海洋保護区とは・意味
海洋保護区とは?
海洋保護区(MPA:Marine Protected Area)とは、海の生態系保全を目的とした自然保護区のことである。漁業における乱獲や生態系の破壊などによって絶滅が危惧されている海洋生物の保護や、魚類の繁殖地などの地形の保全を目的として設けられる区域を指す。
海洋保護区についてはどの海にも一律にあてはまる設定基準はなく、環境や生態系サービスの利用の特徴などを踏まえて、適切な場所や範囲に設置することが重要だ。生態系サービスとは、魚や貝といった食料の供給・レジャーやレクリエーションなどの機会・気候の調整など、生態系がもたらすあらゆる恵みのことを指す。持続可能な世界を築いていくためには、生物多様性を基盤とした生態系サービスが必要不可欠である。
海洋保護区の現状と課題
海洋保護区は決して新しい概念ではなく、古い歴史の中で日本でもすでに数多く設けられているものだ。例えば、環境省が海の保護と利用を目的に設けている海域公園地区、漁業協同組合が独自に定めている禁漁区や禁漁期も海洋保護区の一部だ。
このように環境保護区は、国や自治体など行政によるものや地域住民など民間によるものなどさまざまな形をとるが、健全な環境の保全を目的としていることは共通している。
開発の原則禁止や生物の採取が法的に制限されている海洋保護区には、主に以下の4種類が存在する。
- 鳥獣保護区特別保護地区
- 海域公園地区
- 海中特別地区
- 保護水面
しかし現状、これら4種類の海域すべてを合わせても約48,000haと領海の約0.1%にしかすぎないという課題がある。なお上記の4種類以外にも数多くの海洋保護区が存在するが、数や面積が具体的に把握されておらず、それらを合わせても領海の1%にも満たないと推測されている。
さらに実情を見ていくと、保護区に指定されていても具体的な管理がなされていない海域も多く存在しており、生態系の保全という目標にはほど遠いエリアもある。
日本は、1992年にブラジルで開催された国連環境開発会議(地球サミット)において、地球規模で生物多様性の保全を目指す唯一の国際条約である「生物多様性条約」への加盟を宣言した。生物多様性条約では、「沿岸域および海域の少なくとも10%を、効果的な保護区制度などにより保全」することが定められているが、目標の達成には遠く及ばない現状がある。
海洋保護区の管理が進まない理由
海洋保護区の設定・管理が目標へ到達しない理由の一つに、海洋保護区に対する人々の偏見や誤解がある。海洋保護区に指定されることで今までの利用が大きく制限されてしまうのではないかという不安や、管理のために莫大な費用や労力が必要になるという懸念から、保護区の設定に踏み切れずにいるのだ。
しかし、海洋保護区の設定は決して人間の生態系サービスの利用を禁じるものではなく、長期にわたって私たちが海の恵みを得られるよう環境を保護しながら利用することを促すものである。持続可能な世界を築くためには、私たちの海洋保護に対する理解や考え方を改める必要があるだろう。
海洋保護区を適切に管理するために
海洋保護区を適切に設定し管理していくためには、計画・実行・評価・見直しのサイクルを実行していくことが重要だ。具体的な流れは以下のとおりだ。
- 保全管理する海域を決める(優先すべき・環境の適切な維持管理がされている・重要性が広く認知されている海域を選定)
- 保全活動の目標と計画を立てる(短期・長期の目標を作る/多様な関係者が関与したビジョンを策定する/具体的な指標を定める)
- 保全計画に沿って実行する(多様な関係者への参加の機会が与える/活動計画や成果が適切に広報される仕組みを作る/ターゲットに情報を伝えるための表現や手法を工夫する/ターゲットに起こしてほしい行動は具体的で明確にする)
- 保全活動の効果を振り返る(活動・対策の効果検証をする/結果や評価の広報および関係者への伝達を適切に行う/評価に基づいた修正の枠組みを作る)
今後私たちに求められる行動
海が多様な生物の宝庫であるように、海の恵みを受ける人々の立場や意見も多様であり、すべての人の利害を一致させることは困難だろう。しかし将来にわたって海の健全な環境を維持していくためには、今何をすべきかを一番に考え行動していかなければ、もはや今までのように海の恵みを享受することはできなくなる。
まずは身近な海が危機的状況にあることを知り、一人ひとりが現状や課題、やるべきことを学び考えて行動していくことが重要だろう。海の環境を改善し維持するためには、多くの関係者の長期にわたる連携が必要であるが、決して悲観せず自分にできることを愚直に実践していかなければならない。
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【参照サイト】環境省 – 海洋生物多様性保全戦略公式サイト
【参照サイト】WWFジャパン – 現場の声から学ぶ豊かな海の作り方入門
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