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リスキリングとは・意味

リスキリング

リスキリングとは?

急速に変化する時代の中で、組織に必要な戦略となるリスキリング(Reskilling)。経済産業省は、これを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義している(※1)

具体的には、小売店の店員がカスタマーサポートのスペシャリストに再教育されたり、倉庫作業員がロボット技術者として働いてみたり、会計士がデータサイエンティストとしてのスキルを付けたりと、さまざまなものが挙げられる。

リスキリングの重要性が謳われるようになった背景には、産業のDX(デジタル・フォーメーション)がある。さまざまな業務プロセスの自動化が進むなか、これまでにない仕事や課題に対処可能な人材の育成が企業に求められているのだ。リスキリングは、そんなDX化に伴う新しい人材育成の手法として注目されている。世界経済フォーラムでは、2025年までに世界の労働者の40%以上がリスキリングを必要とすると報告された。

経済産業省は、令和3年12月に行われた「デジタル時代の人材政策に関する検討会 実践的な学びの場ワーキンググループ 第2回」にて、「デジタル社会においては、全ての国民が、役割に応じた相応のデジタル知識・能力を習得する必要がある」とし、小・中・高等学校における情報教育のみならず「現役のビジネスパーソンの学び直し(=リスキリング)が重要」としている。

アップスキリングや、リカレント教育との違い

リスキリングと似たような言葉として、「アップスキリング(Upskilling)」や「リカレント教育」があるが、それぞれ異なるものである。

まずは、アップスキリング。これは、従業員が同じ職種の中でより高度な技術や専門性を身につけることだ。現在持っているスキルの、延長線上にあるといえる。一方でリスキリングは、現在とは異なる職種に向けたトレーニングを指している。

一つの職種や分野のプロ・専門家を目指して行われるのがアップスキリング、より幅広いことができるジェネラリストを目指すのがリスキリングと覚えておくとわかりやすい。

また、リカレント教育は「生涯学習」とも言い換えられるものだ。「個人」を主体とした学習行為を指し、社会人が必要に応じて学校へ戻って学び直す、循環・反復型の教育体制である。そのため、学び直す際には職を離れる前提がある。

一方リスキリングは、企業が従業員に新しいスキルを身につけてもらうことに主軸が置かれ、会社や組織で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶという点が強調されている。

リスキリングのメリット

従業員を雇う組織としてのメリットには、「一時解雇や再雇用を避けられること」や、「従業員の離職率を下げられること」が挙げられる。

多くの企業にとって、ビジネスの性質の変化には痛みが伴う。古い体質でいることは市場での地位を下げる可能性があるため、古い役職を廃止したりして、スキルギャップを回避するしかない。しかし古い役職の廃止は一時解雇につながり、新しい役職に就くための再雇用にはそれなりのコストがかかる。リスキリングによって廃止された職種の従業員に新しいスキルを身につけてもらうことで、このような問題は回避できるのだ。

またリスキリングには、従業員の離職率を下げることも期待されている。IBM Corporationの調査によると、リスキリングの研修などを受けた社員は、受けていない社員よりも、その会社に長く勤める可能性が42%高いと分かっている。また、マッキンゼーが行った2020年のイギリスの調査によれば、リスキリングは4分の3の企業で経済的にプラスの効果があると分かっている。

従業員にとってのメリットには「キャリアパス(企業内で目標とする職務などに就くために必要な業務経験などの道筋)の変更が柔軟にできる」「デジタル時代で困ったときに新しいスキルを身につけられる」「雇用の安定を感じられる」などが挙げられる。リスキリングは、DX化により労働力が変化し、特定の役職が失われつつある中で、需要の高い役職を得るために重要なことである。

リスキリングの事例

企業におけるリスキリングの取り組みは、日本国内でも少しずつ始まっている。例えば大手総合商社である住友商事株式会社や三菱商事株式会社などは、デジタルスキルを得るための実践研修を始めている。

また2022年5月に株式会社アイスマイリーと株式会社アイデミーが共同で「リスキリングに役立つ資格・研修サービスカオスマップ」を公開。リスキリングのための資格・研修サービスの利用を検討している企業に配布している。

2022年6月にはグーグル合同会社を主幹に、国や地方自治体、企業など49団体が参加する「日本リスキリングコンソーシアム」が発足。デジタル人材を育成するため、さまざまな企業によるトレーニングプログラムなどが提供されている。

まとめ

IT分野を中心としたリサーチ&アドバイザリ企業Gartner, Inc.によると、2017年の平均的な求人広告で求められているスキルの33%が2021年には不要になっていることが分かっている。

そして大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下、マッキンゼー)によれば、経営者の87%が2020年にスキルギャップを経験するも、半数以下がこの問題にどう対処すればよいのか明確な意識を持っていないという。

そんななかで、リスキリングは今日の労働力において重要な役割を果たしていくだろう。組織、そして従業員双方にとってメリットのあるリスキリングが今後どのように広がっていくか注視していきたい。

※1 経済産業省 リクルートワークス研究所

【参照サイト】What Is Reskilling? Why Is It So Important Today?
【参照サイト】第2回 実践的な学びの場ワーキンググループ
【参照サイト】今後に向けた取組(案)について
【参照サイト】リカレント教育 – 厚生労働省
【参照サイト】AIsmileyとAidemy、リスキリングに役立つ資格・研修サービスカオスマップを公開!
【参照サイト】日本リスキリングコンソーシアム




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