マミートラックとは？

マミートラックとは、出産した女性が職場に復帰した際に、簡単な業務ばかり割り振られ、自分の意思とは関係なく昇進や昇給などの出世コースから外れてしまうことを指す。

マミートラックの由来

マミー（母）とトラック（競技用トラック）からなる「マミートラック」という言葉が誕生したのは1988年のアメリカ。当時は大半の企業では育児をしながら働く環境が整っていなかった。そこで、企業が、キャリアを優先する人と、キャリアと家庭の両立を実現させたい人を把握し、後者には母親への支援策を用意することで解決しようとした。これがマミートラックの語源である。つまり、元々はポジティブに使用されていたのである。

ただ、現代では「一度そのコースを走ってしまうと、昇進とはほど遠いコースを延々と走らされる」というネガティブな意味合いを持つようになった。

マミートラックの問題

マミートラックが問題視されるのは以下のような点である。

本人のモチベーションの低下

育児のため急に休みが必要になったり、転勤や残業も難しくなったりするため、企業は単調な仕事しか与えない傾向にある。そうなると、業務への関心や意欲がうすれ、モチベーションが低下してしまう人もいるだろう。

キャリア形成が難しくなる

産休・育休を経て職場に復帰した際に、上記のような単調な仕事しか与えられないと、社内でのレベルアップが難しくなる。本人は育児と両立し昇進や昇給を望んでいるかもしれないにもかかわらず、マミートラックのせいでキャリアアップが妨げられることは大きな問題である。

実際に21世紀職業財団が2022年にまとめた「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究」（※1）では、1,421人の女性のうち46.6％が、「仕事の難易度や責任の度合いが低く、キャリアの展望もない」と答えており、マミートラックの問題に直面していることが分かる。

マミートラックの対策

企業はこういったマミートラックの問題について、どう従業員と向き合い、対策していくべきか。以下で企業の対策案をいくつか紹介する。

1on1ミーティングなどで社員の意思を確認する

マミートラックは決してすべての女性に対して問題なわけではない。子どもの出産を経て、家庭と仕事の両立を重視し落ち着いて働きたい人もいれば、出産前と変わらずに第一線で活躍したいという人もいるだろう。こういった社員ひとりひとりの意思やライフプランと企業の思い込みのミスマッチがマミートラックの問題を生んでしまう。企業が女性の職場復帰後に、意思をきちんと確認、理解する機会を提供することが求められる。

勤務時間の見直し

育児中は保育園のお迎えや子どもの急な体調不良など、フルタイムで働くことや残業をすることが難しくなる。3歳未満の子どもを育てる従業員には、1日6時間の時短制度を使えることが法律で定められてはいるが、小さい子どもだけでなく3歳以上の子どもを育てる環境や育児のイレギュラーに対応できる勤務時間の見直しも各企業に求められる。

リモートワークの導入

上記の勤務時間と付随して、勤務場所の見直しも必要である。新型コロナウイルスの影響でリモートワークが急速にひろまった。リモートワークでは育児や家事の合間に仕事ができ、自由な働き方ができるため、新型コロナウイルスが終息したとしても制度の継続が求められるだろう。

育休制度の推進と充実

先程の勤務時間の点でも述べたように、法律で定められた以上の育休制度や復帰後のサポート制度は企業によってさまざまである。育休制度を充実させることで、従業員により働きやすい環境を提供し、モチベーションを持ちながら働いてもらうことができる。また制度を利用しやすい環境も非常に重要である。そのため、企業全体で育休制度や育児サポート制度を理解する文化を創ることも大切だ。

その他にも、企業で企業内託児所を設けたり、会社からの補助金を提供したりとできることは多様にあるだろう。

働き方も多様化する現代においては、家庭と仕事の二者択一ではなく、どちらも追い求める生き方があっても良いはずだ。2022年世界経済フォーラムより発表されたジェンダーギャップ指数（※2）で、日本は146カ国中116位、主要7カ国（G7）で最下位であった。そして経済分野では、121位である。背景にはもちろん、さまざまな問題があるが、マミートラック問題もいち要因のひとつだろう。

マミートラックから解き放たれ、女性も自由な働き方を追い求められるように、企業の努力と私たち一人一人の理解が求められているのではないだろうか。

※1 子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究（21世紀職業財団）
※2 ジェンダーギャップ指数（世界経済フォーラム）

用語の一覧