ヴィーガンレザーとは・意味
ヴィーガンレザーとは?
ヴィーガンレザーとは、動物由来の原料を使用せずに作られた人工レザーのこと。動物愛護、環境保護の観点から、生活において動物性の食品・製品を消費しない「ヴィーガニズム」の考えに基づき生産された素材である。
ヴィーガンレザーは、動物性の皮の代わりに合成素材を使い、本革の見た目や質感を人工的に再現している。こうした素材は一般的には合成皮革、フェイクレザーなどとも呼ばれ、ヴィーガンレザーとの明確な呼び分けの定義は今のところ存在しない。
リアルレザーをとりまく環境問題
動物性の革は、製造過程における環境汚染がしばしば問題となる。
まず、革の製造工程では水を大量に消費する。UNESCO-IHEのレポートによると、牛皮1kgを製造するためには17,100Lもの水が消費されるといい、これは合成皮革の製造に比べて14倍も多い。
また革の「なめし」という製造過程で使われるクロム、ホルムアルデヒドといった化学薬品は、自然環境だけではなく人体にも有害だ。そのため、革のなめし工場で働く労働者や工場付近に暮らす人々は、皮膚や呼吸器系の疾患にかかる確率が高いといわれ、倫理的観点からも見過ごせない問題である。
こうした天然皮革の生産における環境・人への影響と動物愛護の観点から、代替素材として開発されたのがヴィーガンレザーだ。
2種類のヴィーガンレザー
とはいえ、ヴィーガンレザーとして売られているもの全てがサステナブルかというと、そうではない。
ヴィーガンレザーには、原料が石油由来のものと、植物由来のものの2種類があり、石油由来のヴィーガンレザーはいわゆるプラスチック素材のため、環境を汚染する可能性がある。石油由来の素材から大量生産で作られた合成皮革を、マーケティング上の理由でヴィーガンレザーと記載して売られている場合もあるため注意が必要だ。
一方、植物性の原料から作られたヴィーガンレザーは、廃棄しても土に還る「生分解性」がある点で、より環境に配慮しているといえる。
多様な植物性ヴィーガンレザー
植物性ヴィーガンレザーは、さまざまな原料から作ることが可能だ。例えば、以下のようなものがある。
パイナップル由来ヴィーガンレザー
パイナップルを収穫する際にとれるパイナップルの葉を再利用して作られたヴィーガンレザー。Ananas Anam Ltdが開発した「Piñatex®(ピニャテックス)」がよく知られる。使用するパイナップルの葉はパイナップル農家から買い取っており、農家の収入向上にも貢献している。
きのこ由来ヴィーガンレザー
きのこの菌糸体を培養して作られるヴィーガンレザーで、エルメスやアディダスといった大手ブランドも製品に採用している。きのこの菌糸体は成長が早く、天然皮革に比べ生産効率がいいといわれる。
サボテン由来ヴィーガンレザー
サボテンの葉の粉末を使用して作られるヴィーガンレザー。サボテンは少ない水の量で栽培が可能で、二酸化炭素も吸収するため環境にやさしい。
バナナ由来ヴィーガンレザー
バナナレザーは、通常廃棄されるバナナの茎部分の繊維を加工して作られるヴィーガンレザーだ。耐久性と撥水性にすぐれ、生分解性もある。
りんご由来ヴィーガンレザー
廃棄予定のりんごを使って作られるヴィーガンレザーで、皮、種、芯などあらゆる部分を活用している。アップルジュース加工の際の廃棄物を活用し、食品廃棄を減らすことにも貢献している。
ぶどう由来ヴィーガンレザー
イタリアのワイナリーと提携し、ワインを製造する際に廃棄されるぶどうの皮を活用して作られるヴィーガンレザー。ワインレザーとも呼ばれ、柔らかく滑らかな質感が特徴だ。
まとめ
上記のように、ヴィーガンレザーは食品を加工する際に出る廃棄物を再利用して作ることもでき、ローウェイストやフードロス問題の解消にもつながる。
ファッション業界のサステナブル化が進むなか、既存の革製品の代替素材としてこれからより多様なヴィーガンレザーが生まれてくるだろう。
【参考サイト】UNESCO-IHE『 The Green, Blue and Grey Water Footprint of Farm Animals and Animal Products』
【参考サイト】PETA「From Apples to Kombucha Tea: See the Ingenious Way Designers Are Making Vegan Leather」
【参考サイト】MSI Higg data
【参考サイト】世界最悪の汚染地区を閉鎖、バングラデシュの歴史的皮革産地
【参考サイト】ヴィーガンレザーとは? 話題のエシカル素材について知る
【関連記事】ヒマワリでつくるレザー素材?オランダのデザインスタジオが見る、持続可能なヒマワリの活用法
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