Woke Capitalismとは

2024年4月
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Woke Capitalismとは？

企業が進歩的な理念を支持し、社会における影響力を示すための方法のひとつのこと。従来、企業は株主至上型で利益を追求してきたが、Woke Capitalismでは従業員やユーザーなどの声に耳を傾け、社会正義のために行動を起こすことが優先される。社会正義とは、気候変動、銃規制、人種差別、LGBTQ＋を含めたジェンダー平等、性暴力の廃絶などの課題解決が挙げられる。

ステークホルダー資本主義とも共通するところがあるが、Woke Capitalismは、2015年にコラムニストのRoss Douthatが『The New York Times』に寄稿した際に生み出したとされている。日本語では「社会正義に目覚めた資本主義」などと訳される。

「Woke」とは

「Woke」とは、英語「Wake」の過去形で、直訳すると「目が覚めた、覚醒した」などの意味になる。元々は黒人コミュニティから発生したスラングだが、2014年に起きた黒人容疑者を白人警察官が射殺したファーガソン事件をきっかけに、Black Lives Matter運動の拡がりと共にSNSなどで拡散されていった。

人種やジェンダー問題をはじめとした様々な社会課題に強い関心を持ち、それに対し理解を示し、行動を起こす人のことを表す。リベラルな思考を持つ人が多いとされるミレニアル世代を中心に支持されている。

Woke Capitalismへの賛否

Woke Capitalismを推進する企業は、ITやメディア、金融、エンターテイメントといった業界などに多い。こうした業界はユーザーのみならず、自社が抱えている若いエリート層の従業員達の意思を尊重する必要があるからだ。しかし、保守派の支持層などはこうした動きを良く思わず、批判や反発の声も上がっている。

以下に、Woke Capitalismで取り上げられることが多いカテゴリの例を紹介する。

人種差別

Nikeは自社の「Just Do It.」の30周年記念キャンペーンに元NFLのスター選手、49ersのColin Kaepernick氏を起用したことで、大きな話題を呼んだ。

彼は2016年にアフリカ系アメリカ人に対する白人警察官の横暴な態度に抗議し、試合前の国家斉唱の際に起立を拒否しひざまずいた。この行動は世論を二分し、当時のトランプ大統領は「国歌を侮辱した」として彼の解雇を要求した。

その後、49ersの契約が終了して以来、彼はNFLでプレーをすることはなかったが、Nikeは敢えて彼を通じてメッセージを発信することを決断した。このキャンペーンはSNSを中心に瞬く間に世の中に広がり、一方で反対派がNikeのシューズを焼く動画などを投稿するなど批判もあったが、最終的にはNikeはこのキャンペーンで大きな成功を収めている。

ジェンダー平等

2022年3月、フロリダ州で共和党が提案する通称「Don’t say gay」の法案が可決された。この法案は、州内の公立小学校で3年生までは性自認や性的志向に関する議論を規制するもので、これに対し、フロリダ州内での最大の雇用を生み出しているディズニーは、従業員達の声に後押しされ反対を表明。それに対してフロリダ州知事のRon DeSantis氏が猛反発し、長年ディズニーに対し与えられていた特別税や自治権を撤廃する方向で検討するとした。いまだ、リベラルと保守の間で火種を生んでいるトピックである。

人工中絶

2022年6月、米連邦裁判所が、憲法によって中絶の権利を守るという、1973年の「ロー対ウェイド」事件の判決を覆す判断を下し、アメリカ国内を二分する論争を巻き起こした。そうしたなか、シティグループやJPモルガンなどの大手金融をはじめ、スターバックスやテスラ、ネットフリックスやマイクロソフト、リーバイスなど、アメリカを代表する企業は、やむを得なく他の州で中絶を受けなければならない従業員に対し、その旅費を負担すると表明した。

一方で、テキサス州やフロリダ州では共和党が反発し、中絶に関する旅費の精算を禁止する法案を出すなど、こちらも相容れない様相を呈している。

まとめ

ダイバーシティ（多様性）が求められ、気候変動など地球が抱える様々な問題が存在する現代において、自己の利益だけでなく、社会や関わる人々が幸せを共有できる世の中を作っていくことは理想的だ。しかし、見せかけの社会正義を掲げ“Woke Washing”と揶揄されるようなことも事実として存在するほか、変化を好まない保守派の支持層も一定数必ず存在するだろう。そうした自分とは異なる意見にも耳を傾け、共存していくことも必要だ。

まずは世の中に関心を持ち、事実をきちんと知ることが重要だ。そうした学びによって、流されることなく自身の意見を持ち、何が正しいかを判断する力を養いたい。