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ライフスキルとは・意味

若者たち

ライフスキルとは

ライフスキル(life skills)とは、社会の中で自立し、より良く生きていくためのスキルのこと。世界保険機関(WHO)では、「日常生活に生じるさまざまな問題や要求に対して、より建設的かつ効果的に対処するために必要な心理社会的能力」と定義されている。

ライフスキルには、例えば仕事を続けることや他者の行動理解、良い人間関係の構築などが含まれ、教育機関だけでなく、家族やパートナーから日常的に教わることができるとWHOは示している。

こういったライフスキルを十分に教わる機会を得られないと、若者が成長する段階で様々な問題に巻き込まれてしまうケースもある。一方、ライフスキルは教える側にとっても簡単ではない場合がある。

2000年の世界教育フォーラムにて「万人のための教育」推進のために採択されたダカール行動枠組みの中では、生活に必要な技能(ライフスキル)の習得は国家としての達成目標や個人・社会が必要としているニーズを大きく下回っていると指摘した(※1)。これを機にライフスキル教育の重要性の認識が広がったのだ。

特に、若年妊娠やHIV・AIDSの予防、酒やタバコ、ドラッグ、鬱や自殺などのメンタルヘルスの問題など若者が抱えやすい様々な問題を防ぐという意味で大きな意義があるとされている。ライフスキルは、人々が社会でより良い選択をするために、必要不可欠なスキルとして世界各国で注目されているのだ。

ライフスキルの意義

ライフスキル教育を行うことでどのような効果が期待されるのだろうか。WHOでは、ライフスキル教育を行う重要性を下記の通り示している。

  • 若者が巻き込まれやすい酒、タバコ、ドラッグなどの問題を認識し、避けることができる。
  • ライフスキル教育を通して、知識や価値観、態度を実際の行動に転換し、子どもたちが巻き込まれやすい問題のリスクの認知拡大ができる。
  • 若者に行動面と態度面から健康を意識した行動を促すことができる。
  • 自己肯定感や自己効力感を高めることができ、自分を傷つける行為や不安、鬱を避けることができる。
  • 社会の中で健康的に発達する上で必要なコミュニケーション能力、意思決定、批判的思考、交渉技術を身につけることができる。
  • 若い間にライフスキルの教育を受けることで教育を受けている間にとどまらず、その後の人生でも健康的なライフスタイルを持続することができる。
  • ライフスキル教育は個人だけでなく、周りの若者、家族、教師、スタッフなどに良い影響を与え、社会規範となる。

また、女児、女性へのライフスキル教育は、自分の体のことを自分で決める権利であるリプロダクティブ・ヘルス/ライツの向上にもつながる。

ライフスキルの5組10種類の能力要素

ライフスキルは5つのコアな心理要素とそれに付随する10種類の能力要素で構成される。

5つのコアな心理要素

5つのコアな心理要素には下記が挙げられる。

1.意思決定と問題解決の思考
2.批判的思考とクリエイティブ思考
3.コミュニケーションと対人関係
4.自己認識と共感性
5.ストレスや感情との向き合い方

10種類の能力要素

上記の心理要素に付随する能力要素が以下である。

1.意思決定
生活の中で建設的に決断する能力。

2.問題解決
生活の中で起こる問題を建設的に解決する能力。特にメンタルストレスとの向き合い方が大きな課題となっている。

3.批判的思考
情報を分析し、客観的に判断する能力。

4.クリエイティブ思考
意思決定と問題解決を、どのように実行するのか、代替案や行動、無行動を考える能力。

5.コミュニケーション
文化やシチュエーションに適応した形で、自分の気持ちを言語や非言語で表現する能力。

6.対人関係
ポジティブな人間関係を構築する能力。

7.自己認識
自分自身の性格、長所・短所、願望や望まないことを認識する能力。

8.共感性
他者の生活や気持ち、自分の行動によって他者がどのように思うかなどを想像する能力。

9.ストレスとの向き合い方
日常生活のストレスを認識し、それがどのように自分に影響するのか、コントロールの仕方を得る能力。

10.感情との向き合い方
自分や他者の感情がどのように行動に影響するかを認識し、適切に感情に応えられる能力。

日本でのライフスキル教育導入

日本でも文部科学省が制定している新学習指導要領で「生きる力」が大きなテーマとなっており、これがライフスキル教育にあたる。このライフスキルは、一方的に学ぶのではなく、主体的・対話的に学ぶことが重要視されている。

例えば、ロールプレイングで友人に喫煙や飲酒を勧められた場合の断り方は以前から教育現場で教えられてきた。近年では、先述のリプロダクティブ・ヘルス/ライツの観点から好きな相手から性的な誘いをされた際の断り方のディスカッションなども行われている。

ライフスキル教育は、若者が道を踏み外さず、自分を大切にした選択肢を選ぶ力を身につけるための教育だ。SNSやインターネットの普及で誘惑が多かったり、他者と比較して自己肯定感が低下してしまったり、若者を取り囲む様々な問題は各国で問題になっている。1人でも多くの若者が、自分自身を大切に、人生を健やかに生きていけるようにライフスキル教育の今後に期待したい。

※1 「万人のための教育」ダカール行動枠組み(世界教育フォーラム)

【参照サイト】Life skills education school handbook(World Health Organization)
【参照サイト】ライフスキル(life skills)(公益財団法人日本女性学習財団)
【参照サイト】学習指導要領(文部科学省)
【参照サイト】ライフスキル教育を取り入れる(東京都福祉保健局)
【参照サイト】教養としてのライフスキル(関口 久志 京都教育大学 教育支援センター長/教授・北山 敏和 ライフスキル講師)




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