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ネクサスアプローチとは・意味

ネクサスアプローチ

ネクサスアプローチとは?

国連大学の研究所の一つで、ドイツにある国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所(UNU-FLORES)が考案した概念的枠組みで、世界的課題の相関性を考慮しながら各課題の解決を目指す方法のこと。ネクサスとは、ラテン語で「関係」を意味する。

ネクサスという用語は1980年代に環境資源管理に関連して、国連大学によるプロジェクトで初めて紹介された。その後、2011年11月に独・ボンで「水・エネルギー・食料の安全保障の関係(ネクサス)」会議が開催された。同会議の目的は、経済開発、天然資源管理、環境政策、食料およびエネルギー安全保障分野の関係者が、水、エネルギー、食料の相互関係を管理するための新たなアプローチの模索であった。

それ以後、ネクサスアプローチの用語と概念が議論されてきたが、これまで、国際学術研究機関で普遍的に認められているネクサスアプローチの定義は存在せず、並行定義が使用されていると国連大学は発表している。

各機関によるネクサスアプローチへの見解

国連

国連は、2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、貧困や不平等・気候変動・環境劣化・繁栄・平和と公正など、世界的な諸課題の解決を目指すもので、同目標は相互に関連しているとの見解を公表している。

国立研究開発法人 国立環境研究所

国立研究開発法人 国立環境研究所は、ネクサスアプローチについて以下の認識を発表している。2012年に開催されたリオ+20とSDGsでの議論は、ネクサスアプローチという異なる分野や空間範囲に及ぶ対立や矛盾を回避し、統合的かつ効果的に取り組みを進めていく重要性が指摘されてきた。しかし、これまで各指標や構成要素の相互関連性について十分に検討されてこなかったと同研究所はみており、事象間の構造を的確に提示するための指標「持続可能性連環指標」を開発、提案している。

UNU-FLORES

UNU-FLORESは、完全な資源管理の概念を生み出すにあたり、ネクサスアプローチを使って管理するとより優れた解決策を開発できるとしている。例えば水や土壌、廃棄物、そのほかの地理的資源は、統合するなど相互に関連させて管理することで使用効率を高めることができ、同時に環境リスクと生態系の劣化も最小限に抑えられると考えられている。ネクサスアプローチは、資源の相互関係を強調するだけでなく管理にも重点を置いており、研究から実装までの工程も考慮したうえで、ガバナンスや個々の能力開発などに重点を置くものだ。

水、土壌、廃棄物、その他の地理資源の持続可能な管理に対してUNU-FLORESが推進するネクサスアプローチは、環境資源の観点から見ると、水やエネルギー、食料安全保障のつながりと密接に関連している。それゆえ同アプローチは、増大する資源需要や気候変動、都市化やグローバル化といった現在の課題に対応するのに役立つ、というのがUNU-FLORESの見解である。

ネクサスアプローチに関する研究例と、今後の課題

アーバン・ネクサス・ラボ

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科、総合政策学部、環境情報学部の付属研究所であるSFC研究所は2018年6月にアーバン・ネクサス・ラボを開設し、ベルモント・フォーラム(※1)国際共同研究「持続可能な都市化に向けた国際イニシアチブ:食料・水・エネルギーのネクサス」プロジェクトを開始した。同プロジェクトは、米・自然科学基金(NSF)と英国の公的機関であるINNOVATE UKの協力によって、ベルモント・フォーラムとJPI Urban Europe(※2)が運営し世界18カ国が参加する国際共同研究事業が選んだ15プロジェクトのうちの一つである。

同ラボは、都市と地域の計画設計を行い、都市の食料・エネルギー・水の関係を管理し、人々の健康生活を共創するプラットフォームを構築しており、世界の6つの研究地域(東京横浜・北アイルランド・オランダ・米国五大湖地域・カタール・オーストラリア)における実践・展開を目指している。

※1 地球の環境変動に関する研究を支援する、世界各国の研究支援機関および国際的な科学組織のグループ
※2 EUのHorizon 2020およびイノベーションプログラムから資金提供を受けた、共同プログラミングイニシアチブ

大阪大学

大阪大学の松井孝典助教らは2019年、論文「ネクサス・アプローチに基づいたSDGsの目標・ターゲット・指標間の構造解析」を発表した。同論文の目的は、SDGs間のネクサスを明らかにすることであった。日本の都道府県規模の統計データから得られるSDGs指標のネットワーク解析やネクサス構造の類似性をもとにグループに分類し、SDGs未来都市計画に記載された実践的な取り組みを精査し、日本におけるSDGsのネクサス構造の特定や可視化の事例を示した。

同論文では、今後SDGsネクサス研究を展開する際に重要な研究課題として、以下が提案された。

・SDGsアクションプランが定める取り組みのネクサス構造の可視化と利害関係者への科学的情報の提供
・SDGs指標モニタリング対象の空間高解像度化と類型化による知識基盤の形成
・大規模データとデータサイエンス技術による、時空間シームレスなSDGs指標追跡システムの開発
・既存の計画・戦略をSDGs対応型の計画・戦略にアップグレードするための検索論理の設計
・SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実践による、SDGsネクサスのオープンサイエンス化

UNU-FLORES

UNU-FLORESのSerena Caucci氏らは、2020年に出版された本「Sustainable Development and Resource Productivity」で1章を執筆した。同章の題名は、「Sustainable development as the ultimate target of adopting a nexus approach to resources management(資源管理にネクサスアプローチを採用する究極の目標としての持続可能な開発)」である。

同章のなかで研究者らは、資源生産性は食料・水・エネルギーの安全性達成に重要で、ネクサスアプローチを採用する重要な動機であるが、持続可能な開発にはネクサスの他の側面を無視してはならないと主張している。事例とケーススタディに基づいてネクサスアプローチを採用する際に、社会的および環境的側面を考慮することの重要性を示した。

世界的課題の解決を目指すべく採択されたSDGs達成を目標として、今後、国々や官民が協力してネクサスアプローチの研究を進め、実践・展開していくことが期待される。

【参照サイト】貧困の方程式から飢餓を排除する(貧困の方程式から飢餓を排除する- 国連大学)
【参照サイト】The Nexus Approach(The Nexus Approach – UNU – Institute for Integrated Management of Material Fluxes and of Resources)
【参照サイト】将来の水とエネルギーのニーズへの対応には農業が鍵-しかし、包括的な政策アプローチ、統合的な計画立案、小規模農家への一層の配慮が必要
【参照サイト】持続可能な社会に向けた日本の状況 指標開発の背景|持続可能な社会に向けた日本の状況~連環指標体系によるモニタリング~
【参照サイト】国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所 (UNU-FLORES)
【参照サイト】アーバン・ネクサス・ラボ |慶應義塾大学SFC研究所
【参照サイト】ネクサス・アプローチに基づいたSDGsの目標・ターゲット・指標間の構造解析
【参照サイト】Sustainable development as the ultimate target of adopting a nexus approach to resources management




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