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1.5度目標とは・意味

1.5度目標

1.5度目標とは?

1.5度目標とは、世界の平均気温の上昇を「1.5度」に抑える努力をするという目標を表す。パリ協定で示された目標で、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をすることを掲げている。2度より十分低く保つことを掲げた目標は「2度目標」と呼ばれる。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)は、2021年8月に、地球温暖化の原因は人間の活動であるとする報告を公表した。かつ、2011年から2020年の10年間で世界の平均気温が1850年から1900年の間に比べて1.09度上昇していると「政策決定者向け要約」で発表している。

またIPCCは、平均気温の上昇が1.5度になると、50年に1度という高温は8.6倍に、10年に1度という大雨の頻度も1.5倍になるとしている。平均気温の上昇が2度になる場合には、それぞれ13.9倍、1.7倍にまでなると予測される。気温上昇が一時的に1.5度を超える場合、超えない場合と比較して損失と損害が増加すること、人も自然も適応の限界に達するであろうことなども記載されている。

この可能性をどれだけ低く抑えられるかが課題となっており、1.5度目標はその焦点となっている。

1.5度目標の今

CO2の排出量を45パーセント削減することが鍵か

IPCCの「1.5℃特別報告書」には、地球温暖化が現在の程度で続けば、2030年から2052年の間に1.5度に達する可能性が高いとされている。

そのため、IPCCは気温上昇を約1.5℃に抑えるためには、2030年までに2010年比で世界全体のCO2排出量を約45%削減することが必要だと「政策決定者向け要約」で示した。

しかし現時点では、世界各国のCO2排出量削減対策の進捗具合を見る限り、約45%の削減は容易ではないことも明らかになっている。

COP27で明らかになった厳しい現状

2021年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP:Conference of the Parties)26では、パリ協定で掲げた努力目標である1.5度目標が、各国が目指す世界目標として位置づけられた。

だが、2022年に開催されたCOP27では、1.5度目標の厳しい現状が浮き彫りになった。

英国の公共放送BBCは2022年11月11日、新型コロナウイルス感染症の拡大後、再び飛行機を利用する人が増えたこと、石炭の利用が増えたことにより、2022年のCO2排出量は記録的な水準にとどまるとの予想をウェブサイトに示した。グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)の報告では、2022年の世界のCO2排出量が1%上昇すると推定されている。これは2030年までにCO2排出量を約45%削減することが必要とされる1.5度目標とは対照的な内容だ。

またロイター通信は同年11月13日、米国のケリー気候変動特使が「数カ国が1.5度目標に言及することに抵抗していると述べた」という記事をウェブサイトに掲載している。

日本経済新聞は同年11月21日、IPCCの推計では、1.5度目標の実現には残り4,000億トンしかCO2を排出できないにもかかわらず、世界の年間排出量は約400億トンで、今のままでは10年の間で超過しかねない、とウェブサイトにて紹介している。

1.5度目標を達成するためにできること

各国政府の取り組み

IPCCの「1.5℃特別報告書」には、以下のように記載されている。

The avoided climate change impacts on sustainable development, eradication of poverty and reducing inequalities would be greater if global warming were limited to 1.5°C rather than 2°C, if mitigation and adaptation synergies are maximized while trade-offs are minimized (high confidence).

もし地球温暖化が 2℃ではなく 1.5℃に抑えられ、また、もし緩和と適応の相乗作用(シナジー)が最大化されつつ負の影響(トレードオフ)が最小化されるのであれば、持続可能な開発、貧困撲滅及び不公平の低減に対する気候変動による影響は、より大きく回避されるだろう(確信度が高い)。

引用元:1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化

COP27では1.5度目標に対する厳しい現状があらわになってしまったが、地球温暖化を食い止めるためには、1.5度目標を達成するために行動し続けることが重要であり、そのために世界各国が動き出している。

たとえば、G7は2030年までに石炭燃料を段階的に廃止、2035年までに電力部門を脱炭素化する公約を出すことを検討した。欧州連合(EU:European Union)は、2035年にガソリン車の新車販売を、ハイブリッド車も含めて事実上禁止する案を発表している。

企業ができる取り組み

企業の取り組みにはSBTが挙げられる。SBT(Science Based Targets、科学と整合した目標設定)とは、パリ協定の水準に整合する、企業における温室効果ガス排出削減目標のことで、企業や投資の温暖化対策を推進する国際機関やNGOなどが運営するプラットフォームWMB(We Mean Business)の取り組みのひとつである。

SBT認定のメリットは、温室効果ガスの排出を削減することで、気候と地域社会を守ることに貢献できること、またパリ協定に整合する持続可能な企業であることを投資家や顧客、従業員などにアピールできることなどが挙げられる。

2022年12月1日現在、日本のSBT認定企業は309社、コミット企業(2年以内のSBT設定を表明)は66社となっている。

個人ができる取り組み

個人でできる取り組みには、家庭から排出されるCO2の削減が挙げられる。家庭から排出されるCO2のほとんどが電力、ガス、ガソリンの消費からきている。電気や自動車の利用量を減らしたり、古い家電を省エネ型に切り替えたりすることで、CO2削減に貢献できる。また太陽光パネルを設置して再生可能エネルギーを増やす、再生可能エネルギーを重視する電力会社を選ぶなどの方法も挙げられる。

地球温暖化の原因は人間の活動であることが明白になった今、人間ひとりひとりの行動で、地球温暖化を食い止めることが求められている。

【参照サイト】1.5℃に向けて
【参照サイト】1.5℃の地球温暖化:気候変動の脅威への世界的な対応の強化
【参照サイト】【解説】COP26の焦点 平均気温の上昇「1.5度」とは?|NHK NEWS WEB
【参照サイト】Climate change: IPCC report is ‘code red for humanity’ – BBC News
【参照サイト】AR6 WGI Headline Satements from the Summary for Policymakers
【参照サイト】G7気候相会合、石炭の段階的廃止と電力脱炭素化を公約も=草案 | ロイター
【参照サイト】EU、2035年までにガソリン車の新車販売禁止-EVシフト加速 – Bloomberg
【参照サイト】環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組
【参照サイト】4-06 家庭からの二酸化炭素排出量(2020年度)




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