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Racial Justice(人種的正義)とは・意味

人種的正義

Racial Justice(人種的正義)とは?

Racial Justice(人種的正義)とは、人々が人種に基づいて不当な扱いを受けない社会を目指す概念であり、あらゆる人種の人々、すべての人に公平な機会と結果をもたらすことを表す。人種的なヒエラルキーをなくし、「Collective liberation(集団的解放)」を進めるための社会の将来像と変革ともいわれる。

なお、Collective liberationは、すべての人が自由で安全な、より公正な未来に向けて、連携し、責任をもって集団行動を起こすことを意味する。この言葉を端的に表すと、「すべての人が自由になるまでは、誰も自由になれない」と言い表せる。

歴史的に見ると、多くの国で人種差別は深く根ざした問題として存在してきた。例えば、アメリカでは奴隷制度や人種隔離政策など、黒人と白人の間で法的、社会的な差別が公然と行われていた。これらの過去の制度は、現代における人種間の経済的、社会的格差に長い影を落としている。そのため、人種的正義の追求には、これらの歴史的不平等を認識し、積極的に解消する取り組みが不可欠である。

Racial equity(人種的公正)との違いは?

人種的正義によく似た言葉にRacial equity(人種的公正)がある。人種的公正は人種間の格差をなくし、すべての人のために結果を改善するプロセスを表す。

非営利団体Race Forwardは、人種的正義と人種的公正の関係性について、こう書いている。

人種的公正は、人種的正義のビジョンに向かうためのプロセスである。人種的公正には人種的正義のビジョンに向かう中で達成され得る中間目標と成果が求められる。人種的公正は人種的正義に必要だが、それだけでは十分でない。

人種的公正は人種的正義の過程にあるものだが、いずれも「Anti-racism(反人種差別)」を超えた考え方だ。反人種差別は人種差別に反対し、差別の撤廃を目指すことを表す。

人種的正義や人種的公正の考え方には差別や不公平がないだけでなく、積極的かつ予防的な手段によって人種間の格差をなくし、維持するための計画的な制度と支援が存在する。

人種差別の歴史的背景

人種差別の歴史的背景には、奴隷制度、植民地主義と人種、公民権運動、そしてアパルトヘイトなど、多岐にわたる要素が含まれている。これらは異なる時代と地域における人種差別の形態であり、現代社会における人種間の不平等と緊張の根底に流れる歴史的な影響を示している。

奴隷制度の歴史

奴隷制度は、特にアメリカの歴史において重要な役割を果たしてきた。16世紀から19世紀にかけて、アフリカから強制的に連れてこられた何百万人ものアフリカ人が、アメリカのプランテーションで労働力として使役された。奴隷制は、人種に基づく階層システムを確立し、白人と黒人の間に深い社会的、経済的格差を生み出した。この制度は1865年の奴隷解放宣言により法的に終了したが、その後も人種差別の構造的な側面は残り続けた。

植民地主義と人種

植民地主義は、ヨーロッパ諸国がアジア、アフリカ、アメリカ大陸などを植民地化し、支配下に置いた歴史的過程である。この過程で、植民地の人々は「文明的」ではないとみなされ、ヨーロッパの「優れた」文化や制度を押し付けられた。このような植民地政策は、人種に基づく優越感と劣等感を助長し、長期にわたる社会的・経済的不平等を生んだ。

公民権運動

20世紀のアメリカで最も重要な社会運動の一つが公民権運動である。1950年代から1960年代にかけて、アフリカ系アメリカ人を中心に多くの市民が人種差別に反対して立ち上がった。この運動は、公共の場における人種隔離の撤廃、投票権の保障、教育や雇用の機会均等など、社会のさまざまな領域での平等を求めた。1964年の公民権法の成立は、この運動の大きな成果の一つである。

アパルトヘイト

アパルトヘイトは、1948年から1994年まで南アフリカ共和国で施行された、人種に基づく厳格な隔離政策である。この制度の下で、白人が国の政治的、経済的権力を握り、非白人は多くの基本的権利から排除された。アパルトヘイトは国際的な非難を受け、長年の抵抗運動の末、1994年にネルソン・マンデラの大統領就任と共に終焉を迎えた。

人種間格差の現状

このような人種差別が生んだ社会的構造は現在も特定の人々の機会を奪っているとも捉えられる。ACLU(アメリカ自由人権協会)のウェブサイトでは、「私たちが知っておくべきこと」としてこのように書かれている。

  • 黒人系の生徒は、黒人系の生徒に比べて3倍も多く停学や退学にされている。
  • 白人系世帯の富裕層の中央値は、黒人系世帯の20倍、ラテン系世帯の18倍である。
  • 黒人系の10人に7人が、警察との対応で白人系よりも公平に扱われていないと回答している。

世界経済フォーラムはウェブサイトにて、ビジネスの場において、有色人種や少数民族出身の専門家は職場で人種的な不公平と不平等に直面し続けており、リーダーシップの発揮も著しく後れを取っている、と述べている。たとえば、アメリカのフォーチュン誌が年1回発行するアメリカの上位500社のリスト「フォーチュン500」の約60年の歴史の中で、黒人系のCEOは15人しかいない。

