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愛知目標とは・意味

生物多様性

愛知目標とは?

愛知目標とは、生物多様性条約の目的を達成するため、COP10で採択された2011年~2020年までの世界目標のことだ。

目標は、大きく2つに分けられる。1つは、2050年までに「自然と共生する世界」の創造に向けた長期目標。もう1つは、2020年までの達成を目指した、20項目の短期目標だ。

2050年までの長期目標と2020年までの短期目標

長期目標に示された「自然との共生」の概念は、2010年1月に生物多様性条約事務局に提案されたものだ。日本で古くから培われてきた、里山のような自然共生の考え方や知恵が、世界的に理解と共感を得たといえる。

一方、生物多様性の損失を止めるため、緊急かつ効果的な行動を求めたのが短期目標だ。20項目の短期目標は、それぞれ5つの戦略目標に分けられる。

戦略目標A:生物多様性の価値の認識を向上させ、正当な評価の仕組みをつくる
戦略目標B:生物多様性に悪影響を及ぼす人間活動を制限する
戦略目標C:生物多様性への直接的な保全をする
戦略目標D:生物多様性や生態系からの恩恵を強化する
戦略目標E:目標達成のため、参加型計画立案や知識管理、あらゆる資源の活用を促進する

愛知目標の最終評価報告書

愛知目標の最終評価を盛り込んだ報告書では、「完全に達成された愛知目標は1つとしてない」ことが世界全体として結論づけられた。一方で、「20の目標の内、6つの目標(目標 9、11、16、17、19、20)が部分的に達成された」とし、「規模を拡大すれば、自然との共生という2050年ビジョンの達成」に向けた社会変革を支えられると展望した。

国別目標を見てみると、そもそも「対象範囲と野心度の点で、愛知目標にはほとんど及んでいない」ことが報告されている。世界中すべての国別目標も、結局のところ10分の1のみが愛知目標に及んでいて、かつ達成できるような状況であった。

愛知目標未達成のいくつかの原因

報告書からもわかるように、各国の意欲が低かったことが達成できなかった原因の1つだ。また20項目の目標は、必ず達成しなければいけない義務を課されたものではなかった。

他の原因として考えられるのが、ビジネス界において生物多様性の重要度が企業ごとに異なることだ。WWFは、日本企業を対象にした生物多様性取組に関する調査によると、自社及び生物多様性への影響共に把握しているのは22%であった。

要するに、自社独自の生態系に与える影響把握のツールを開発するなど、それ相応の労力がかかるのだ。開発可能な企業はいいが、それが22%に留まるのが現状である。

ポスト愛知目標を巡る今後の展望

企業セクターに生物多様性を保全する仕組みを導入し、価値の認識を向上することが各国の意欲を上げることにも繋がりそうだ。

そこで注目されるのが、30by30OECMなどの保護地域をさらに拡大しようとする、野心的な取組だ。企業など民間の取組み等で統治・管理される、生物多様性の保全を長期的に維持する地域の拡大を目指す。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、人間と自然との関係性は、これまで以上に意識されるようになった。

「人が森林などの環境を破壊し、それまで踏み込んだことのなかった自然の奥にまで入り込むようになったことで、新型コロナが発生し、拡散するようになった」とWWFは警告する。

今回のパンデミックの教訓を生かし、かつ30by30などの企業セクターを巻き込む野心的な目標により、速度を上げて生物多様性の損失に取り組む世界を目指したい。そのためにも、ポスト愛知目標がどのような目標になるのか注目だ。

【参考サイト】愛知目標|生物多様性ーBiodiversityー(環境省)
【参考サイト】愛知目標の最終評価文書、地球規模生物多様性概況第5版(GBO5)の発表
【参考サイト】「愛知目標」はなぜ達成できなかったのか? コロナとも関わる生物多様性の危機
【参考サイト】地球規模生物多様性概況第5版
【参考サイト】ネイチャー・ポジティブなビジネス主流化に レポート「生物多様性とビジネス-危機的現状とビジネスの可能性-」
【参考サイト】生物多様性は世界を救う!?豊かな生物多様性が動物由来感染症を防ぐメカニズムとは
【参考サイト】「民間の取組等によって生物多様性の保全が 図られている区域」認定の進め方について




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