モーダルシフトとは・意味
モーダルシフトとは?
モーダルシフトとは、貨物輸送時の環境負荷を抑えるため、トラック等の自動車輸送から、鉄道や船舶といった二酸化炭素排出量の少ない輸送手段にシフトすること。
モーダルシフトという言葉が日本で登場したのは、1980年代だ。第二次石油危機を背景に、省エネルギー対策として提唱されたことが始まりである。1990年には、物流業の労働力不足対策の点からも、運輸省(現在の国土交通省)によりモーダルシフトが提言された。
京都議定書が採択された1997年には、地球温暖化対策の一環で2010年までにモーダルシフト化率50%を目指す方針が出され、その後も鉄道や海上輸送へのシフトを目指す目標が立てられてきた。近年は、SDGsの観点からも注目を集めている。
モーダルシフトが必要な理由
モーダルシフトは、私たちの社会が抱える様々な課題解決に繋がる。
輸送に伴う環境負荷を抑える
貨物を輸送する際に、どれくらいの二酸化炭素が排出されるかご存知だろうか?国土交通省の調べでは、1トンの貨物を1キロメートル運ぶ際、トラックなどの営業用貨物車からは225グラムの二酸化炭素が排出される。これに対し、鉄道輸送で排出される二酸化炭素量は18グラム(トラックの約1/13)、船舶では41グラム(トラックの約1/5)(※1)となる。このように運送手段によって二酸化炭素排出量が大きく異なるため、排出量の少ない鉄道や船舶での輸送にシフトすることは、環境負荷を抑えるうえで大きな効果があるのだ。
物流業の人材不足を解消する
近年、トラックドライバーの高齢化は全産業平均以上のペースで進んでいる。また、小口配送需要の増加により、労働力不足は強まる傾向にある。トラック輸送から鉄道・船舶輸送へのシフトは、こうしたトラックドライバー不足の解消にも繋がるのだ。
モーダルシフトの課題
社会課題解決に向け期待が高まるモーダルシフトだが、実現にはハードルもある。以下は、モーダルシフトの実現を阻む要因の一例である。
短距離輸送や小口配送に不向き
鉄道や船舶輸送はコストがかかるため、500キロメートル以上の長距離輸送や一度に大量の荷物を輸送する場合にメリットがあると言われている。しかし、日本の輸送量全体の93%は500キロメートル未満の短距離輸送(2017年度)(※2)であり、モーダルシフトはコスト高になってしまうのが現状だ。
台風や水害など災害の影響を受けやすい
鉄道・船舶は災害の影響を受けやすく、特に鉄道は運休すると復旧までに時間がかかる。代替輸送手段の確保など、災害時の安定的な輸送に不安が残るといった事業者の声も多い。
このような課題に対し、国土交通省は貨物輸送のための鉄道インフラ整備や、モーダルシフトを行う事業主に対する補助事業を実施し、モーダルシフトを支援している。
モーダルシフトの事例
モーダルシフト化には課題も残るものの、日本の様々な企業が実現に向けて取り組んでいる。以下がその一例だ。
鈴与株式会社・鈴与カーゴネット株式会社
日本物流団体連合会が毎年主催する「モーダルシフト取組み優良事業者公表・表彰制度」で、2021年度に大賞を獲得したのが、鈴与株式会社と鈴与カーゴネット株式会社だ。両社は、食品など複数品目の輸送において、複数区間でトラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトに取り組み、二酸化炭素排出量の削減と、トラックドライバーの運転時間削減を実現した。この取り組みにより、トラックによる輸送距離が大幅に短縮され、二酸化炭素排出量を削減するとともに、トラックドライバーの運転時間についても年間10,000 時間以上の削減に成功している。
佐川急便
佐川急便では、2004年から日本貨物鉄道株式会社と共同開発した電車型特急コンテナ列車「スーパーレールカーゴ」を運行している。スーパーレールカーゴは、東京~大阪間を1日1運行しており、積載できる貨物量は10トントラック56台分に相当。これは、東京~大阪間の荷量の約10%にあたる量だという。鉄道で1度に大量の荷物を効率的に輸送することで、二酸化炭素排出量の低減や、トラックドライバーの労働環境改善などに大きな効果を発した事例だ。
まとめ
近年モーダルシフトは、物流のみならず個人の移動手段においても注目を集めている。デンマークのコペンハーゲンや、スペインのバルセロナ、セビージャなど様々な都市が主体となり、環境にやさしい移動手段へのシフトに取り組んでいるのだ。以下がその一例だ。
- 自転車や歩行者専用道路の増設
- 個人利用のバイクシェアの推進
- 電気自動車の充電設備の拡充
- 公共バスの脱炭素化
- 低排出ゾーン(Low emission zones <LEZs> )の設置
貨物の輸送から個人の移動まで、幅広い文脈でのモーダルシフトの実現が期待される。
※1 モーダルシフトとは(国土交通省)
※2 物流を取り巻く動向について(国土交通省)
【参照サイト】鉄道へのモーダルシフトの状況及び検討にあたっての問題意識について(国土交通省)
【参照サイト】鈴与㈱・鈴与カーゴネット㈱による「食品等の海上輸送へのモーダルシフト」への取り組みが 「令和3年度モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)」を受賞(PR TIMES)
【参照サイト】SAGAWA NEWS LETTER(佐川急便)
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