Browse By

Racial Justice(人種的正義)とは・意味

人種的正義

Racial Justice(人種的正義)とは?

Racial Justice(人種的正義)とは、あらゆる人種の人々、すべての人に公平な機会と結果をもたらすことを表す。人種的なヒエラルキーをなくし、「Collective liberation(集団的解放)」を進めるための社会の将来像と変革ともいわれる。

なお、Collective liberationは、すべての人が自由で安全な、より公正な未来に向けて、連携し、責任をもって集団行動をすることを意味する。この言葉を端的に表すと、「すべての人が自由になるまでは、誰も自由になれない」と言い表せる。

Racial Justiceは特に、アメリカにいるアフリカ系、ラテンアメリカ系、アジア系、ユダヤ系、先住民などが持つ尊厳・資源・力・自己決定を揺るぎないものにするとされる。

Racial equity(人種的公正)との違いは?

Racial Justiceによく似た言葉にRacial equity(人種的公正)がある。Racial Equityは人種間の格差をなくし、すべての人のために結果を改善するプロセスを表す。

非営利団体Race Forwardは、Racial JusticeとRacial Equityの違いについて、こう書いている。

Racial Equityは、Racial Justiceのビジョンに向かうためのプロセスである。Racial EquityにはRacial Justiceのビジョンに向かう中で達成され得る中間目標と成果が求められる。Racial EquityはRacial Justiceに必要だが、それだけでは十分でない。

Racial equityはRacial Justiceの過程にあるものだが、いずれも「Anti-racism(反人種差別)」を超えた考え方だ。Anti-racismは人種差別に反対し、差別の撤廃を目指すことを表す。

Racial JusticeやRacial equityの考え方には差別や不公平がないだけでなく、積極的かつ予防的な手段によって人種間の格差をなくし、維持するための計画的な制度と支援が存在する。

人種間格差の現状

ACLU(アメリカ自由人権協会)のウェブサイトでは、「私たちが知っておくべきこと」としてこのように書かれている。

  • 黒人系の生徒は、黒人系の生徒に比べて3倍も多く停学や退学にされている。
  • 白人系世帯の富裕層の中央値は、黒人系世帯の20倍、ラテン系世帯の18倍である。
  • 黒人系の10人に7人が、警察との対応で白人系よりも公平に扱われていないと回答している。

世界経済フォーラムはウェブサイトにて、ビジネスの場において、有色人種や少数民族出身の専門家は職場で人種的な不公平と不平等に直面し続けており、リーダーシップの発揮も著しく後れを取っている、と述べている。

たとえば、アメリカのフォーチュン誌が年1回発行するアメリカの上位500社のリスト「フォーチュン500」の約60年の歴史の中で、黒人系のCEOは15人しかいない。現在、フォーチュン500のCEOのうち黒人系はわずか1%しかおらず、黒人系従業員はフォーチュン100社の経営陣の約4.7%、1620万人の管理職の約6.7%に過ぎないのが現状だ。

人種的に公正な職場を設計するためには、企業は体系的なレベルで人種差別に立ち向かい、組織の構造的・社会的な仕組みから、事業を行うコミュニティや経済全般で果たす役割まで、あらゆることに対処する必要がある。

Racial Justiceへの取り組み

アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties Union:ACLU)のThe ACLU Racial Justice Programは、歴史的に人種を理由に権利を否定されてきた人々に対し、憲法で保証された権利を維持・拡大することを目的とし、全米の州裁判所および連邦裁判所で社会的影響力のある訴訟を提起している。

また各州のACLU加盟団体、他の公民権団体、地元の支持者と連携し、地方議会や州議会に働きかけ、草の根運動(一般市民の一人ひとりが積極的に政治に参加すること、またはそのような政治形態)を支援している。

加えて、ACLUはこれらの活動を通して、刑事司法、経済司法、教育における不平等に関連する人種問題、アファーマティブ・アクション、アメリカ先住民族の権利など、様々な問題について一般市民の啓蒙と啓発に努めている。

