アンダークラスとは？

アンダークラスとは、賃金が低く、労働の最低条件を満たさないような雇用が不安定な人々のこと。主に、男性や、配偶者のいない女性の非正規雇用の労働者を指す。家計補助で働くパート主婦など、貧困に陥りにくい層は含まれない。

日本におけるアンダークラスの平均年収はおよそ186万円。その数は、2025年に1,000万人を突破するとみられており、格差の拡大が進んでいる。

アンダークラスが生まれた背景

ここでは、アンダークラス人口が増えた背景と原因を3つ挙げる。

1. 時代の変化

1970年代から1980年代にかけて日本は「一億総中流」社会だと言われた。経済協力開発機構（OECD）の統計で北欧諸国に並んで、日本の経済格差が最小レベルであった時代だ。

しかし、1980年代末のバブル経済を機に格差社会化が進んでいった。企業は、景気が良いため人を増やさなければいけなくなったが、正社員として雇うと景気が悪くなってもクビにできなくなってしまう。そこで、卒業したばかりの若者を非正規労働者として雇うようになったのだ。

1990年代初めにはバブルが崩壊し、経済危機に陥った。企業は新規雇用を減らし、学校を出たばかりの若者を正社員ではなく、非正規労働者として雇うことが当たり前になった。このような動きが1990年代後半から急速に進み、「就職氷河期」と言われるようになったのだ。以来、非正規雇用で働く層が社会に定着し、現在のアンダークラスとなった。

2. 家庭環境

アンダークラスになる原因の1つに親の介護がある。たとえ現在、正規労働者であっても、家庭の事情で会社を辞めると、再出発はアンダークラスからというケースも少なくないのだ。

3. 政策

税による所得分配がほとんど行われていない、相続税の税率が低い、高等教育の学費が高いことに加え、奨学金制度も整っていないなどの理由で格差社会化が進んでいる。

日本の新・階級社会

早稲田大学人間科学学術院教授の橋本健二氏は、アンダークラスが階級の1つとして確立された社会を「新・階級社会」と呼ぶ。階級は5つに分かれている。

資本家階級：経営者、役員など（個人の平均年収　604万円）

新中間階級：被雇用の専門職、管理職など（個人の平均年収　499万円）

正規労働者階級：単純事務職、サービス業など（個人の平均年収　370万円）

旧中間階級：自営業者など（個人の平均年収　303万円）

アンダークラス：非正規労働者、パート、アルバイト、派遣社員など（個人の平均年収　186万円）

アンダークラスの貧困率は、約40パーセントで、全く資産のない世帯は30パーセントを越えるという。幸福度は40パーセントにも満たない。うつ病など心の病気の診断や治療を経験した人はアンダークラス人口の20パーセントに達する。

このようにアンダークラスの経済状況は他の階級に比べて著しく低く、精神的にも追い込まれて厳しいことがわかる。

アンダークラスの問題点

収入が少ないことで貧困に陥りやすいアンダークラスには、様々な問題点がある。当事者だけでなく、社会全体として直面する課題についても挙げる。

貧困により、結婚して家族を形成することができない（男性の未婚率は約65パーセントであり、女性は半数以上にのぼる）

政府の財政悪化で、医療水準の低下による国民全体の平均寿命が短くなる可能性がある

社会保障費の増大、犯罪増加リスク上昇

アンダークラスで貧困に陥るのは「自分の問題」と捉えられがちだが、社会の構造や政策と密接に関係することがわかる。

格差是正のために望まれる改革

アンダークラスの問題を解決するには、格差を縮める政策が必要である。橋本氏が提示する、階級社会化の改善策を4つ挙げる。

最低賃金の引き上げ（1,500円で大学初任給程度）

累進課税の強化

相続税率の引き上げ

所得再配分の強化（資産税の導入など）

まとめ

アンダークラスと分類される人の中には、なぜそうなったのか様々な理由があるだろう。十分な教育を受けられなかった人、親の介護で仕事を辞めざるを得なかった人、夢を追いかけるために非正規を選んだ人……。

そうしたアンダークラスの人たちが抱える問題を「個人の問題」として捉えるのではなく、このような格差を生み出している社会構造に危機感を覚え、声を上げていくことが大切ではないだろうか。

【参照サイト】日経ビジネス　2025年、「アンダークラス」1000メン人超の絶望
【参照サイト】nippon.com　もう自助努力だけでは抜け出せない！：ニッポンのアンダークラス　
【参照サイト】情報産業労働組合連合会　「アンダークラス」増加という危機　格差拡大は社会に何をもたらすか

用語の一覧