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カーボンリーケージ(炭素リーケージ)とは・意味

カーボンリーケージ(炭素リーケージ)とは

温室効果ガスの排出規制が厳しい国の企業が、規制の緩やかな国へ生産拠点や投資先を移転し、結果的に世界全体の排出量が増加する事態のこと。

例えば、欧米ではここ数年、温室効果ガスの排出量は減少傾向にあるが、中国やインドなどの発展途上国では急激に増加している。途上国の排出量の増加は、一方では国内の成長によるところも大きい。しかし、先進国の企業がコスト削減や規制を回避するために海外に工場を設立し、自国以外での排出量を増やしていることも一因だ。その結果、環境汚染や気候変動を助長するというパラドックスが生じている。

カーボンリーケージが起きる原因

世界銀行が毎年発表している「State and Trends of Carbon Pricing」の2015年版では、主に次の3つのケースでカーボンリンケージが起こるとされている。

1. 短期のアウトプットチャネル
カーボンプライシングが設定されている国の企業が、設定が無い国の企業に市場シェアを奪われる場合

2. 長期の投資チャネル
新たな投資の機会が、カーボンプライシングの設定が無い国に優先的に存在する場合

3. 国際的な化石燃料価格チャネル
カーボンプライシング の導入による化石燃料需要の低下によって、国際的な化石燃料価格が下がり、結果として導入していない地域での需要の回復とそれに伴う排出増加につながる場合

現状では先進国を中心に導入が進められているカーボンプライシングだが、その格差により全体の排出量が増えるということは本末転倒と言える。

カーボンリーケージを抑制する動き

こうしたカーボンリーケージが発生する状況を背景に、それを抑制し、国際競争上の条件を是正しようとする動きも出てきている。

炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism / 略称CBAM)

一般的に、厳しい気候変動対策をとる国が、そうでない国に対して行う水際での貿易措置のことを指す。国境において輸入品には自国と同等の炭素コストを課金し、輸出の際にはその製品に課せられた炭素コスト分を還付する。そうすることで、国内では国産品と輸入品の両方に同等の炭素コストが課せられ、海外に向けては炭素コストがかからずに製品を輸出することができる。

これにより、自国製品が他国製品より競争上不利になることを防ぎ、カーボンリーケージを抑えることができる。特に、カーボンリーケージのリスクが高いとされている、電力、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料の5つのセクターから取り組みを始めているが、その後、他の産業セクターにも拡大していく予定だ。

EUでは、2021年7月14日、欧州委員会が2030年の温室効果ガス削減目標(1990年比で55%以上の削減)を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」を発表した。その1つとして「炭素国境調整メカニズム」の規則案が提示され、現在欧州議会とEU理事会で審議されている。EUの排出権取引制度(EU ETS)でも、カーボンリーケージのリスクが大きいとみなされた産業セクターは、その競争力を維持するため、他のセクターより優先的に無料の排出枠を受け取ることができるなどの措置が講じられている。

またアメリカでも、気候変動対策に積極的なバイデン政権によって、炭素国境調整を導入する法案などの議論が始まっている。

まとめ

2050年のカーボンニュートラルに向けて、欧米諸国を中心に様々な動きが加速している。しかしまだまだ、世界全体が同じ方向を向いているとは言えない。自国の利益だけを考えるのではなく、あらゆる格差をなくし、お互い手を取り合って地球を守るための行動が、国際社会に求められている。

【参照サイト】Carbon leakage | European Commission
【参照サイト】What is Carbon Leakage? | UC DAVIS CLEAR Center
【参照サイト】Carbon Leakage | Carbon Market Watch
【参照サイト】炭素国境調整、欧米が検討 | 日経ESG
【参照サイト】炭素国境調整に向けて動き出した米国とEU | 北米地域における環境政策の動向と現地ビジネスへの影響 – 特集 – 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 | ジェトロ
【参照サイト】カーボンプライシングの効果・影響 | 環境省
【参照サイト】欧州における排出権取引制度の見直しと炭素国境調整メカニズム | 三井住友銀行




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