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ダークパターンとは・意味

ダークパターン

ダークパターンとは?

ダークパターンとは、ウェブサイトやアプリにおいて、ユーザーを意図的に誤解させ、不利な選択をさせるように設計されたユーザーインターフェース(UI)のこと。単に使いづらい、不親切といったレベルではなく、ユーザーに気づかれない形で有料サービスに加入させたり、不要な個人情報を取得したりするなど、ユーザーの不利益につながる操作を促す点が特徴だ。

近年、スマートフォンやタブレットの普及、ECサイトやサブスクリプションサービスの利用増加に伴い、ユーザーが日常的にダークパターンにさらされる機会も増えている。こうした背景から、国内外でダークパターンへの問題意識が高まり、規制や啓発の動きが進んでいる。さらに現在は、生成AIを用いた広告やリコメンデーションなど、新しい形態のダークパターンも登場し、消費者も事業者も時代に沿った形での対応が求められている。

ダークパターンが注目される背景

「ダークパターン(Dark Patterns)」という言葉は、2010年にUXデザイナーのHarry Brignull氏が提唱したもので、自身が開設した「Dark Patterns(現在はDeceptive Designの名称に変更)」というウェブサイトの中で、具体的な手口や事例、国際的な法規制に関する情報を発信している。

近年ではOECD(経済協力開発機構)や日本の消費者庁も注意喚起を行っており、ダークパターンは単なる消費者の不利益だけでなく、経済的損失、プライバシー侵害、デジタル格差の拡大など、さまざまな社会的リスクを伴う問題として位置づけられている。

ダークパターンの種類と事例

ダークパターンは国際的にも議論がなされ、その定義や分類はさまざまだが、OECDによると下記の7つを代表的なダークパターンの種類として挙げている。

1.行為の強制(Forced Action)

特定の機能にアクセスさせるために、強制的に消費者に何かを行わせようとする。

  • 単なる情報閲覧のために会員登録やメールアドレスの入力を強制される。
  • サービスにおいて不必要な範囲までの個人情報を開示させる。
  • 消費者の同意なく連絡先情報を抽出する。

2. インターフェース干渉(Interface Interference)

情報をフレーミング(切り取る)することで、事業者側に都合のよい行為の実行を促す。

  • 「おすすめ」「人気」などの事業者側に都合のよい選択肢を目立たせる、定期購入をデフォルトの設定にする、などの一方で、重要な情報を視覚的に不明瞭にする。
  • 虚偽の高値に対して割引した値段を表示する。

3. 執拗な繰り返し(Nagging)

事業者側にとって都合のよい行為を促すため、消費者に繰り返し要請する。

  • 通知や位置追跡機能を有効にするようしつこく要求する。

4. 妨害(Obstruction)

タスクの流れやインタラクションを必要以上に困難にし、消費者の行動を思いとどまらせる。

  • サービス登録の容易さに比べて、解約を困難にする。
  • アカウントや個人情報の削除を困難または不可能にする。
  • 異なる条件や単位で商品を提示するなど、価格の比較を困難または不可能にする。

5. こっそり(Sneaking)

消費者の意思決定に関連する情報の隠偽・偽装や、開示を遅らせようとする。

  • 取引の最後にオプション料金(ギフト包装や補償)などをカートに追加する。
  • 消費者の明確な同意を得ずに、トライアル期間後などに契約を自動更新する。

6. 社会的証明(Social Proof)

他の消費者の行動を知らせることによって意思決定に影響を与えようとする。

  • 「今○人が閲覧中」「直近1時間で○件購入」など、他の消費者の行動に関する通知をする。
  • 誤解を招く、または虚偽であるレビューや体験談を掲載する。

7. 緊急性(Urgency)

実際または虚偽の時間的・量的制限を与え、商品の即時購入を誘導する。

  • 在庫僅少または大人気であることを表示する。
  • 割引期間の終了をカウントダウンタイマーによって表示する。

なぜダークパターンが使われるのか?

