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ルッキズムとは・意味

ルッキズム

ルッキズム(Lookism)とは?

Looks(見た目)+ ism(主義)を合わせた造語で、外見がその人間の価値を測るのに一番重要だという思想のこと。「外見至上主義」などとも言われる。さらに発展して、人間を外見のみで判断し、その容姿を理由に差別的な言動や態度を行うことも意味する。また、そうした差別的態度を取る外見至上主義者をルッキスト(Lookist)と呼ぶこともある。

ルッキズムという言葉は1960年代にアメリカで始まった肥満差別廃絶を訴える「ファット・アクセプタンス運動」の中で使われたのが始まりとされる。しかし現在では肥満だけでなく、容姿や年齢、人種など様々な側面において見た目で判断すること全般に用いられている。

日本では、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックで開閉会式のクリエイティブディレクターが起用を予定していた女性タレントを動物のブタに例え揶揄する、という演出を企画していたことが発覚。その後辞任に追い込まれるというニュースが話題となったことでルッキズムという言葉が注目された。その年の12月に8年ぶりに全面改訂された『三省堂国語辞典』にも初めて「ルッキズム」が掲載されている。

ルッキズムの事例や問題

「ルッキズム」という言葉は比較的新しいものだが、外見によって人々を判断したり、差別したりするという概念は、以前から根深く存在している。以下のような例がそれに当たると言われている。

  • 「客室乗務員=美人」という世間的なイメージがあるように、容姿に対してある一定の基 準をもうけ、合否を判断する「顔採用」と呼ばれる慣習
  • 髪型や服装など必要以上に見た目を規制し、その基準から逸脱する人は反抗的と見なされる校則
  • テレビ討論の際に容姿の印象を重要視したジョン・F・ケネディが、世論調査でリードし ていたリチャード・ニクソンに勝利した1960年のアメリカ大統領選

上記以外にも、勝手に女性らしさを求められたり、生まれつきの障害を揶揄されたりなど、日常生活の中にもルッキズムは潜んでいる。例えば、日常でありがちな以下のような発言はルッキズムに影響を受けていると言えよう。

「あの人はデブだから自己管理ができていない」
→人間が太るのは病気や薬の副作用の可能性もある。そのため、自己管理だけが理由ではない。「彼/彼女は見た目がいいから性格が悪いに違いない」
→見た目と性格は関係がない。

「私はブスだからなにをしてもうまくいかない」
→見た目と能力の高低は関係がない。

「○○さんは美人だから気が遣えて素晴らしい。」
→同上。

また、ルッキズムは一般的に、ネガティブな表現についての事例がフォーカスされがちだが、その逆も存在する。例えば「美人」や「イケメン」など一見褒めている言葉のようだが、その中にカテゴライズされることでむしろ能力が軽視されているように感じられることもある。

人間は情報の80%を視覚から受け取っていると言われており、私たちの中には無意識の偏見が存在している。マイクロアグレッションのように知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうことがあることにも理解が必要だ。

また、最近ではSNSの普及によってルッキズムが加速していることも事実だ。周囲から見られる自分の評価を高めるために、画像の加工や、それだけに留まらず整形まで手を伸ばす人さえいる。比較的新しいもののため、SNSに対する法制度もしっかり整っておらず、誹謗中傷がエスカレートしていることも問題となっている。

ルッキズムからの脱却

一方、行き過ぎたルッキズムによって、精神的、身体的に病んでしまう人なども増えていることから、こうした考えや行いを改めようというムーブメントも起こっている。

ミスコンの変化

これまで世界でも日本でも主に独身の女性を対象に、容姿の美しさを競うミスコンテストが各地で開催されてきた。しかし水着審査が本当に必要なのかという意見や、ジェンダーレスの時代に合っていないのではという考えが広まり、廃止や開催方法の変更などが検討されるようになった。日本では2020年に上智大学が1980年から開催されていたミスコン、ミスターコンを廃止し、ソフィアンズコンテストという名称に変更。女性、男性のどちらも参加できるようになり、ウエディングドレスやタキシードの着用義務を無くした。これに続き他の大学でも同様の動きが出ている。また、長い歴史を持つミス・アメリカでも2019年に水着審査が廃止され、史上初めて黒人の女性が選ばれるなど、審査の基準が変わりつつある。

