Browse By

ニューロセクシズムとは・意味

ニューロセクシズム

ニューロセクシズムとは?

ニューロセクシズムとは、男女の脳の構造が違うため、男女で行動や思考が異なる、得意・不得意がある、という考え方。

2000年代以降、日本でも聞くようになった「男性脳」「女性脳」という言葉。しかし、その後の研究で、脳の構造は男女差以上に個人差が大きいと判明している。ニューロセクシズムは、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、生得的な理由から男女差は解消されないという考えを助長する恐れがあり、多くの科学者達が警鐘を鳴らしている。

脳の構造に関する研究

男女の脳の違いを示す根拠としてよく挙げられるのが、「左右の脳をつなぐ神経線維の束である脳梁(のうりょう)が、女性の方が男性より太い」といった構造の違いだ。しかしこれは、1982年に男性9名、女性5名という少数を対象に行われた研究によるものであり、現在では科学的根拠に乏しいと言われている。

その後の研究では、脳の構造は男女差よりも個人差の方が大きいと判明している。例えば、2015年にイスラエルの研究者達が、MRIを用いて脳の116箇所の部位サイズを測る研究を行った。当初は281人、その後追加で1,400人を対象に研究が行われた。その結果、僅かに男女差は見られたものの、明確な「男性脳」「女性脳」を持つ事例は少なく、個体差の方が大きかったという。つまり、男性であれば男性脳を持つ、女性であれば女性脳を持つというわけではなく、人間の脳は男女の特徴がモザイクのように混ざり合っているというのだ。

また、脳の構造は必ずしも生得的なものとは言い切れない。生活環境、社会、教育、個人の経験など様々な影響を脳は受けるため、大人になってからも脳は変化すると言われている。そのため、脳の構造の男女差が、生まれながらによるものか、経験を通して生じたものか、慎重な見極めが必要なのだ。

ニューロセクシズムの問題

ニューロセクシズムの問題とは、生まれつき脳に性差があること、そしてそれが個人の行動や能力の男女差としても影響を与えており、その差や違いは変えがたいものである、とステレオタイプ的に思い込ませてしまうことだ。

  • 男女で得意・不得意な分野が生得的にあるという固定観念から、性的役割分担を助長してしまう
  • 本来平等に与えられるべき教育や就業の機会が、ジェンダーを理由に妨げられてしまう
  • 「男性・女性だから」と選択的に与えられた教育や経験により培われた、「男性的・女性的」とされる能力や行動が、あたかも生得的なものだとすり替えられてしまう
  • 個人の努力や能力によって達成された出来事が、「男性・女性だからできた」もしくは「男性・女性なのにできた」と、ジェンダーに起因するものとして説明付けられてしまう
  • 個としての多様性を軽視し、個人の可能性を阻害してしまう

まとめ

我々一人一人が持っている個人としての特徴。これは生まれながらの性別という理由で簡単に説明できるものではない。教育、経験、環境や社会から影響を受け、生涯を通して培われていくものだろう。脳の特徴は、生得的なものか、それとも経験により変化したものなのか。脳に関する研究は今後ますます進んでいくだろう。

【参照サイト】ニューロセクシズムとは何か?「脳の男女差」に潜むわな(日経X WOMAN)
【参照サイト】妻のトリセツが説く脳の性差 東大准教授は「根拠薄い」(朝日新聞)
【参照サイト】How ‘neurosexism’ is holding back gender equality – and science itself(THE CONVERSATION)
【参照サイト】Meet the neuroscientist shattering the myth of the gendered brain(Guardian)




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter