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炭素税とは・意味

carbon tax

炭素税とは?

炭素税とは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の使用に対し、炭素の含有量に応じて課される税金のこと。私たちの生活や事業活動で生じる環境負荷に課税を行う「環境税」の一種である。また、炭素に価格づけを行うことでCO2の排出を抑制する取り組みを指す「カーボンプライシング」の手法の一つだ。

地球温暖化の影響による気候危機は年々深刻化しており、このまま地球温暖化が進めば、2100年には平均気温が約5.8度上昇するともいわれている。こうした問題への対策として、炭素税は化石燃料を使用した製品の製造や化石燃料そのものの使用価格を上げることで、CO2排出量を抑えることを目的としている。

炭素税は1990年にフィンランドが初めて導入したことでヨーロッパを中心に広まり、欧州諸国では一定のCO2削減効果がでている。

一方、日本では2021年ごろから導入に向けた議論が活発化している。日本が2012年に導入した環境税のひとつ「地球温暖化対策税」は、税率が欧州諸国の10分の1程度と低いため、追加対策として炭素税の導入が必要だといわれている。

炭素税のメリット・効果

2015年に採択されたパリ協定に基づき、世界各国は独自に温室効果ガスの削減目標を定め、取り組みを行っている。炭素税はその対策のひとつで、導入することで以下のようなメリットや効果が期待できる。

環境対策の意識づけになる

炭素税を導入すると、温室効果ガス排出が少ない製品は価格は安く、多い製品は高くなる。こうした価格の違いが製品のCO2排出を可視化し、企業や消費者へ地球温暖化対策の意識づけや行動変容を促すきっかけとなる。

企業の省エネ促進効果

炭素税導入により企業は製造機械の見直しや、節電・エネルギー使用のコスト削減に努めるようになる。また化石燃料を使わない製造方法や素材への転換などが進み、より地球環境に配慮した操業への移行を促せる。

家庭の省エネ促進効果

家庭では、消費者がよりエネルギー効率の良い家電や車を利用するようになったり、電気・エネルギー使用の節約に努めたりする効果が期待できる。それに伴い、省エネ製品もより普及する可能性がある。

社会問題対策の財源増

炭素税はあくまで温室効果ガスの削減を目的としており、税収は二次的なものに過ぎないが、それらは新たな社会課題解決の予算として利用できる。例えば再生可能エネルギーなどの技術開発への投資、さらなる温暖化対策への活用、福祉対策・社会保障の予算に充てるなどだ。ただし、税収の利用用途は、使い道の公平性を確保し、既得権益化を防ぎながら決めなければならない。

海外における炭素税の動向

海外では、炭素税またはCO2税という名目で導入が進んでいる。各国の導入状況は様々だが、いち早く導入した北欧諸国では一定の成果が出ている。ここでは、いくつかの国の事例を紹介しよう。

フィンランド(1990年:炭素税導入)

フィンランドでは、暖房用燃料と輸送用燃料消費に対して課税される。税収は2016年時点で約1702億円で、1990〜2015年までの25年間で22%のCO2削減に成功している。

スェーデン(1991年:CO2税導入)

フィンランドと同じく、暖房用と輸送用燃料の消費に対して課税。税率は2017年時点で1トンあたり一律119EURで、世界的にも最高水準である。

デンマーク(1992年:CO2税導入)

化石燃料と廃棄物に課税を行うCO2税を導入しているデンマークは、欧州の中でも顕著な成果を出しており、1990年〜2015年までの25年間でCO2排出量は37%減少した。

スイス(2008年:CO2税導入)

スイスは、輸送用燃料以外の部門に対して炭素税を導入している。2014年以降は、過年度の排出実績をもとに税率を算定している。

カナダBC州(2008年:炭素税導入)

カナダ・バンクーバー州は、2008年に北米で初めて炭素税を導入した。化石燃料の購入、州内での最終消費に対して課税を行っている。

フランス(2014年:炭素税導入)

フランスの炭素税は化石燃料の消費に対して課税を行っており、2015年の「エネルギー移行法」で2030年までに税率を引き上げると発表している。またバイオ燃料には軽減措置、ジェット燃料、ブタン、プロパンには免税を行っている。

日本で検討されている炭素税

対して、現在日本で導入されているのは税率の低い「地球温暖化対策税」のみで、本格的な炭素税の導入は検討段階である。現在のところ日本政府は下記のように課税段階を分けて、どれか一つ、またはその組み合わせで課税することを検討している。

上流課税:化石燃料採掘・輸入時点での課税
中流課税:化石燃料製品や電気の製造拠点から出荷する時点での課税
下流課税:化石燃料製品を工場・オフィス・家庭などへ供給する時点で課税
最下流課税:最終製品・サービスが最終消費者に供給される時点で課税

炭素税の課題

温室効果ガス削減に向け各国で導入が進む炭素税だが、実施にあたっての課題もある。まず、炭素税の導入で確実に温室効果ガスの削減が保証される訳ではない点に留意が必要だ。

また炭素税を導入することでコスト・経営面での負担が増し、企業の成長を妨げたり、国際競争力を低下させたりする可能性がある。加えて、低所得者の負担が増えることで消費や経済全体に悪影響を与える可能性も考えられる。

このため、炭素税は導入する際に消費者や企業の税負担増加による経済の停滞を防止する対策を併せて実施することが必要だ。実際に海外では、CO2削減努力を行なった企業の税負担を軽減する政策などが導入されている。

炭素税を地球温暖化対策として有効に機能させるには、温室効果ガスの削減効果と企業や家計への負担とのバランスを注視し、政策を適宜見直しながら柔軟に適応させていくことが大切だ。

【参考サイト】炭素税について|環境省
【参考サイト】諸外国における炭素税等の導入状況|環境省
【参考サイト】炭素税・国境調整措置を巡る最近の動向|環境省
【参考サイト】温暖化防止のための環境税 「炭素税」とは|「環境・持統社会」研究セン夕一(JACSES)
【参考サイト】炭素税とは?メリットやデメリット、日本での現状について簡単に解説|グリラボ




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