生きたアーカイブとして機能しており、現在、世界中から23の言語で8万以上の物語が投稿されている。

まとめ

クィアでない人々にとって、(少なくともアメリカの都市の)公共空間がどれほど生きづらい場所なのかを想像するのは難しいかもしれない。しかしこういった概念を知り、活動している人々がいることを知るだけで、新たな視野が開けるだろう。

【参照サイト】We Need Queer Urbanism.
【参照サイト】Queer Urbanism – Forecast Public Art
【参照サイト】Planning as a Heterosexist Project – Michael Frisch, 2002
【参照サイト】Our Queer Public Space
【参照サイト】What Do We Mean By Queer Space? – Azure Magazine
【参照サイト】Stalled!
【参照サイト】QUEERING THE MAP
【参照サイト】Co-Creating a Map of Queer Experience | by Co-Creation Studio at MIT Open Documentary Lab | Immerse




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