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慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)とは・意味

慈悲的性差別(べネヴォレント・セクシズム)

慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)とは?

慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム:Benevolent Sexism)とは、一見善意や親切心のように見える方法で表現された性差別のこと。例えば、「女性のためにドアを開ける」「重い荷物を持ってあげる」などの行為がそれにあたる。

「親切な」「優しい」「慈悲深い」といった意味を持つ「ベネヴォレント(Benevolent)」。「女性は弱く繊細な存在だから男性が保護し養ってあげないといけない」等、騎士道精神や伝統的な父権主義の価値観から、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)は生まれた。一見優しさのように見えるが、「女性は男性に対して劣る存在だ」という考え方を前提とした性差別である。

慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)の例

善意のように見える性差別とは、具体的にどのようなことだろうか。ベネヴォレント・セクシズム(慈悲的性差別)の例として、以下が挙げられる。

  • 女性のためにドアを開ける
  • 女性の重い荷物を持つ
  • 小さな子どもがいる女性に、大きな負担が伴う仕事や難しい仕事を任せない(子どもといられる時間を増やすため)
  • 女性の容姿を褒め、「旦那様は幸せ者ですね」と発言する

その根底には、以下のような思いこみがあると考えられる。

  • 女性は大切に扱われるべきであり、男性は女性に対してレディファーストを心がけるべきだ
  • 女性は優しいから子育てや介護など家族のケアに向いている
  • 女性は美しく愛されるべき存在であり、化粧や着飾ることが推奨される
  • 男性は女性を守るために強くあるべきだ
  • 男性は女性を庇護し養うべきだ

慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)の問題

一見悪意ではなく親切心のように見えることから、性差別として問題視されにくい、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)。敵対的な表現や態度を伴う性差別と比べると、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)は社会的に許容されやすく、また恋愛時に相手に求める要件として女性から支持されやすい、という研究結果もある。

しかし、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)の前提は、「女性は弱く劣る存在」「女性は男性に対して従属的な存在」という男性優位の考え方だ。敵対的な性差別とは真逆のように見えるかもしれないが、補完的なイデオロギーとして社会に浸透しているのだ。

また、一見善意に見える表現で性差を正当化することで、男女の不平等を助長し、個人の能力や意思の軽視に繫がる恐れがある。

まとめ

悪意や敵意を感じにくく、好意的にも感じられることから、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)は社会的に許容されやすいのが現状だ。しかし、性差別を解決し男女平等を実現するにあたり、避けては通れない問題でもあるだろう。

【参照サイト】Benevolent and Hostile Sexism in Social Spheres: The Impact of Parents (Frontiers in Sociology、Mastari, L., Spruyt, B. and Siongers, J. 著、2019)
【参照サイト】An ambivalent alliance: hostile and benevolent sexism as complementary justifications for gender inequality (American Psychologist、Glick, P., and Fiske, S. T. 著、2001).
【参照サイト】Why is benevolent sexism appealing? associations with system justification and life satisfaction (Psychology for Women Quarterly、 Connelly, K., and Heesacker, M.著、2012)




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