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カーボンオフセットとは・意味

カーボンオフセットとは・意味

カーボンオフセットとは、日常の経済活動において排出されるCO2の削減に取り組み、それでもなお削減しきれないCO2について別の場所で削減・吸収に取り組んだり、それらの活動に投資したりと違った方法で埋め合わせる考え方のこと。

カーボンオフセットの取り組みには、再生可能エネルギーの開発・使用などでCO2の排出量そのものを削減する「排出削減系」の活動と、植林活動や森林保護を通して大気中のCO2の吸収を促す「森林吸収系」の活動がある。そして、活動によって削減・吸収できたCO2の量をルールに従って数値化し市場で取引できる形にした「クレジット」を売買する方法が一般的である。

日本国内での代表的なカーボンオフセット認証制度にはJ-クレジット制度がある。J-クレジット制度は、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証するもので、2020年10月までに822のプロジェクトが登録され、595t-CO2(※t-CO2とは、温室効果ガスの排出量を表す単位)のCO2削減が認証されている。

企業によるカーボンオフセットの取り組み

カーボンオフセットに取り組む国内企業の例を紹介する。

日本航空株式会社(以下、JAL)

JALグループでは、機材の省燃費化やバイオジェット燃料の開発促進とその活用などによるCO2の排出量削減を行っているほか、航空便の利用者も個人単位でCO2をオフセットすることができる仕組みを提供している。具体的には、国が認証を行う熊本県小国町の間伐推進プロジェクトとインドネシアのリンバラヤ生物多様性保護区における森林破壊防止プロジェクトが選択肢として提示されており、希望者はいずれかを選んでCO2をオフセットすることができる。

佐川急便

短距離運送の際には電動アシスト自転車の使用、長距離輸送の場合はトラックの代わりに列車や船による運送を活用するモーダルシフトを推進することでCO2の排出量削減に取り組んでいる。また、2017年には車両を使用しない集配と森林保全活動により創出されたクレジットを組み合わせた「カーボンニュートラル宅配便」の取組みが評価され、第7回 カーボン・オフセット大賞」環境大臣賞を受賞した。

キヤノン

キヤノンでは2016年から、複合機(マルチプリンター)のカーボンオフセットにおいて、製品購入者のCO2削減に貢献できる仕組みを導入している。2020年8月にはキヤノン製の複合機を導入した事業所が所在する自治体が販売するオフセットクレジットを活用したカーボンオフセットの導入を、業界初の取り組みとして開始した。

個人でできるカーボンオフセットの取り組み

カーボンオフセットは、自治体や企業だけが取り組むべき活動ではない。個人単位でも普段の生活から自動車ではなく自転車や徒歩で移動したり、冷暖房機器の使用を控えたりすることでCO2の排出量削減に取り組むことができる。その上でやむなく排出されてしまうCO2に対しては、例えば下記に紹介する「Wren」のようなサービスを利用して相殺することができる。

Project Wren」は、個人のCO2排出量を計算してその量に応じたオフセットができる投資プロジェクトだ。まずWrenのサイト上でいくつかの質問に答えて、自分が日常生活で排出しているCO2の量を計算する。その後、排出量に合わせてどの程度オフセットするかを選択すると、投資する選択肢として世界中の植林や森林保護の活動からいくつかのおすすめを表示してくれる。Wrenは日本円も含む様々な通貨に対応しており、世界各国様々な場所からカーボンオフセットに参加することが可能だ。

カーボンオフセットの問題点と課題

カーボンオフセットの問題点の一つに、投資する企業や個人が実際にCO2を削減するアクションをとらずとも環境貢献していると認められてしまうのではないかという懸念がある。カーボンオフセットの考え方の根底には、自らがCO2排出量削減のための努力を最大限行った上でどうしても排出を防ぐことができない分を埋め合わせるという前提があるが、オフセットの制度を利用すると出資するだけでCO2削減に間接的に関与できるため、CO2削減に向けたこれ以上の努力を妨げる恐れがある。カーボンオフセットを通じて排出量を相殺するからという理由で日常の小さな工夫を怠るのではなく、地球全体のCO2排出量削減に向けて個人でできる取り組みを着実に継続していくことが最も重要である。

またその他の課題として、一つのクレジットが異なる複数の排出活動に利用されてしまう「ダブルカウント」を防ぐ方法や、投資されたプロジェクトを持続していく方法についても議論されている。カーボンオフセットの考え方はCO2削減に向けた手段の一つであり解決策ではないこと、投資するだけではなく自らが具体的なアクションをとり、持続的に行動することが求められている。

さらに、2020年10月26日に開催された臨時国会において菅総理は、2050年までにCO2排出をゼロとする脱炭素社会の実現を目指すことを表明した。今後は、企業や個人の単位ではなく国を挙げて世界全体でCO2排出量の削減に取り組んでいくことになる。

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【参照記事】キヤノンのカーボン・オフセット
【参照記事】環境省 カーボン・オフセット

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