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LOHAS(ロハス)とは・意味

LOHASとは?

LOHAS(ロハス)とは、「Lifestyles of Health and Sustainability」の略語で、直訳すると「健康的で持続可能な生活様式」。元々はアメリカで生まれたマーケティングの専門用語で、特定の考え方や行動パターンを特徴とする消費者のカテゴリーを表す。日本では新しいライフスタイルとして定着した。

LOHASの概念

LOHASの概念は1990年代の後半、アメリカの中西部、コロラド州ボールダー周辺で生まれた。

北風祐子『LOHASマーケティング』(JAPAN MARKETING JOURNAL 102、2006年)によると、アメリカの社会学者ポール・レイ氏と心理学者シェリー・アンダーソン氏は、1980年代ころから全米の成人15万人を対象に15年にわたり一般消費者の価値観調査を実施してきた。その結果、彼らは3つの社会集団の存在を確認した。1つ目は“宗教的価値観を重んずる保守派”、2つ目は“,商業化された都会の産業社会を信奉し、科学技術の発展を重視する現代派”、そして保守派にも現代派にも当てはまらない3つ目の社会集団として、LOHASな価値観を持った人々、生活創造者(Cultural Creatives)が増え続けていることを発見した。

同記事によるとLOHASは、1999年にクリーンエネルギー関連機器やフィットネス・ヨガ関連商品を販売するガイアム社の経営者ジルカ・リサビ氏が生活創造者をマーケティング・ターゲットとして捉えるべく、ポール・レイ氏とともにつくりあげたコンセプト、とある。

なお、LOHASな消費者の特徴は以下の通りである。

  • 環境や健康に関心が高く、実際に行動する
  • 社会問題に対する意識が高い、
  • 自己啓発や精神性の向上に関心が高く、消費意欲も旺盛である
  • 好みの商品を勧めるなど、情報やメッセージを家族や友人に発信している

アメリカにおけるLOHAS

アメリカで2002年からLOHAS消費者調査を行っている調査機関NMI(Natural Marketing Institute、ナチュラル・マーケティング・インスティテュート)によれば、2006年の時点で全米人口の23%がLOHAS層だといわれていた。同年のアメリカのLOHAS市場規模は約27兆円といわれている。

なお、2022年5月に公開された株式会社バルダーダッシュが運営するリサーチサービスWonderの記事によると、2022年のLOHAS向けのTAM(Total Addressable Market、製品やサービスが獲得可能な最大の市場規模)は約4,725億1,000万ドル、日本円にして約66兆円(2023年7月24日時点)と推定されている。

また“2006年の時点で全米人口の23%がLOHAS層”とされていたが、2019年には全米人口のほぼ3分の1に増加している。最近の報告書によるとグリーン・マーケット(環境に配慮した商品やサービス)を愛用する人の割合が2021年には全米人口の78%になる、とも書かれている。

アメリカのLOHAS市場の5分野

アメリカのLOHAS市場の分野には以下のものがあげられる。

  • サステナブル・エコノミー(持続可能な経済)
    (環境配慮型住宅、再生可能エネルギー、代替エネルギー)
  • エコロジカルなライフスタイル(環境に配慮した生活様式)
    (環境配慮型住宅、インテリア、エコツーリズム、家庭用品)
  • ヘルシー・ライフスタイル(健康的な生活様式)
    (ナチュラル/オーガニック食品、パーソナルケア、サプリメント、オーガニック繊維製品など)
  • オルタナティブ・ヘルスケア(代替医療・自然医療)
    (鍼灸、漢方、アロマテラピーなど)
  • パーソナル・ディベロプメント(自己啓発)
    (自己啓発・精神性向上のための教材、ヨガ、フィットネスなど)

アメリカではLOHAS層をターゲットにしたLOHAS関連商品が販売されている。例えばWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)は有機・自然食品を販売し、Patagonia(パタゴニア)はオーガニックコットンのアパレル商品を販売する。

しかし、アメリカにおいてLOHASという言葉はマーケティングに携わる人たちの間で用いられる専門用語であり、一般の人たちにはほとんど知られていない。

日本におけるLOHAS

一方、日本ではメディアによって広まり、一般用語となった。

2002年(平成14年)9月、日本のメディアに「ロハス」という言葉が初めて登場した。2002年6月にアメリカで開催された第6回LOHAS会議に日本人として初めて参加した大和田順子氏が、その模様を日本経済新聞と日経エコロジーに寄稿した。

「ロハス」は2004年(平成16年)頃から、健康とサステナビリティに根差したライフスタイルを表現する言葉として注目された。2005年以降、「ロハス」を特集する雑誌が増え、テレビやラジオでもこの言葉が使われるようになった。

メディアによって一般に広まった結果、アメリカに比べ、日本の一般消費者における「ロハス」の認知度は高い。消費者庁が2016年度に実施した「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書(調査数2,500)によると、「エシカル消費」に関する言葉で最も認知度が高かった「エコ」(50.9%)の次に、「ロハス」は認知度が高いものとなっている(32.5%)。

また自然災害の頻発など年々環境意識が高まっていることを背景に、2019年度に行われた調査(調査数2,803)では、「エコ」の認知度は72.6%、「ロハス」の認知度は34.8%、と2016年度に比べ高まっている。

アメリカとは異なる発展を遂げた「ロハス」だが、一時的なブームや流行語という見方もあった。2006年6月に公開された「Development of LOHAS in Japan」という記事では「ロハスが単なる流行語で終わるか、ライフスタイルの主流になるかは、今後の市場や消費者の意識の変化にかかっている」と書かれている。しかし2019年4月に公開された「編集長コラム) 「SDGs」を死語にしてはいけない」という記事を読む限り、残念ながら「ロハス」を死語と認識している人も少なくないと思われる。