ダークパターンは、事業者が短期的な利益を最大化するための戦略として意図的に設計され、以下を目的とするケースが多い。

  • 離脱防止
  • 購入率や成約率の向上
  • 個人情報の収集とデータ活用
  • 有料プランやオプション加入の促進

古くから「サイコロジカルプライシング(心理的価格付け)」など小売業における欺瞞的な慣行もあったが、選択肢をあえて減らすといった公共政策における「ナッジ(Nudge)」や、市場シェアを獲得するために高速でデータ分析と実験的な施策を繰り返すアプローチ「グロースハック(Growth Hack)」などが組み合わされることで、現在のダークパターンが生まれた。

これらの手法は本来、消費者の意思決定を支援する目的で用いられるものであるが、過度に操作的に使用されることでユーザーの選択を歪め、不利益を生じさせる「ダークパターン」として機能してしまう可能性がある。こうしたパターンは、ユーザーの「選択バイアス」や「損失回避バイアス」など心理的傾向やオンラインという環境を巧みに利用し、ユーザーに不利な行動を取らせるよう設計されている。

各国の法規制や対応状況

オンラインサービスの急速な拡大にともない発生している、こうした問題に対応するため、
欧米では法整備が進められている。

EU:2024年に全面施行されたデジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)にはダークパターンの利用禁止が盛り込まれている。

アメリカ:連邦取引委員会法(FTC法)において、ダークパターンは「商取引における、または商取引に影響を及ぼす不公正または欺瞞的な行為・慣行を禁止」するFTC法5条違反とされ、積極的に取り締まりが行われている。実際に大手ECサイトでの不当な解約の手続きや、ゲーム会社にオンラインゲームでの不正な課金誘導に対し罰金を科したケースもある。また州によっては、ダークパターンを用いて取得した同意を無効とする法律を定めているところもある。

一方、日本ではダークパターンを包括的に規制する法律はまだないが、一部の悪質なものに対して、対応が進められている。

日本:2022年の特定商取引法の改正により、サブスクリプション契約の最終確認画面での情報表示が義務化。また2023年10月から景品表示法でステルスマーケティングが不当表示として禁止された。

ダークパターンへの対策

ダークパターンを回避するためには、社会、事業者、個人ユーザーとそれぞれのレベルでの対策が必要となる。具体的には下記のような例が考えられる。

社会:法整備や専門家を交えた議論、ダークパターンの社会認知拡大

事業者:UI/UXの設計段階での確認、ユーザー視点でのABテストや行動分析に基づいた倫理的デザインの導入、社内に倫理委員会の設置やレビュー体制の見直し

個人ユーザー:さまざまな手口の知識などダークパターンに対する学習と理解、消費行動をする際の客観的な視点と情報の確認

また、消費者庁は「令和6年版消費者白書」に消費者のための「ダークパターンを回避するチェックリスト」(※1)を掲載しているので、こうしたリストを活用するのも良いだろう。

まとめ

インターネットイニシアティブ(IIJ)が2024年に実施した(※2)では、ダークパータンによる被害総額が年間1兆円を超えると試算されている。ダークパターンは、インターフェース上の設計問題でありながら、その背後には事業者の戦略的意図が存在している。短期的には利益につながる一方で、長期的には信頼の喪失や法的リスクにもつながる可能性があるため、回避・是正が求められている。消費者が正しい選択・判断をできるよう、ベストプラクティスを追求し、より持続可能で信頼されるサービス運営を目指すことが必要だ。

※1 消費者庁 | 令和6年版消費者白書
※2 Webの同意を考えようプロジェクト|さよなら、ダークパターン。

【参照サイト】Deceptive Patterns (aka Dark Patterns)
【参照サイト】OECD | Dark commercial patterns
【参照サイト】国民生活センター | ダークパターンとは
【参照サイト】BizRis | 欧米でのダークパターン規制の動向と日本企業に求められる対応|消費者の信頼を失わないために避けるべきUI/UXのパターン
【参照サイト】日本経済新聞 |[社説]消費者欺く「ダークパターン」の対策急げ
【参照サイト】総務省 | 三菱総合研究所 ダークパターン及び プロファイリングについて
【参照サイト】Web担当者Forum | ユーザーに不利な選択をさせる「ダークパターン」対策、誠実なWebサイトの認定制度 2025年開始




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