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循環経済ビジョンとは・意味

Circular Economy

循環経済ビジョンとは?

循環経済ビジョンとは、日本の経済産業省が策定した、循環経済に向けた基本的な方向性を示す政策ビジョンである。循環経済(サーキュラーエコノミー)とは、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とし、気候危機や生物多様性の喪失など様々な負の外部性をもたらす「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型の経済システムに代わる新たなシステムだ。

このビジョンは、1999年に初めて発表され、その後、2018年から2020年にかけて新たな議論と更新を経て、「循環経済ビジョン 2020」が策定された。

循環経済ビジョン策定の歴史

はじめて循環経済ビジョンが策定されたのは1999年であった(以下、「1999年循環経済ビジョン」)。その後、およそ20年後の2018年7月から、新たに「循環経済ビジョン研究会」にて議論が重ねられ、2020年5月に「循環経済ビジョン 2020」が取りまとめられた。したがって、循環経済ビジョンには「1999年循環経済ビジョン」と「循環経済ビジョン 2020」が存在する。

1990年代後半には、最終処分場の逼迫や、資源制約等の課題への対応が喫緊の課題であった。そこで「1999年循環経済ビジョン」では、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから、環境と経済が統合する循環経済システムに転換することを目指し、従来のリサイクル対策の強化に加え、廃棄物の発生抑制(リデュース)対策と廃棄物の部品等としての再使用(リユース)対策を含む「3R」の本格的な導入が提言された。

その後我が国の「3R」は進展し、最終処分場残余年数の緩和、リサイクル率向上などの成果をあげてきたが、2000年代には新たに以下のような経済・社会状況の変化が顕在化してきた。

  1. 世界的な人口増加および経済の拡大
  2. 資源の安定供給リスクの増大
  3. 廃棄物排出量の増大と資源循環のグローバルチェーンの変化
  4. 環境問題の深刻化と環境配慮要請の高まり
  5. ESG投資の拡大
  6. デジタル技術の発展と新しいビジネスモデルの台頭

これらの背景から、「循環経済ビジョン 2020」の策定にあたっては、線形経済システム(リニアエコノミー)から循環経済システムへの経済活動の転換、経営戦略・事業戦略としての企業の自主的な取り組み促進、中長期的にレジリエントな循環システムの再構築などにフォーカスし、議論が進められた。

また、循環経済への移行の鍵は、デジタル技術の発展と市場・社会からの環境配慮要請の高まりであるとし、これを新たなドライバーに循環型の経済活動へと転換を図ることで、「環境と成長の好循環」の実現を目指すものとなっている。

循環経済ビジョン 2020の概要

「循環経済ビジョン2020」では、日本としての対応の方向性として、以下の3点をあげている。

1.循環性の高いビジネスモデルへの転換

従来の「3R」の枠を超えて、環境と経済の好循環を目指した新たなビジネスモデルへの転換が求められる。企業はこの転換を自社の経営戦略・事業戦略として位置づけ、持続可能な成長を実現する必要がある。

2.市場・社会からの適正な評価

企業は循環型経済への取り組みを積極的に開示し、社会的責任を果たすことで市場からの信頼を得ることが求められる。これにより、ESG投資の拡大や消費者行動の変化に対応し、ビジネスチャンスを創出できる。

3.レジリエントな循環システムの早期構築

循環型経済に転換するためには、国内外での廃棄物処理、リサイクルのコスト、そして資源供給の安定を確保するための長期的な視点でのシステム再構築が必要である。

循環経済ビジョンは、企業にとっての新たな機会

循環経済ビジョンは、日本が循環経済に向けた方向性を示す重要な政策指針である。欧州や世界の動向を踏まえ、日本がどの方向に進むべきかを再確認し、国際的な枠組みの中での立ち位置を明確にしている。特に、3Rや素材産業、サプライチェーンとの協働型ビジネスを通じて、日本の強みを活かし、競争力を高めることを目指しているのだ。

また、2020年3月に発表されたEUの新循環型経済行動計画との違いとして、規制的手法を最小限に抑え、ソフトロー(ガイダンス)を重視している点が挙げられる。両者の共通点は、循環経済を単なる環境活動ではなく、経済活動として位置づけ、企業にとっての新たな機会として捉えることが求められている点であり、この認識を広めることが企業の成長に繋がる重要な要素となるだろう。

【参照サイト】経済産業省「循環経済ビジョン2020(本文)」
【参照サイト】経済産業省「循環経済ビジョン2020(概要)」




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