First Movers Coalition(FMC)
First Movers Coalition(FMC)とは、2021年秋に開催された第26回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)において、米国政府が世界経済フォーラムと協力して立ち上げたイニシアティブである。温室効果ガス(GHG)排出量実質ゼロの達成に必要な重要技術を大企業が2030年までに購入することを約束することにより、早期の市場創出、脱炭素技術の開発と普及促進を目指している。
2022年7月現在、FMCのメンバーはグローバル企業55社で、日本からは商船三井が唯一参加している。このほか、ビル・ゲイツが創始者となりジェフ・ベゾスやマイケル・ブルームバーグなどが出資するブレイクスルー・エナジーがプロジェクト資金の提供者として、日米を含む9カ国が戦略パートナー国としてFMCの活動を支援している。
優先度が高い8つのセクター・技術にフォーカス
FMCが取り組みの対象としているのは、優先度が高い8つのセクター・技術だ。メンバー企業は、このうち少なくとも一つで低炭素技術を購入することを約束することが求められている。
鉄鋼、セメント、アルミニウム、化学品、海運、航空、トラック輸送の7セクターは、世界のCO2排出量の3分の1以上を占めるが、排出削減が困難なセクターと言われている。大気中のCO2を直接回収するテクノロジー「ダイレクトエアキャプチャー(DAC)」は、大気中のCO2を削減することにより排出量実質ゼロの実現に貢献する有望技術であるが、商業化にはさらなるイノベーションが必要だ。
セクター・技術ごとのメンバー企業のコミットメント(セメント、化学品は未公表)
- 鉄鋼
鉄鋼の購入企業は、2030年までに年間調達量のうち10%以上をゼロに近い排出量の鉄鋼を購入すること
- アルミニウム
アルミニウムの購入企業は、2030年までに年間調達量のうち10%以上をCO2の排出を抑制した製造方法でつくられたアルミニウムを購入すること
- 海運
海運会社は、2030年までに深海輸送の少なくとも5%をゼロエミッション燃料で賄うこと
貨物船所有会社は、2030年までに国際貨物の10%以上を、そして2040年には100%を、ことゼロエミッション燃料を使用した船舶で輸送すること
- 航空
航空会社および航空輸送会社は、2030年までに、従来のジェット燃料需要の少なくとも5%を、従来のジェット燃料と比較してライフサイクルでのGHG排出量を85%以上削減したSAFに置き換える、またはゼロカーボン排出を促進する技術を活用すること
- トラック輸送
トラック運送会社は、2030年までにゼロエミッションの車両を中型車で100%、大型車で30%となるよう購入または契約すること
- ダイレクトエアキャプチャー
2030年までに50,000トン以上あるいは2,500万ドル以上のCO2除去技術に係る契約すること
低炭素技術の新興国への普及が2050年実質ゼロ目標達成のカギ
2019年時点の世界全体のCO2排出量データを見ると、G7先進国は約24%を占めるにすぎない。2050年の温室効果ガス実質ゼロ目標の達成には新興国の削減努力が必要なのは明らかだ。

図表 世界のエネルギー起源のCO2排出量(2019年)に占めるG20諸国の割合(出所:環境省)
一方、新興国は経済成長を阻害するような規制等の導入には後ろ向きであるのが一般的だ。規制に頼ることなくこれらの開発途上国の排出量を削減するには、低炭素技術の低価格化が不可欠だ。こうした意味で、市場の需要創出を梃子にして低炭素技術の普及を目指すFMCのアプローチは非常に興味深い。今後の動向に注目だ。
【関連記事】COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)とは・意味
【関連記事】ダイレクトエアキャプチャー(DAC)とは・意味
【参照サイト】世界経済フォーラムFMCホームページ
【参照サイト】経済産業省 戦略パートナー国としてのFMC参加に関するニュースリリース
【参照サイト】環境省 世界のエネルギー起源CO2排出量(2019年)
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