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コーピング(Coping)とは・意味

コーピング

コーピング(Coping)とは?

コーピング(Coping)とは、ストレスに対処するための行動のこと。例えば、ストレスの原因となる状況を改善するために働きかけたり、自分自身の感情と向き合ったり、ストレスを感じる状況に対する自身の捉え方をポジティブに見直したりすることが例として挙げられる。アメリカの心理学者ラザルス氏により提唱された、「対処する(cope)」から派生した言葉である。

日常生活の様々なストレス

日常生活の中で私たちが感じるストレスは、様々なものがある。

  • 物理的ストレス(長距離通勤、過度な暑さ・寒さ、1日中暗い室内にいるなど)
  • 社会的ストレス(仕事や学校での人間関係、周囲からのプレッシャーなど)
  • 心理的ストレス(将来への不安や、焦燥感、孤独感など)
  • 身体的ストレス(疲労、不眠など)

適度なストレスは程よい緊張感を生み、やる気を高めることにもつながる。しかしその一方で、過度なストレスは精神を疲弊させたり、体調に支障をきたしたりする恐れもある。

コーピングが注目される背景

過度なストレスは我々の生活にどのような影響を与えうるのだろうか。

  • 能率の低下など仕事のパフォーマンスに影響を及ぼす懸念がある
  • 飲酒、喫煙、買い物、ギャンブルなどに過度にはまることで、日常生活が大きく変わってしまう恐れがある
  • うつ病などの精神疾患や、脳梗塞や心筋梗塞などの身体的疾患を引き起こしたり、過労死や自殺につながったりする恐れがある

メンタルヘルスに関する厚生労働省の調査では、仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスを感じる労働者の割合は、2022年に82.2%を占め、前年調査時の53.3%から大きく増加した。事業所レベルで見ると、連続1か月以上の休業者または退職者がいた事業所の割合は、2022年は13.3%と、こちらも前年調査時の10.1%から増加している(※1)

また、精神障害による労災の請求件数及び認定件数も年々増加している。請求件数は、2018年に1,820件であったのに対し、2022年には2,683件に増加。また認定件数は、2018年に465件であったのに対し、2022年には710件に増加しているのだ(※2)

ストレスが社会課題となる中、コーピングによるストレス対処は、個人の健康維持に加え、社会的不安を抑える効果も期待されている。

コーピングの方法

それでは、ストレスコーピングはどのように行うのだろうか。まず、ストレスの原因(ストレッサー)から刺激を受けた際、自身の価値観や経験によってその刺激が有害なものかどうかを人は認知している。そして、その状況に自身が対処できるどうかを評価することで、自分がどの程度ストレスを感じているかを認知している。その上で、ストレスを軽減するために対処するという作業が、ストレスコーピングだ。

コーピング方法には大きく二種類ある。

問題焦点型コーピング

問題焦点型コーピング(Problem-focused coping)は、ストレッサーそのものに働きかけ、ストレスの原因となる問題の解決を図ることで、ストレスを軽減する方法。例えば、営業目標など仕事の目標が非常に高く、目標達成に対してストレスを感じている場合のコーピングの例として、以下が挙げられる。

  • 目標達成までのアクションアイテムの中で、優先順位付けを明確にしたり、緊急性の高いアイテムを洗い出したりすること
  • 高い目標を達成可能なマイルストーンに落とし込み、できることから取り組むこと
  • 過去の成功事例から活かせる点がないか、また自分が見えていない点がないかなど、周囲からアドバイスをもらうこと
  • 目標達成に必要なスキルを身に付けるため、トレーニングや勉強会に参加すること
  • 自分一人では解決が難しい場合、より高い専門性や経験を持ったメンバーに協力を求めて一緒に取り組むこと

こうした対処方法を取ることにより、目標達成に向けて効率的、生産的に取り組めるため、ストレス軽減に加えて、自分自身に対する自信にもつながることが期待される。しかしその一方で、効果的なアプローチを重視するあまり、ストレスを感じている自分自身の感情や心理状況を軽視してしまったり、課題に取り組むあまり逆にストレスを感じてしまったりする恐れがある。

情動焦点型コーピング

一方、情動焦点型コーピング(Emotion-focused coping)は、ストレッサーそのものではなく、ストレッサーに対する自身の考え方や捉え方を変えることで、ストレスを軽減する方法。また、ストレッサーがもたらす不快な感情を軽減させるため、前向きな気分になれるようなことをすることだ。例えば、仕事や学校で考え方の異なる人と意見が衝突し、ストレスを感じている場合、コーピング方法の例として以下が挙げられる。

  • 考え方の異なる人の意見を聞くことは新しい視点を得る機会だと捉え、前向きに考えること
  • 様々な意見を取りまとめる経験は将来も役立つと考え、自分の成長機会としてポジティブに捉えること
  • 自分がネガティブな考えに陥っていると感じたら、音楽を聴いたり散歩をしたり、気分転換をすること
  • 誰かに話をしたり、日記に書いたり、メディテーションをしたりすることで、自分の気持ちに向き合い、気持ちを整理すること

情動焦点型のコーピングは、自分自身の感情と向き合うことで、困難な状況下でもストレスをコントロールする効果が期待される。その一方で、問題焦点型コーピングのようにストレッサーそのものに対処するわけではないため、ストレスを生む状況自体が変わるわけではなく、結果的により長い期間ストレスコーピングが必要となる恐れもある。

このように、状況によって二つの手法の有効性は異なる。問題焦点型コーピングは、自分自身がストレッサーに対してある程度影響力があり、状況そのものを改善することができる場合に向いている。その一方で、ストレッサーに対して影響力がなかったり、自分ではコントロールが難しい状況にあったりする場合に向いているのが、情動焦点型コーピングだ。状況に応じて、コーピング手法を使い分けたり、組み合わせて用いたりするとよいだろう。

まとめ

日常の様々なストレスから、心身の健康を守る手法であるコーピング。何がストレスの原因なのか、自分自身がその状況をどう捉えているのか、どのような対処法が有効なのかを見極め、ストレスと向き合うことでストレスを軽減させる手法だ。もし自分がストレスを抱えていると感じたら、一人で抱え込まず、周囲の協力を得ながらコーピングを行ってみてはいかがだろう。

※1 令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要(厚生労働省)
※2 令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します(厚生労働省)

【参照サイト】ストレスコーピング(厚生労働省 e-ヘルスネット)
【参照サイト】ストレスとは(日本成人病予防協会)
【参照サイト】ストレスコーピングの意味って?種類や解決法について詳しく解説します【具体例】(富士通ラーニングメディア)
【参照サイト】Stress and Coping with Discrimination and Stigmatization (Sophie Berjot, and Nicolas Gillet)
【参照サイト】Problem-Focused Coping: Definition, Examples & Strategies(Kaytlyn Gillis, LCSW-BACS)
【参照サイト】Emotion-Focused Coping: Definition, Examples & Strategies(Michelle Risser, LISW-S)




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