デジタルツインとは・意味
デジタルツインとは?
物理空間(現実世界)のものを、仮想空間に複製したものをデジタルツイン(Digital Twin)という。簡単に言うと、「実在するものからデータをとり、デジタル上の双子をつくる」イメージだ。
デジタルツイン自体が特定の技術を指すのではなく、状況に応じてAI(人工知能)、クラウド、VR、ARなど様々なテクノロジーを駆使する。とりわけIoT(モノのインターネット)によって導入コストが下がったことで、デジタルツインは急速な普及がみられる。
1960年代には、アポロ13号が事故を起こした際に無事に地球に帰還させる計画を立てるのに、NASA側が地球上に存在する複製されたシステムを用いて危機を乗り越えたことがよく知られる。
なぜ注目されているのか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)も相まって、デジタルツインは、産業界を中心に大きな波となっている。
仮説や想定を基にした情報で作られる、従来のシミュレーションとの違いは次のとおりだ。デジタルツインは、実際の事象からデータを取得しているため、モデリングが高精度で結果の信頼性や安全性も向上する。また、リアルタイムで更新されるデータに接続し、迅速な分析や対応が可能なため、活用範囲や利便性が劇的に拡大した点が画期的だ。
たとえば、家電や電子機器を販売する場合、従来はサポート窓口への問い合わせやアンケートなどでしか顧客の利用状況を確認できなかったが、デジタル空間上に複製したものを定点観測していれば、リアルタイムでの利用データにつながり、タイムリーなサービスを提供できるようになる。また、建築などは、現実に高いコストをかけてモデルを作らなくても、先に災害が起きたときの逃げ道や、壊れやすい箇所など、リスクへの対策を練ることが可能だ。
2024年に80兆円を超える市場規模になると予測されるメタバースの分野でも、デジタルツインの可能性には期待されている。フランス・パリのノートルダム大聖堂は2019年、大火事でその木造部分や尖塔などを失った。しかしそのデジタル3Dモデルは、同じくフランスの開発会社ユービーアイソフトが販売する『アサシン クリード ユニティ』上で再構築され、さまざまなテストが可能となっている。
また、交通状況を把握し渋滞の緩和を図ったり、災害発生時の対策を練ったりするのにも利用可能。パリスマートシティといった都市計画にも活用される。
デジタルツインの事例
日本
- 富士通が提供する「デジタルツインコレクター(Digital Twin Collector)」は、モビリティのビッグデータを統合・管理し、保険業務の効率化などができる
- トヨタは、静岡県裾野市で開発を進める実験都市「ウーブン・シティ(Woven City)」にデジタルツインを活用
海外
- 都市国家シンガポールが建設やパワーグリッドなど、綿密な都市計画のために導入している。
- 米国GE(ゼネラル・エレクトリック)のDigital Wind Farmは、クラウドベースのデジタルツインモデルで風力発電の効率化を図っている。
デジタルツインの今後
デジタルツインは、オートメーション化・データ化・コンピュータ化に革新が起こる「インダストリー4.0(第四次産業革命)」、そしてバーチャル世界とリアル世界を融合させて経済や社会の効率化や課題解決を図る「ソサエティー5.0」とも深く関係している。
今後、世の中が進歩していく中で、デジタルツインは、ますます欠かせないものになっていくだろう。