また「ロハス」という言葉に厳格な定義があるわけではないため、それを逆手にとり、自然環境との調和や環境負荷を低減するイメージを商品やサービスに関連付けるために用いられることも少なくない。

LOHASとエコの違い

LOHASと類似する概念に「エコ」という言葉がある。エコとはエコロジー(ecology)の略称で、本来は「生態学」を意味する。一方で、近年では、環境や自然の共生をはかる社会運動や環境に配慮する行為などを象徴する意味でも用いられる(出典:エコロジー – 環境用語集)。

地球環境に配慮する点はLOHASもエコも共通している。だが、エコが地球の生態系や環境を守るための生活様式を指す一方で、LOHASには「Health(健康)」とあるように、生態系や環境の保全に加え、人間自身の健康も持続的に保つ意味が含まれる。

株式会社三重銀行の季刊誌「MIE TOPICS」では、以下のように比較されている。

従来のエコ活動が、倹約や環境運動のようなストイックなものになりがちであったのに対して、LOHASはむしろ、健康や環境に配慮しながら、快適さや自分らしい生き方を追求することに特徴があります。

LOHASは環境と消費を結び付けるキーワードであり、「エコ (環境への配慮 )」と「エゴ (自分らしさの追求)」の調和を目指すものです。

引用元:LOHAS(ロハス)

北風祐子『LOHASマーケティング』(JAPAN MARKETING JOURNAL 102、2006年)では、LOHASとエコの違いについてこう書き記している。

地球環境問題という大きな存在から自分が眺められている状態がエコだとすれば、LOHAS は、自分のメリットを出発点として環境を考える。「エゴから始まるエコ」なのである。

同記事では、「電通オリジナル消費者データベース d-camp」(2004 年版)の分析結果より、環境や健康に関心の高いLOHASな価値観を持った人々とエコ派の人々の生活意識の特徴を以下のようにあげている。

LOHAS派の生活意識の特徴

  • 予算オーバーでも質の良い物を選ぶ
  • 買い物は好きだ
  • 安全な食品・健康に役立つ商品に出費を惜しまない
  • 他人や社会の役に立つ行動をする
  • 自分の意志を尊重する
  • 自己表現手段として商品を選ぶ

エコ派の生活意識の特徴

  • 欲しいと思っても定価では買わない
  • 買い物は好きではない
  • 物は修理し長く使う
  • 規則正しい食生活をしている

(出典:北風祐子『LOHASマーケティング』p.58(JAPAN MARKETING JOURNAL 102、2006年))

消費者が消費行動にこだわりを持ちながら、地球環境に配慮するというのがLOHASの特徴だ。

LOHASとSDGsの違い

LOHASが生活様式や消費者のカテゴリーを指す言葉なのに対し、SDGsは国際目標を表している。

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標 )」の略語で、2015年の国連サミットで、193の国連加盟国が全会一致で採択し、2030年までに達成すべきと定めた国際目標だ。

SDGsは、環境や社会など世界のさまざまな課題に関する17の目標と、169のターゲットで構成される。これらの包括的な目標を掲げることで、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」社会を目指すのがSDGsである。

日本のLOHASに関するイベント

日本のLOHASに関するイベントに「ロハスフェスタ」と「ロハスパーク」がある。

⾝体や⼼に優しいことは地球にも優しいこと。そんな想いから「みんなの小さなエコを大きなコエに」をテーマに毎年開かれるロハスフェスタ。大阪・広島・淡路島・東京・福岡で開催されている。2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、大阪、淡路島のみでの開催となった。

ロハスフェスタをオンラインでも楽しめるECモール「LohasFesta Mall(ロハスフェスタモール)」では、ハンドメイド作品を中心に、アンティーク、植物雑貨、体に優しい食品などが販売されており、ロハスフェスタ開催中は会場と連動したコンテンツも公開される。

作った人の顔や思いがみえる手造りの小物や家具、ゆっくりと時間を超えて今も使われるアンティークや、こだわり食材を使った手造りフード&スイーツなどが公園に集まるマーケット。遠くから家族連れのみんなが集まるような、おしゃれでかわいくエコを実践するイベント。

消費意欲を保ちながら、地球環境に配慮する

日本においてLOHASは新しいライフスタイルとして定着した。LOHASの特徴は“消費者が消費行動にこだわりを持ちながら、地球環境に配慮する”という点だ。自身の健康にも目を向けたライフスタイルとなるため、従来のエコ活動に比べると取り入れやすいはずだ。

ただし、「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」などの言葉があるように、LOHASの概念を掲げる商品やサービスの中には、環境に配慮しているように見せかけただけのものもあるだろう。

LOHASの概念のみならず、「サステナブル」や「エシカル」「環境にやさしい」といった言葉を掲げる商品やサービスに触れる際には、根拠が示されているか、透明性があるか、それらを提供する企業が一貫した情報を発信しているか、情報が第三者機関によって評価されているかなど、見極めるよう心がけたい。

【参照サイト】Business; They Care About the World (and They Shop, Too) – The New York Times
【参照サイト】LOHAS Market Research | Wonder
【参照サイト】Development of LOHAS in Japan
【参照サイト】NPO ローハスクラブ
【参照サイト】LOHASマーケティング
【参照サイト】ココロとカラダ、地球も健康に
【参照サイト】環境・社会課題を解決する行動変容「エシカル消費」|ビジネスコラム | NTTファシリティーズ
【参照サイト】「倫理的消費(エシカル消費)」に関する 消費者意識調査報告書
【参照サイト】ロハスとエコの違い
【参照サイト】LOHAS(ロハス)
【参照元】小坂勝昭「『環境思想としてのLOHAS』の社会学的考察」(文教大学国際学部紀要 第19巻1号、2008年)




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