グリーニアムとは・意味
グリーニアムとは?
グリーニアム(Greenium)とは、グリーンボンド(環境債)が同じ発行条件の普通債に比べて、価格は高く利回りは低くなる現象のこと。「グリーン」と「プレミアム」を合わせた造語である。
グリーンボンドはESG投資の一種で、地球温暖化対策をはじめとする環境関連事業の資金調達源として発行される債権だ。近年環境問題への関心の高まりからヨーロッパを中心に発行数が増えており、投資家たちの投資意欲も高まっている。
グリーニアム現象は、投資家たちが普通債よりもグリーンボンドの将来的価値が高いと判断し、低い利回りを許容することで起きる。併せて、世界各国の中央銀行がグリーン投資を優遇していることも原因となっている。
ヨーロッパのグリーニアム
グリーンボンドの発行が進むヨーロッパでは、グリーニアム現象が顕著に現れている。
ドイツでは、2020年9月にドイツ政府が65億ユーロ分のグリーンボンドを発行。これに対し200近い投資家から5倍以上の330億ユーロの応募が集まり、グリーンボンドの利回りが同条件のドイツ国債よりも0.01%低くなったという。2021年にはこの差が0.05%に広がっている。
またイギリスの非政府組織、気候債権イニシアチブ(CBI)が発表したレポートによると、2020年下半期に発行された33のグリーンボンドのうち、19でグリーニアム現象が確認されたという。
日本国内のグリーニアム
対して日本では金利水準が低く、国債利回りに対するスプレッドも小さいため、一般的にはグリーニアムはほとんど観測されていないと考えられている。
しかし日本でも環境投資に注目が集まっていることから、グリーニアムの兆候が見られる事例もあるという。
例えばJA三井リースが2021年3月に利率0.16%で発行した100億円分のグリーンボンドは、前年8月に発行した普通債の利率0.19%に比べ、0.03%低くなっている。また、SMFGが発行するグリーンボンドでもグリーニアムの兆候が見られたという。
グリーニアムのメリットと問題点
利回りが低いグリーンボンドはコストを抑えながら資金調達ができるため、サステナブル事業に取り組む国や企業にとっては有益だ。
しかし投資家にとっては運用成績が悪化するリスクがあり、環境投資に価値を見出しているとはいえ、低い金利を投資家がどこまで許容できるかは不透明だ。
またESG投資が活発化するなか、低コストで資金調達を行っても実際にはそれほど環境対策に積極的でない企業も存在しており、一部では環境への貢献を謳いながら中身が伴っていない「グリーンウォッシュ」が懸念されるケースもある。
投資家が投資先企業の環境への貢献度を適切に判断することは容易ではなく、実際には環境問題解決につながっていないグリーンボンドが存在している可能性も否定できない。
各国がESGの情報開示規則を導入
グリーンボンドに人気が集まり積極的な投資活動が行われたとしても、中身が伴わない環境事業が増えればESG投資の今後にいい影響を与えない。そこで世界各国が、環境事業の情報開示について新たな基準づくりに取り組んでいる。
ヨーロッパでは2021年3月に資産運用会社に対して、投資先のESG情報を開示するよう求める開示規則(SFDR)を適用し始めた。またアメリカでは、ESGの情報開示を強化する統一基準を導入するとしている。
日本でも、2022年度末までに運用会社の情報開示などについて監督指針をまとめることを目指すという。
グリーニアム現象とESGの今後
こうした情報開示規則の導入が進んでいることで、投資先企業が実施する事業の持続可能性をより慎重に評価する投資家も増えているという。これにより、一部ではグリーニアム現象が縮小傾向にあるとの見方もある。
今後、ESG投資の健全な成長と環境への貢献を促すため、グリーンボンドを発行する企業は資金調達に見合った成果を出せるよう、より真摯に環境事業に取り組んでいかなくてはならない。
また投資家側も企業のサステナブル事業を適切に評価、バックアップしながら双方の活動がともに地球環境にプラスの影響を与えるよう努めることが重要だろう。
【参照サイト】グリーンファイナンス市場の動向について|環境省
【参照サイト】グリーンボンドを使い低コストで資金調達、「グリーニアム」が拡大|日経ビジネス
【参照サイト】サステナブル債に陰り、「グリーニアム」縮小|THE WALL STREET JOURNAL
【参照サイト】ESG投資の実態は “グリーンウォッシュ”にメス【経済コラム】|NHK
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- SASB
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