教育における不平等も深刻な問題である。多くのマイノリティの子どもたちは、資源が限られた学校に通わされ、質の高い教育を受ける機会が制限されている。これにより、学業成績や進学の機会において大きな格差が生じる。特に黒人やラテン系の生徒は、学校のリソース不足や教師の偏見など、さまざまな障害に直面しているという。このような環境では、教育の機会均等が保障されず、将来の職業選択や社会的地位にも影響を及ぼす。

人種的に公正な場を設計するためには、企業や学校が体系的なレベルで人種差別に立ち向かい、組織の構造的・社会的な仕組みから、事業を行うコミュニティや経済全般で果たす役割まで、あらゆることに対処する必要がある。

人種的正義への取り組み

アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)のThe ACLU Racial Justice Programは、歴史的に人種を理由に権利を否定されてきた人々に対し、憲法で保証された権利を維持・拡大することを目的とし、全米の州裁判所および連邦裁判所で社会的影響力のある訴訟を提起している。

また各州のACLU加盟団体、他の公民権団体、地元の支持者と連携し、地方議会や州議会に働きかけ、草の根運動(一般市民の一人ひとりが積極的に政治に参加すること、またはそのような政治形態)を支援している。

加えて、ACLUはこれらの活動を通して、刑事司法、経済司法、教育における不平等に関連する人種問題、アファーマティブ・アクション、アメリカ先住民族の権利など、様々な問題について一般市民の啓蒙と啓発に努めている。

全米教育委員会(National Education Association :NEA)が公開する「Racial Justice in Education Resource Guide(教育における人種的正義リソースガイド)」には、教室で人種について話す場を設けるためのツールや人種的公正への評価方法などが記載されている。

たとえば、人種に関係なく、私たちは誰しも無意識のうちに人種に対する偏見を持っている可能性がある。リソースガイドでは、そのようなバイアス(先入観)や障壁を取り除くために、自分自身の偏見や、特権的であったり無自覚であったりする点を積極的に検証することが求められている。

以下の記述は、リソースガイドに記載された、教育者に向けた確認事項だ。

  • あなたのカリキュラムや教育法、成績評価、学級管理、懲罰のやり方は、ある生徒を優遇し、他の生徒を不利にしていないか?
  • 一部の生徒の学習や成功の妨げになるようなことはないか?
  • あなたの学校や学区におけるさまざまな方針や実践が、人種に及ぼす影響とはどのようなものか?

非営利団体The United Way of the National Capital Area(以下、ユナイテッド・ウェイ)はウェブサイトで、「実例に見る人種的正義の定義について」という項目で、人種的正義のためにどのような行動が重要なのかを説いている。

まず教育現場の事例として、アファーマティブ・アクションに反対する人々は、「人種を明示的に考慮しない『Race-neutral(人種中立的)』な入学者選抜政策を支持することが多い」とある。人種中立的とは「人種にとらわれず、またどの人種にも特別に有利にならない」ことを表す。しかし構造的な不平等が続く中で、このような入学者選抜政策は中立であるとはいえない。この政策は有色人種でない人に不公平な優位性を与えるものとなる。

ユナイテッド・ウェイは、「より公平な社会を実現するためには、人種を含むあらゆる側面から入学者の経歴を考慮することが重要である」と述べている。

次に、職場の事例では、より公平な職場を作るためには、多様性や公平性、包括性を学ぶだけにとどまらず、企業は問題点を洗い出し、黒人系や先住民族、有色人種の従業員に平等な発言権を与え、彼らの声を聞き、問題点はないと考える白人系の従業員への教育を支援する必要がある、と明記されている。

人種やそれを取り巻く問題が職場で正面から取り上げられれば、すべてのメンバーが学び、違いを受け入れ、ともに成長することができるのだ。

【参照サイト】Racial Justice in Education: Key Terms and Definitions | NEA
【参照サイト】Equity vs. Equality and Other Racial Justice Definitions – The Annie E. Casey Foundation
【参照サイト】What is Racial Equity? | Race Forward
【参照サイト】What is Racial Equity? Racial Equity Meaning & Examples | UWNCA
【参照サイト】Slavery in America
【参照サイト】A history of Apartheid in South Africa
【参照サイト】introduction to collective liberation | People & Planet
【参照サイト】Civil Rights Act (1964)
【参照サイト】TOW ARDS COLLECTIVE LIBERATION
【参照サイト】ACLU Racial Justice Program – Catalyst Fellowships
【参照サイト】• WHY RACIAL EQUITY & JUSTICE? • TALKING RACE • TOOLS FOR ASSESSMENT, STRATEGIC PLANNING AND ACTION
【参照サイト】Advancing Racial Equity in the Workplace
【参照サイト】Partnering for Racial Justice in Business | World Economic Forum
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