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グリーフケアとは・意味

Set of hand drawn illustrations of grieving adults comforting each other

グリーフケアとは?

グリーフケア(Grief care)とは、死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみや痛みに寄り添い、立ち直り、自立できるようケア・サポートすることをいう。グリーフサポート、死別ケア、悲嘆ケア、遺族ケア(Bereavement care)などと呼ばれることもある。

グリーフ(Grief)は英語で、「深い悲しみ・悲痛・悲嘆」を意味する言葉だ。家族や友人など身近な人との死別だけでなく、死産や流産の経験、愛するペットとの死別、災害による住み慣れた自宅の消失など、さまざまな喪失の体験により生まれる心理的・情緒的な痛みや悲嘆を指す。

こうした喪失による悲嘆は、精神疾患や身体疾患など、人の健康にさまざまな影響を及ぼしうる。そのため、喪失を経験した人が正常な悲しみのプロセスを経て立ち直り、心身を健康な状態に回復できるよう、周囲がさまざまなかたちでケアしていくことが必要だとされている。

グリーフケアの歴史

グリーフケアは1960年代に欧米で提唱され、日本では1970年代頃から研究されるようになった。1972年にイギリスの精神科医コリン・マーレー・パークスが発表した論文『Bereavement: Studies of Grief in Adult Life(死別:成人期における悲しみの研究)』により、「グリーフケア」という言葉が学術的に確立したといわれている。

日本においてグリーフケアが一般的に認知されるようになったのは、2005年に起きたJR西日本の福知山線脱線事故がきっかけだ。その後グリーフケアの必要性の高まりを受け、2009年4月にJR西日本あんしん社会財団の寄付協力を得て、日本で初めてグリーフケアを専門とした教育研究機関「グリーフケア研究所」が設立された。

2011年3月に起きた東日本大震災では、厚生労働省が家族を失った子どもたちへ、グリーフケアを提供したことで知られる。具体的には、専門のスタッフが一対一で子どもの話を聞き取り、会話やスキンシップをしながら悲しみの軽減を目指した。

グリーフケアの必要性

死別をはじめとする「喪失」による悲しみは睡眠障害や食欲低下、頭痛、抑うつ症状など、心身の健康に大きな影響を及ぼしうる。国立研究開発法人国立がん研究センターが行なった全国調査によると、死別を経験した遺族の11.7%〜19.4%が抑うつ症状に悩んでおり、長引く「悲嘆」を感じている人の割合は18.4%〜30.1%にのぼると推定されるという。

今後、高齢化が進み「多死社会」になると、身近な人との死別を経験する人はさらに増えると予想される。また、日本では7割の人が医療機関で死亡していることや、核家族化が進んでいることで、死に触れる経験が少なくなっている。そのことが不安・恐れの感情を助長しており、グリーフケアの必要性が高まっている。

また上智大学では、医療・福祉・行政・教育・宗教などの対人援助の職を持つ人、その他さまざまな方を対象とした、グリーフケア人材養成講座を2年制で展開しており、資格認定課程・専門課程を含めると最長4年のプログラムを提供している。

グリーフケアの方法

グリーフケアの方法は、個々の状態やニーズによって多様に変化する。

喪失を経験した人は一般的に「ショック期 → 喪失期 → 閉じこもり期 → 再生期」という4段階の悲嘆のプロセスをたどるといわれている。これを「グリーフワーク(grief work)」という。グリーフケアでは、このグリーフワークのプロセスを様々なかたちでサポート・ケアしていく。

とくにグリーフが長期化・慢性化する場合や、うつ症状、自殺願望、アルコール依存などが見られる場合は、医師や専門家によるグリーフケアが必要となる。

一般的なグリーフケア

一般的には悲しい気持ちに家族や友人などの身近な人が寄り添い、話を聞くことで悲しみを受け入れる手助けをしたり、葬式やお別れ会といったセレモニーを通して悲しみをケアしたりする方法がある。

また自治体が提供する相談窓口に相談したり、グループセラピーでケアを受けたりすることもできる。日本グリーフケア協会は「悲嘆回復ワークショップ」というワークショップ型のグリーフケアも提供している。

より専門的なグリーフケア

より専門的なサポートとして、死期に立ち会った医療従事者などが遺族へのサポートを提供することもある。アメリカやイギリスでは故人が亡くなった後も、遺族が定期的に病院に通いサポートを受ける場合もあるという。

精神状態などにより専門的なケアが必要とされる場合には、カウンセリングやグリーフケア外来、遺族ケア外来といった病院やメンタルクリニックでの治療を受けることもある。

テクノロジーを活用したグリーフケア

最近ではモバイルアプリやウェブコミュニティ、ビデオチャットを利用したオンラインセラピー、さらにIT技術や人工知能(AI)、仮想現実(VR)といったテクノロジーを活用して故人とメッセージや会話ができたり、故人をVR空間でよみがえらせたりするグリーフテックも登場している。一方で亡くなった人と再びつながりを求めようとすることで、精神的な健康状態を悪化させてしまうこともあり、グリーフテックは倫理上の問題や有用性などが議論されている。

グリーフケアのポイント

よりよく「生きようとする」ことを追求するQuality of Lifeではなく、最期をどう過ごすか(Quality of Death)、その過ごし方を受け止められるかもグリーフケアの範囲である。死を想い、正面から向き合おうとするラテン語「メメント・モリ」にも通ずる。

一方で、その感情の表現方法や悲しみとの向き合い方は人によって異なり、必要とされるサポートは状況によっても多様に変化するため、グリーフケアのあり方を定義することは難しい。

グリーフケアにおいて重要となることは、喪失を経験した人の心に寄り添い、個々の悲嘆のプロセスを尊重しながら支援を行うことだ。過度な助言や介入はかえって負担になったり、前向きな声がけがプレッシャーになってしまうこともある。ケアが一方的にならないよう、あくまで傾聴に努め、必要に応じて手を差し伸べていくことが求められる。

【参照サイト】上智大学グリーフケア研究所
【参照サイト】令和元年版自殺対策白書|厚生労働省
【参照サイト】国内外における遺族研究の動向と今後の課題
【参照サイト】遺族の心理的サポートに関する手引き (一般医療者用)
【参照サイト】超高齢化社会における死別とグリーフケア
【参照サイト】立正社会福祉研究 第21巻(2019)31~44 グリーフケアの実態と展望 ―医療・介護職員に対するアンケート結果を中心に―
【参照サイト】「患者さまが受けられた医療に関するご遺族の⽅への調査」 平成30年度調査結果概要|国⽴がん研究センター
【関連記事】グリーフテック(Grief Tech)とは・意味




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