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キャンセルカルチャーとは・意味

キャンセルカルチャー

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キャンセルカルチャーとは?

キャンセルカルチャーとは、著名人をはじめとした特定の対象の発言や行動をSNSなどで糾弾し、不買運動を起こしたり放送中の番組を中止させたりすることで、その対象を社会から排除しようとする動きのこと。政治家や芸能人、インフルエンサー、また企業なども対象となることがあり、人種差別的な発言や同性愛者に対する偏見、そのほか何らかの不正が明るみに出たときなどに起こることが多い。

キャンセルカルチャーは、アメリカを中心に2010年代中頃から見られるようになった。他者の過ちを徹底的に糾弾する「コールアウトカルチャー」の一種で、「You are cancelled(あなたは用無し)」と言って相手を切り捨てる、ボイコットに近い現象とも言える。日本語の「炎上」と似た意味も持っているが、キャンセルカルチャーは売上不振や役職辞任といった、対象者への何らかの制裁を求めている点が炎上とは異なる点だ。

キャンセルカルチャーの事例

海外でのキャンセルカルチャーの例として、奴隷制や人種差別に関わりのある歴史的人物の銅像を破壊したり、「Defund the Police(警察に資金を出すな)」という主張に否定的な意見を述べる人のキャリアを終わらせようと圧力をかけたりする、過激化したBLM運動などが挙げられる。

また、ハリーポッターシリーズの著者であるJ.K.ローリング氏が、トランスジェンダーを女性と認めないとの発言をして解雇された女性をSNSで応援したことで激しい非難の対象となったことも、キャンセルカルチャーの代表的な事例と言える。

日本企業が対象となった事例としては、スポーツメーカーのナイキが「差別」をテーマにした動画を公開し、2020年末に日本での不買運動が起こった件が挙げられる。SNSでは「#NIKE不買運動」「#ナイキのCMは日本ヘイト動画です」などのハッシュタグが作られ、注目を集めた。また同年、Amazonが国際政治学者をCMに起用したところ、Twitter上では「#Amazonプライム解約運動」というハッシュタグとともに、出演タレントの過去の発言への批判が投稿された。

東京2020オリンピックでも、当時組織委員会の会長だった森喜朗氏が女性蔑視と取れる発言をもとに辞任に追い込まれたり、開会式直前にミュージシャンの小山田圭吾氏が、雑誌のインタビューで同級生に対するいじめを自慢げに語っていたことが批判の対象となり、辞任したりするなど、日本でもキャンセル・カルチャーの事例が相次いだ。

キャンセルカルチャーの良い面、悪い面

前途した例も含め、キャンセルカルチャーは、#MeToo運動や#OscarsSoWhite(アカデミー賞で白人ばかりが優遇される)という批判など、インターネットを中心に社会にとって重要な対話を生み出してきた側面を持つ。SNSの普及に伴い、一昔前であれば問題にならなかったことも、ハッシュタグやリツイート機能を使えば瞬く間に問題が世間に広がるようになり、大衆の声が大きな力を持つようになったのだ。社会に大きな影響を与える人物の言動が倫理的かどうか、過去の言動との整合性がとれているかどうか確認するのは大切なことだ。エンタテインメント業界などが、ダイバーシティポリティカル・コレクトネスを意識して価値観をアップデートしていくのは、ポジティブな流れと言える。

一方で、こうしたキャンセルカルチャーが過激化することにより、民主主義に必要な言論の自由が阻害されていると主張する声も多い。

2020年7月7日、前述したJ.K.ローリングを含む作家や大学教授などの著名人153人が連名で署名した公開書簡「A Letter on Justice and Open Debate(正義と公開討論に関する書簡)」が、雑誌ハーパーズ・バザーに掲載された。そのなかには以下のような一文があり、キャンセルカルチャーの危険性とそれに伴う対応の不適切さを指摘している。

「It is now all too common to hear calls for swift and severe retribution in response to perceived transgressions of speech and thought. More troubling still, institutional leaders, in a spirit of panicked damage control, are delivering hasty and disproportionate punishments instead of considered reforms」
(言論や思想の侵害とみなされる行為に対して、迅速かつ厳しい報復を求める声は、今やあまりにも一般的になっています。さらに厄介なことに、組織のリーダーはパニックに陥ったダメージコントロールの精神で、熟考された改革ではなく、性急で不釣り合いな処罰を下しているのです。)

また、キャンセルカルチャーは、深く考えず、ストレス発散のために批判に加わっている人たちによって問題が広げられている場合も多い。キャンセル・カルチャーを研究するミシガン大学のリサ・ナカムラ教授は、「パンデミックで人々がSNSに割く時間が増え、ストレスのはけ口としてキャンセルのターゲット探しが活性化している現状がある。」と述べている。

SNS上では、「キャンセル・カルチャーそのものをキャンセルするべきでは?」といった著名人の指摘も共感を集めている。

より良い社会を築くための、キャンセルカルチャーとの付き合い方とは?

では、私たちはより良い社会を築くために、キャンセルカルチャーとどう付き合っていけば良いのだろうか。

まず、自分がキャンセルカルチャーにつながる発言や行動を起こそうとしている、もしくはその動きに加わろうとしているときは、怒りに任せて必要以上に強い口調で糾弾したり、事実を確認しないで情報を拡散したりしていないか、一度冷静に考えてみることが必要だ。民主主義を保つためには、異なる主張にも耳を傾ける姿勢が求められる。不適切だと感じた事に対して声をあげることは非常に大事だが、その目的は特定の人物を貶め、人々を分断させるためではなく、むしろ人々と連携して社会全体を良くするためだという認識を、常に忘れずに行動したい。

また、糾弾を受けた側は、事態を丸く収めようとして議論や吟味をしないまま早急な決断しないようにすることが大切だ。非難を受けた件について、必要な場合は批判を真摯に受け止めて行動を改めたり、周囲と協力してオープンに議論したりすることで、より良い社会を築くための一歩にできるかもしれない。

さらに、一度「キャンセル」されてしまった人や企業にも、行動を改めれば再起の道を認める。そんな空気感こそ、私たちの目指すより良い社会には必要なのではないだろうか。

【参照サイト】 トランプ氏、彫像の撤去など「キャンセル・カルチャー」と非難 ラシュモア山で
【参照サイト】 SNSで大炎上したJ.K.ローリングで今話題の「cancel culture」とは?【ニュースな英語】
【参照サイト】 A Letter on Justice and Open Debate
【参照サイト】「キャンセル・カルチャー」が燃えさかるアメリカ いま何が起きているのか




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