オートヴィーガニズム（Haute Veganism）とは？

オートヴィーガニズムとは、主にレストランやホテルで提供される高級料理における完全菜食主義のこと。
Hauteとはフランス語で「高い」「高級な」といった意味で、フランス料理では宮廷料理を起源とした格式高い高級料理を「オートキュイジーヌ（Haute Cuisine）」と呼ぶ。

オートヴィーガニズムは、そうした高級料理の世界でトップシェフによって創作されるヴィーガン料理全般を指す。

ヴィーガニズムの広がり

ヴィーガニズム（完全菜食主義）とは、衣食住など生活全般において動物由来の製品を可能な限り排除し、動物からの搾取をできるだけ避けるべきという考えである。食であれば肉だけでなくバターや牛乳、蜂蜜など、衣料であれば毛皮、皮革製品などを避けて生活する。
近年ヴィーガニズムは動物愛護だけでなく、地球環境保護の観点からも注目されており世界的に広がっている。

イギリスのVegan Society（ヴィーガン・ソサイエティ）によると、イギリスでは2014年に15万人ほどだったヴィーガン人口が、2019年には4倍の60万人に増加しているという。またアメリカでは2017年のヴィーガン人口が1960万人ほどと推計されており、2014年から約5倍に増えている。

ヴィーガンの広がりに伴って、2021年には「vegan food near me（近くのヴィーガンフード）」というGoogle検索が5000％以上増加した。

フランス初ヴィーガンレストランがミシュランを獲得

こうした流れの中で、持続可能な食のあり方を模索するトップシェフたちが、高級料理店においてプラントベースの料理を提供するようになった。

中でも注目を集めたのは、2021年にヴィーガンレストランとしてフランスで初めてミシュランの星を獲得した「ONA」だ。ONAはフランス南西部ボルドーの近郊に位置する小さな街アレスにあるヴィーガンレストランで、ONAというレストラン名は「Origine Non Animale（動物起源ではない）」を意味する。

世界三大料理として世界の食文化をけん引するフランス料理では、フォアグラをはじめ多くの動物性高級食材が好まれてきた。そのフランス料理界において、ヴィーガンレストランがミシュランの星を獲得したことの意味は大きい。また、これまでベジタリアンやヴィーガンレストランに星を授与することは極めて稀だったミシュランが、プラントベースの料理に注目し始めたことも画期的だ。

ONA以前には、アメリカとドイツでベジタリアンとヴィーガンのメニューがあるレストランがミシュランの星を獲得している。

高級料理におけるヴィーガニズム

これまでヴィーガニズムの広がりに伴い、一般的なレストランでは動物性の食材を含まないヴィーガンメニューが増えてきたが、高級料理店ではあまり受け入れられてこなかった。

その理由の一つは、植物性中心のヴィーガン料理は質素なイメージがあったこと。また、オートキュイジーヌのトップシェフほど古典的なフランス料理の概念に沿う傾向が強かったことも要因と言える。

しかし近年、地球環境に配慮した食を求める声の高まりからヴィーガン料理に関心を持つトップシェフが増え、美食とサステナブルの観点を兼ね備えたオートキュイジーヌが創作されるようになった。

オートヴィーガニズムは、これから新たな食文化としてより確立されていくことが予想される。そこで大切なことは、ヴィーガニズムの概念を押し付けることなく、あくまで人々により広い食の選択肢や可能性を提供しながら、サステナブルな食のあり方を提案していくことではないだろうか。

【参照サイト】Worldwide growth of veganism｜Vegan Society
【参照サイト】GOOGLE SEARCHES FOR “VEGAN FOOD NEAR ME” SPIKE BY MORE THAN 5,000 PERCENT IN 2021
【参照サイト】2020：The Year of Flexitarian｜sustainalytics
【参照サイト】Out with the meat, in with the plants as world’s top chefs offer vegan menus｜The Guardian
【参照サイト】Veganism goes haute cuisine｜Financial Times
【関連記事】「多様な食文化」とは、選択肢を持つこと。ヴィーガンシェフが考える、ソーシャルフードガストロノミーとは？【FOOD MADE GOOD#3】

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