ボディポジティブ

「自分のありのままの姿を受け入れ愛そう」というのがボディポジティブの考え方だ。
アメリカの人気歌手であるビリー・アイリッシュは、普段オーバーサイズのゆったりとした衣装でステージに立つことが多いが、ある時キャミソールで歩いている姿をキャッチされ、SNSなどで体型批判の声が多く上がった。このことに対しビリーは自身がプロデュースした「NOT MY RESPONSIBILITY(私の責任ではない)」というショートフィルムを公開した。その歌詞の一部を紹介する。

do you know me? (私のこと知ってる?)
really know me? (ほんとに?)

<中略>

if I wear what is comfortable (もし私が着心地いい服を着てたら)
I am not a woman (私は女ではないのか)
if I shed the layers (露出したら)
I’m a slut (尻軽なのか)

though you’ve never seen my body (あなたは私の身体を見たことがないのに)
you still judge it (いまだに批判する)
and judge me for it (そして決めつける)
why? (どうして?)

自分自身の体型について、他人からの評価に左右されるのでなく、自分にとって心地よいことが大切だというビリーのメッセージはボディシェイミング(身体への侮辱)への反抗を表し大きな話題となった。ビリー以外にも、女優やモデルなど多くのセレブリティたちもこうした声を上げ、ルッキズムを見直す必要性を問いかけている。

ルッキズムにとらわれすぎないために

それでは私たちはルッキズムに至る思考から離れ、とらわれすぎないでいるためにはどのようなことを心がけたら良いのだろうか?

周囲で起こっているルッキズムを認識する

自分の周りの環境において、誰かが他人の外見について発言をしていないかという事に意識を向け、ルッキズムの存在に気づく。またそうした言動に気づいた場合には助長するのではなく、その人たちにもルッキズムを認識してもらうよう促すことで、ネガティブな感情の広がりを抑えられるかもしれない。

自分自身を大切にする

他人や世の中の評価を基準に自分を見るのではなく、一人ひとり違うことを受け入れ、ありのままの自分を大切にする。世の中にあふれる外見や美を競う広告やSNSから距離を置くこともステレオタイプや無意識のバイアスから解放されることにつながるだろう。

アサーティブトレーニングを行う

アサーティブトレーニングとは相手の立場や意見を尊重しつつ、自身を大切にした自己表現を行うコミュニケーションスキルを身につけること。最近ではルッキズムを解消する方法のひとつとして注目されている。このトレーニングを行うことで、自分や相手を客観的に捉えられるようになり、摩擦につながるコミュニケーションリスクを回避することができる。

まとめ

SDGsの10番目の目標に「人や国の不平等をなくそう」というゴールが掲げられている。これは2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、生まれ、宗教、経済状態などにかかわらず、すべての人が、能力を高め、社会的、経済的、政治的に取り残されない世界を目指している。人間の社会の中で、すべての差別を無くすことは難しい。しかし私たちがこういった共通の目標の元に、身近にある偏見を認知し、お互いに理解を深め、その輪を広げていくことで解決につながる一歩となる。一人ひとりが、周囲の声に惑わされず、生まれてきたままの自分を愛せる世の中になれば未来は明るいのではないだろうか?

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【参照サイト】NHK | 「ルッキズム」って? “見た目”で悩む人に、今知ってほしいこと
【参照サイト】PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)| 公約不要、選挙は「顔と声と身長」で当落確定済
【参照サイト】 あしたメディア by BIGLOBE | ルッキズムとは?外見だけで判断?その意味や事例を徹底解説
【参照サイト】 THINK ABOUT | その美しさの基準、誰が決めたの?
【参照サイト】SDGsクラブ 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)| 10.人や国の不平等をなくそう
【参照サイト】ハフポスト NEWS | ミスコンを廃止し、新たなコンテストを設立した上智大。学生たちの迷い「100点ではない」
【参照サイト】Stop Lookism Now | Home
【参照サイト】HuffPost Impact | The Ugly Side of Lookism and What We Can Do About It




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