Just Transition(公正な移行)とは?
Just Transition(公正な移行)とは、気候変動や生物多様性などの環境問題の解決に取り組むにあたり、すべてのステークホルダーにとって公正かつ平等な方法により持続可能な社会への移行を目指す概念である。
足元では、パリ協定に基づいて2050年までの脱炭素社会への移行に向けた取り組みが加速している。産業構造の大きな変化が避けられないなかで、環境負荷の軽減と労働者の雇用をどう両立させるかが大きな課題だ。
エネルギー産業への影響は甚大
国際労働機関(ILO)は、2018年に公表したレポートの中で、脱炭素社会への移行に伴い2030年までに、再生可能エネルギー関連セクターを中心に全世界で2,400万人の雇用が新たに創出される一方、化石エネルギーや公益セクターで600万人の雇用が失われると予測している。
電気自動車(EV)の普及が進む自動車産業への影響も非常に大きい。日本自動車工業会の豊田会長は2021年3月の記者会見で、国内の電力構成の脱炭素化が進まなければ、国境炭素税の影響等により輸出が困難となり、関連産業を含めた約550万人のうち70~100万人の雇用が失われかねないと危機感を示した。
企業には雇用維持のための最大限の努力が求められる
グローバル企業の人権問題への取り組みにスコアを付与しているWorld Benchmark Alliance(WBA)は、公正な移行を促進するための企業が取るべき行動を定義し、評価対象としている。WBAは、株主利益のために労働者を切り捨てたりすることがないよう、企業の責任ある行動を求めている。
公正な移行を促進するために企業が取るべき行動
1.労働組合や政府機関等との社会対話とステークホルダーへのエンゲージメント
2.公正な移行のための計画の策定
3.グリーンでディーセントな仕事の創出
4.雇用の維持とそのためのリスキリング、アップスキリングの機会の提供
5.社会保障と公正な移行による社会的影響のマネジメント
6.公正な移行を促進するための政策決定や法規制への支持の表明
(出典)World Benchmark Alliance
急進的な移行がもたらしたスリランカの悲劇
2022年7月、インドの南端に位置する島国スリランカは債務不履行(デフォルト)に陥り、財政破綻を宣言した。こうした事態が生じた原因としては、コロナ禍での観光収入の減少や対外債務の増大などに加えて、急進的な有機農業への移行が指摘されている。
2019年に10年間かけて有機農業に移行することを公約として当選したラジャパクサ大統領は、2021年4月に化学肥料と農薬の使用を全面的に禁止した。これにより、禁止からわずか半年間で、主食であるコメの生産量は20%減少し、価格は50%上昇し、国民生活に多大な影響が生じた。こうした影響は紅茶など主要な輸出作物にも及び、同国の経済への大打撃となり、対外債務の返済に行き詰まることになったというわけだ。
スリランカの事例は、環境負荷と経済や人々の暮らしの両立の難しさを示している。脱炭素社会への移行は、2050年までの長い道のりだ。国際社会、各国政府、個々の民間企業、それぞれにおいてステークホルダーへの影響に十分配慮したうえで、公正な移行に取り組むことが必要である。
【関連記事】ディーセント・ワークとは・意味
【関連記事】リスキリングとは・意味
【参照サイト】ILO World Employment Social Outlook 2018 -Greening with jobs
【参照サイト】日本自動車工業会 豊田会長記者会見(2021年3月11日)
【参照サイト】World Benchmark Alliance Just Transition Methodology
【参照サイト】Foreign Policy In Sri Lanka, Organic Farming Went Catastrophically Wrong












