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グリーニアムとは・意味

グリーニアム

グリーニアムとは?

グリーニアム(Greenium)とは、グリーンボンド(環境債)が同じ発行条件の普通債に比べて、価格は高く利回りは低くなる現象のこと。「グリーン」と「プレミアム」を合わせた造語であり、環境問題への関心の高まりとともに注目されている。

グリーンボンドはESG投資の一種で、地球温暖化対策をはじめとする環境関連事業の資金調達源として発行される債権だ。近年環境問題への関心の高まりからヨーロッパを中心に発行数が増えており、投資家たちの投資意欲も高まっている。

グリーニアム現象は、投資家たちが普通債よりもグリーンボンドの将来的価値が高いと判断し、低い利回りを許容することで起きる。併せて、世界各国の中央銀行がグリーン投資を優遇していることも原因となっている。

ヨーロッパにおけるグリーンボンド市場とグリーニアム

ヨーロッパにおけるグリーンボンド市場では、グリーニアム現象が顕著に観察されている。例えば、2020年9月にドイツ政府が発行した65億ユーロのグリーンボンドには、約200の投資家から総額330億ユーロの応募が集まり、同条件の通常のドイツ国債よりも利回りが0.01%低く設定された。さらに、2021年にはこの差が0.05%に拡大している。

一方、欧州証券市場監督局(ESMA)が2023年10月に発表した調査結果によれば、サステナブルボンド全体において統計的に有意なグリーニアム効果は確認されなかった。しかし、過去にESG債を発行した実績のある発行体については、投資家からの信頼が高まり、グリーニアムが発生する可能性が示唆されている。

また、欧州委員会は2021年10月に発行したグリーンボンドで、募集額の11倍を超える需要を集め、利回りが同条件の債券よりも0.025%低く設定されたと報告している。このように、ヨーロッパではグリーンボンドに対する高い需要が続いており、グリーニアム現象が市場で一定の影響を持っていることが示されている。

日本におけるグリーンボンドの発行

日本におけるグリーンボンドの発行は、近年着実に増加している。環境省のデータによれば、2020年には年間発行総額が1兆円を突破し、その後も増加傾向が続いている。2024年には、国内企業等によるグリーンボンドの発行総額が約1.7兆円に達した。

特に、再生可能エネルギーや環境関連事業への投資意欲が高まっており、企業や自治体が積極的にグリーンボンドを活用している。例えば、東京都や横浜市などの自治体がグリーンボンドを発行し、環境施策の推進に充てている。

2024年7月25日に日経ESGが発表した調査によれば、プライム市場上場企業353社のうち約3割がグリーニアムを実感していることが明らかになった。これは、企業がグリーンボンドを発行する際に、投資家からの高い需要により調達コストの低減を実感していることを示している。

しかし、欧米と比較すると市場規模はまだ小さく、さらなる普及と投資家層の拡大が求められている。日本政府は、グリーンボンドの発行促進に向けたガイドラインの策定や、税制上の優遇措置などを検討しており、市場の拡大に向けた取り組みを進めている。

グリーニアムのメリットと問題点

グリーニアムは、利回りが低い分、国や企業にとってはコストを抑えながら資金を調達できる有利な手段であり、サステナブル事業の拡大や環境対策の加速に寄与する。

一方で、投資家にとっては利回りの低さが運用成績の悪化リスクを生み出し、ESG投資への意義を理解しているとしても、低い利回りをどこまで許容できるかは不透明だ。また、ESG投資が広がる中、低コストで資金を調達しても、その資金が本当に環境対策に適切に使われているかどうかには疑念が残る場合もある。特に「グリーンウォッシュ」の問題が顕在化しており、表面的には環境への貢献を謳いながら、実際には中身が伴わない事例も見られる。

投資家が投資先企業の環境への貢献度を適切に判断することは容易ではなく、実際には環境問題解決につながっていないグリーンボンドが存在している可能性も否定できない。

各国がESGの情報開示規則を導入

グリーンボンドへの投資活動が活発化する一方で、実質的な環境効果を伴わない事業が増加すれば、ESG投資の信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、各国はESG情報の開示に関する規則を強化し、透明性と信頼性の向上に努めている。

ヨーロッパでは、2021年3月に「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」を施行し、資産運用会社に対して投資先のESG情報の開示を義務付けた。さらに、2023年1月からは「コーポレートサステナビリティ報告指令(CSRD)」が適用され、企業に対するESG情報開示の要件が一層厳格化されている。

アメリカでは、証券取引委員会(SEC)が2022年3月に気候関連情報の開示を義務付ける新たな規則案を発表し、企業に対して温室効果ガス排出量や気候変動リスクに関する情報の開示を求めている。この規則は2023年以降に段階的に施行される予定である。

日本においても、金融庁が2022年5月に「ESG投信を取り扱う資産運用会社への期待」を公表し、ESG投資信託の情報開示に関する監督指針の改正を行った。これにより、運用会社はESGに関する情報をより詳細かつ透明性高く開示することが求められている。

これらの取り組みにより、各国はESG投資の質を向上させ、持続可能な経済成長を促進することを目指している。

グリーニアム現象とESGの今後

ESG情報開示規則の導入が進むことで、投資家は投資先企業の持続可能性や環境改善効果をより慎重に評価するようになった。これにより、グリーンボンド発行時の需要が「ラベル」に依存する傾向は薄れ、実質的な環境への貢献や透明性が重視されるようになった。一部ではグリーニアム現象が縮小しているとの指摘もあり、企業には調達資金の適切な活用や成果の明確な報告が求められている。

同時に、投資家も短期的利益に偏らず、長期的視点で企業の取り組みを適切に評価・監視することが重要だ。第三者認証や独立したレビューも不可欠であり、これによりグリーンウォッシュのリスクを回避し、投資家の信頼を維持できる。ESG投資はもはや一時的なトレンドではなく、持続可能な未来を築く新たな経済のスタンダードであり、企業、投資家、政策立案者が一体となり、その信頼性と実効性を高める努力が不可欠である。

【参照サイト】グリーンファイナンス市場の動向について|環境省
【参照サイト】グリーンボンドを使い低コストで資金調達、「グリーニアム」が拡大|日経ビジネス
【参照サイト】サステナブル債に陰り、「グリーニアム」縮小|THE WALL STREET JOURNAL
【参照サイト】ESG投資の実態は “グリーンウォッシュ”にメス【経済コラム】|NHK
【参照サイト】2024年上期のグリーンボンド発行額が過去最高を記録
【参照サイト】「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2024年版」、「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ローンガイドライン2024年版」の公表について
【参照サイト】国内におけるグリーンボンドの発行・投資への期待|環境省
【参照サイト】ESG Roundup: Market Talk




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