全米教育委員会(National Education Association :NEA)が公開する「Racial Justice in Education Resource Guide(教育におけるRacial Justiceリソースガイド)」には、教室で人種について話す場を設けるためのツールやRacial equityへの評価方法などが記載されている。

たとえば、人種に関係なく、私たちは誰しも無意識のうちに人種に対する偏見を持っている可能性がある。リソースガイドでは、そのようなバイアス(先入観)や障壁を取り除くために、自分自身の偏見や、特権的であったり無自覚であったりする点を積極的に検証することが求められている。

以下の記述は、リソースガイドに記載された、教育者に向けた確認事項だ。

  • あなたのカリキュラムや教育法、成績評価、学級管理、懲罰のやり方は、ある生徒を優遇し、他の生徒を不利にしていないか?
  • 一部の生徒の学習や成功の妨げになるようなことはないか?
  • あなたの学校や学区におけるさまざまな方針や実践が、人種に及ぼす影響とはどのようなものか?

非営利団体The United Way of the National Capital Area(以下、ユナイテッド・ウェイ)はウェブサイトで、「実例に見るRacial Justiceの定義について」という項目で、Racial Justiceのためにどのような行動が重要なのかを説いている。

まず教育現場の事例として、アファーマティブ・アクションに反対する人々は、人種を明示的に考慮しない「Race-neutral(人種中立的)」な入学者選抜政策を支持することが多い、とある。

Race-neutralとは「人種にとらわれず、またどの人種にも特別に有利にならない」ことを表す。しかし構造的な不平等が続く中で、このような入学者選抜政策は中立であるとはいえない。この政策は有色人種でない人に不公平な優位性を与えるものとなる。

ユナイテッド・ウェイは、より公平な社会を実現するためには、人種を含むあらゆる側面から入学者の経歴を考慮することが重要である、と述べている。

次に、職場の事例では、より公平な職場を作るためには、多様性や公平性、包括性を学ぶだけにとどまらず、企業は問題点を洗い出し、黒人系や先住民族、有色人種の従業員に平等な発言権を与え、彼らの声を聞くことができるようにし、問題点はないと考える白人系の従業員への教育を支援する必要がある、とある。

人種やそれを取り巻く問題が職場で正面から取り上げられれば、どんなに居心地が悪くても、すべての社員が学び、違いを受け入れ、成長することができる、とユナイテッド・ウェイは主張する。

行動を起こそう

人種的な格差の問題は一夜にして解決するものではない。しかし、私たちがコミュニティとして団結し、その問題に正面から向き合ったとき、コミュニティのすべてのメンバーにとってより公平な未来を創造することができるのではないかと考える。

誰一人として無視されることがなければ、すべての人が成長することができる。

まずは現状の課題を知ることから始めよう。コミュニティ全体にRace equityの専門家を生み出すインフラを構築するためにも、組織力の一端を担おう。公平な団体に参加し、公平性を重視する組織でボランティア活動を行い、人種的不平等について声を上げて公平性を支持しよう。そして、Racial Justiceについて学び続けよう。

【参照サイト】Racial Justice in Education: Key Terms and Definitions | NEA
【参照サイト】Equity vs. Equality and Other Racial Justice Definitions – The Annie E. Casey Foundation
【参照サイト】What is Racial Equity? | Race Forward
【参照サイト】What is Racial Equity? Racial Equity Meaning & Examples | UWNCA
【参照サイト】introduction to collective liberation | People & Planet
【参照サイト】Disrupting Global Health: From Allyship To Collective Liberation
【参照サイト】TOW ARDS COLLECTIVE LIBERATION
【参照サイト】ACLU Racial Justice Program – Catalyst Fellowships
【参照サイト】• WHY RACIAL EQUITY & JUSTICE? • TALKING RACE • TOOLS FOR ASSESSMENT, STRATEGIC PLANNING AND ACTION
【参照サイト】Advancing Racial Equity in the Workplace
【参照サイト】Partnering for Racial Justice in Business | World Economic Forum




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter