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気候緩和とは・意味

気候緩和

Image via Pexels

気候緩和とは、温室効果ガスの排出を減らし、気候変動の進行を緩やかにすることだ。(※過去に排出された温室効果ガスの影響があり、気候変動の進行を「止める」ことはできないため、気候「緩和」を行う。 )緩和策とはたとえば、省エネや化石燃料を使用しない再生可能エネルギーによる温室効果ガスの排出削減、森林再生といった取り組みである。

2015年に締結されたパリ協定では、この緩和策とともに、気候変動への適応に関する能力の向上、ならびに適応に関する世界目標を定めることが第七条でうたわれており、気候変動対策として「緩和策」と「適応策」の双方を施していくことが重要とされている。

気候変動の緩和と適応イラスト

気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)ウェブサイトより

気候緩和の例

気候緩和には、個人の生活から国際会議まで様々な場で取り組むことが可能だ。

【例】
◇国が中心となって実施する大規模な取り組み◇
-排出量そのものを抑制するための国際的なルールの制定(京都議定書など)
-二酸化炭素の固定化を行う   など◇企業や個人で実施できる取り組み◇
ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の建築
-再生可能エネルギーの使用(太陽光・風力発電への切り替えなど)
パートタイム・ベジタリアンになる
ゼロウェイストを目指す
-公共交通機関・自転車を使う(ガソリン車の使用を減らす) など

気候緩和の目標と進捗

2015年にパリ協定で示された目標で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすることを掲げた。さらに、カーボンニュートラルを達成する目標のもと、各国は対応に迫られている。

そんな中、現時点ではEUや日本をはじめ、再生可能エネルギーの利用増加と化石燃料の利用減少により、温室効果ガス排出量の減少が報告されている。

日本
2030年までに2013年度比温室効果ガス排出量を46%減
→2020年度時点21.5%減少EU
2030年までに1990年比温室効果ガス排出量を55%削減
→2022年時点1990年比で31%減少

米国
2030年までにGHG排出量を2005年比50~52%削減
→2022年時点2005年比15.5%減

中国
2030年までに温室効果ガス排出量をピークにする
→英国のシンクタンク「Carbon Brief」、2024年減少に転じる可能性があると報道

一方で、気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は2021年8月に、2011年から2020年の10年間で世界の平均気温が1850年から1900年の間に比べて1.09度上昇していると「政策決定者向け要約」で発表。そのため、IPCCは気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要だと示した。

しかし現時点では、世界各国のCO2排出量削減対策の進捗具合を見る限り、約45%の削減は容易ではないことも明らかになっている。今後さらに再生可能エネルギーへの移行、森林破壊の削減、大気中への温室効果ガスの森林、海洋、土壌での捕捉と貯蔵を加速させ、自然を回復させる必要がある。

気候緩和に関する注目キーワード

気候緩和を促進するさまざまなキーワードが生まれている。ここではそのいくつかを紹介する。

トランジションデザイン

地球規模の巨大な問題に対して、社会規模の価値観の移行をデザインする新たなデザインの実践・研究のこと。このデザイン理論では、私たちが生きている現在は「過渡期」であり、持続可能な社会への移行に向けてシステムそのものを根本的に変革していく必要があるという考え方が前提にある。そのうえで、知識やアイデア、スキル、文化などを共有や交換できるグローバルコミュニティを構築することを目的とする。

クライメートテック

CO2排出量の削減または地球温暖化の影響への対処に焦点を当てた技術のこと。2050年までにネットゼロ到達を目指し、脱炭素化の課題に取り組む幅広いセクターが代替燃料、電気自動車や高速充電ステーション開発、エネルギー効率の高い製造プロセス、代替肉などの代替食品開発などに取り組んでいる。CO2を回収し、有用で市場性のある素材や製品に変える「カーボンテック」にも注目が集まっている。

カーボンファーミング

大気中のCO2を土壌に取り込んで、農地の土壌の質を向上させ温室効果ガスの排出削減を目指す農法のこと。土壌の表面30〜40cmの炭素貯留量が年間0.4%増加すれば、毎年の人為的排出による大気中のCO2増加量を相殺できるという。

欧州委員会は、2021年12月、カーボンファーミングに関する短期〜中期のアクションが含まれる政策文書を発表。米国においては、連邦議会でカーボンファーミングを排出量取引制度に組み込むための法整備が進められている。

気候緩和の課題

気候緩和の取り組みは「続けることで効果が見えてくるもの」であり「取り組んでいても成果を実感しにくい」という特徴がある。短期的な利益や目に見える経済成長を重視している国や企業、個人にとっては、取り組むメリットが感じられず続けるのが難しいと感じられることもあるようだ。

こうした課題を克服するには、気候緩和の重要性を多くの人々に理解してもらうこと、日常生活や企業活動、国際ルールを、気候緩和につながる仕組みに変えていくことが重要だ。

【関連ページ】気候変動への適応策とは・意味
【関連ページ】損失と損害(Loss and Damage)とは・意味
【関連ページ】グリーンインフラとは
【関連ページ】Tシャツから始まる気候アクション。パタゴニアのリジェネラティブ・オーガニック
【参照サイト】2020年度における地球温暖化対策計画の進捗状況




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