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コンヴィヴィアリティとは・意味

コンヴィヴィアリティとは?

コンヴィヴィアリティとは、個の自律を重視しながらも、人々が互いに支え合い、共に成長する社会の在り方を指す概念。日本語では「自立共生」、「自律共働」などと訳す。人々が自由に創造的に協力し合い、技術や制度が人間の生活を制限せずに支えることを目指すものだ。

1970年代にコンヴィヴィアリティを提唱したのは、イヴァン・イリイチというオーストリア・ウィーン生まれの哲学者だ。彼は、技術と制度が人間の自由と創造性を抑圧することを批判し、代わりに人々が自発的に協力し、共に成長する社会を提唱した。イリイチの著作『コンヴィヴィアリティのための道具』は、この概念の基礎を築いた。彼の思想は、現代社会における持続可能な発展やコミュニティの再生において重要な視点を提供している。

「コンヴィヴィアリティ」という言葉は、ラテン語の「convivium」に由来し、「共に生きる」「共に祝う」といった意味を持つ。これは、共同体の中での連帯感や協力を強調するものであり、個人と社会の健全な関係を象徴する。そこから派生した英語の「conviviality」は、イリイチが著書の中で強調する意味以外にも、辞書的な意味として「友好的で賑やかな雰囲気」「個人とコミュニティが共に成長し、支え合う環境を作り出すこと」などを意味する。この概念は、助け合いと共同の喜びを大切にする社会の中で広く使用される。

コンヴィヴィアリティにおける2つの分水嶺

コンヴィヴィアリティの概念は、教育や医療、テクノロジーなど、さまざまな分野と関連づけて議論されている。イリイチは、各分野の「発展度合い」に焦点を当てて批判的な思考を展開した。

そこで指標となるのが、“2つの分水嶺”だ。モノやサービスが発展する中で、2種類の境界線を超えるかどうかがカギとなる。医療を例にとると、かつて死亡率が高く不治の病とされた病気は、医療の進歩によって予防・治療が可能なものとなった。これは医療が「第一の分水嶺」を越えることで社会に利益をもたらし、人間の能力を引き出している状態と言える。

しかしその発展が進みすぎると、人々やコミュニティがケガや出産に対処する知識や能力を失い、あらゆる場面で医療サービスに依存するようになる。また医療は高額なサービスとなり、経済的に優位な人は健康になり、経済的に困難を抱える人はよい医療を受けることが難しい状態に至る。これらは医療が「第二の分水嶺」を越えてしまった状態であり、人間の能力が奪われ、むしろ不利益を被る状態となっているのだ。

イリイチは、第一の分水嶺を越えるモノやサービスはコンヴィヴィアリティが存在する(コンヴィヴィアルな)状態であると位置付け、物事の発展が第二の分水嶺を越えないよう警鐘を鳴らした。

カギとなる「自立と共生」「社会的相互依存」

コンヴィヴィアリティを語る上で重要な概念となるのが、「自立と共生」そして「社会的相互依存」だ。

自立とは、個人が自らの意思で行動し、自分の生活を自己管理する能力を指す。共生は、個人やコミュニティが互いに支え合い、共に生活することを意味する。コンヴィヴィアリティにおいて、自立と共生は不可分の関係にあり、個々の自律が集団の中での共生を促進する。この2点の適切なバランスを見出すことが、持続可能な社会の基盤を築くことにつながると考えられている。

社会的相互依存は、個人やグループが互いに依存し合いながら支え合う関係を指す。コンヴィヴィアリティにおいては、経済的、社会的、文化的な資源を共有し、共に成長し発展することが重要だ。この相互依存は、全体としての持続可能な発展を目指し、個々の強みを活かし、弱みを補い合うことで実現される。個人とコミュニティの間の相互作用が、より豊かな社会を構築するカギとなる。

コンヴィヴィアリティの実践例

まず、コンヴィヴィアリティは、環境問題の解決に重要な視点を提供するとも言われている。個々人が自律しながらもコミュニティと共生すること、例えば、地域での再生可能エネルギーの利用や、コミュニティガーデンの設立などを通じて、環境への負荷を減らすことができるからだ。これらは、エネルギーや農業の分野で個人の能力が引き出されており、第一の分水嶺の範疇にとどまることができるだろう。

コンヴィヴィアリティの理念を取り入れた事例には、地域通貨の導入なども挙げられる。輸出入を含む国際経済よりも、地域経済を重視する仕組みを持つことで、近隣地域の連帯感を強化し、経済的な自立を促進できるのだ。コンヴィヴィアリティは、過度な産業化よりも主要経済システムの外にある取り組みとの整合性がある傾向から、資源の分配を公平にし、社会的不均衡を是正する手段の一つにもなりうる。

近年は、コンヴィヴィアルなテクノロジーのあり方を模索する動きも強まっている。人工知能など先端技術と呼ばれる分野が急速に発展する中で、テクノロジーと人間の関係性が第二の分水嶺を越えていないかどうかに注目する流れがあるのだ。この観点から「コンヴィヴィアル・ロボティクス」という考え方なども生まれており、今後も議論・研究が重ねられていくと見られる。

まとめ

コンヴィヴィアリティの理念は、本質的に持続可能な社会の構築において重要な役割を果たすだろう。モノやサービスの発展が社会や個人の能力を高めているかどうかを見極めること、そして個人とコミュニティの自律性を維持し、共生を促進する社会を模索することが求められるからだ。

コンヴィヴィアリティの実現には、個人とコミュニティの積極的な関与も必要である。地域社会の相互作用の中で、個人とコミュニティは共に成長し、発展することが期待されている。

【参照書籍】コンヴィヴィアリティのための道具(イヴァン・イリイチ 著 , 渡辺 京二 訳 , 渡辺 梨佐 訳)
【参照サイト】規格化された社会から自律する個人へ
【参照サイト】The Concept of Conviviality
【参照サイト】Tools for Conviviality

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