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カバークロップとは・意味

農業

カバークロップとは?

カバークロップとは、主作物の休閑期や栽培時に、土壌浸食の防止や土壌への有機物の供給などのために、畑の空いているスペースに栽培される作物のこと。カバークロップ自体は収穫の対象にはならないため、比較的管理が容易である。

代表的なカバークロップとして、ヒエやライムギなどのイネ科の作物、レンゲなどのマメ科の植物、そしてアブラナなどが挙げられる。

カバークロップの主な利用目的

それぞれのカバークロップには、播種する時期や地域があり、期待される効果も少しずつ違っている。期待される主な効果として、大きく4つ挙げられる。

1. 緑肥効果
マメ科の作物は、根に根粒菌が着生していて、空気中の窒素をアンモニアなどに変えて土壌に固定する。そうすることで、土壌に生息する微生物の働きが活発になる。

イネ科の作物は、長い根を張ることで、土壌に有機物を多く産み出す働きがある。そして、有用な有機物が増殖することで、土壌病害の軽減などにもつながる。

2. 土壌の保水効果
カバークロップは、土壌中に団粒構造を形成する働きがある。土壌の団粒化により、水の通り道ができることで、土壌の保水性を上げることができる。

3. 有害線虫の密度抑制
カバークロップの種類によって、虫を寄せ付けない効果がある。例えば、イネ科のアウェナストリゴサは、根菜類の大敵であるキタネグサレセンチュウに対して、密度抑制効果がある。

4. 雑草制御効果
カバークロップは被覆力が高く、特にマメ科のセスバニアは、草丈が高く土壌を広く覆えることから、雑草対策として耕作放棄地の管理に有効である。

「土を育てる」著者ゲイブ・ブラウン氏は、環境にやさしい農業を行う原則について、「土を覆う(被覆作物を植える)」ことや「土のなかに『生きた根』を保つ(一年中、何かしらの植物を育てる)」ことを挙げる。

有機物や微生物の少なくなった土を、元の肥沃な状態へと育てていく必要がある。そのために、カバークロップは不可欠なのだ。

土壌改良に伴う相乗効果と懸念

カバークロップを利用したリジェネラティブ農業(環境再生型農業)は、空気中の炭素を土壌に隔離できることから、温室効果ガス削減との相乗効果が図られている。

農研機構の研究によれば、世界の農地の土壌炭素量を最大127.8億トン増加できると推定されえる。2019年における、世界の二酸化炭素の総排出量が約335億トンであることを考えると、非常に期待がもてる取り組みだ。

しかし、独立行政法人農業環境技術研究所の白戸康人氏は、温室効果ガス削減の取組において、二酸化炭素だけに注目するのでは不十分であると指摘する。

例えば温室効果ガスの1つである一酸化二窒素は、化学肥料や有機物として投入される窒素の量が多い土壌ほど発生量が多くなる。有機物の投入量を増やすと土壌炭素量は増加するが、マイナスの効果も予想される。

カバークロップは、環境にやさしい農業を行うのに必要な手段であるが、生態系とのバランスも考慮しながら活用される必要がある。

【関連記事】リジェネラティブ農業に取り組む農家が、カーボンクレジットを販売できるサイト「CIBO Impact」
【関連記事】リジェネラティブ農業の成功要因は?コスタリカ「Regenerate Costa Rica」の実践から考える
【参考サイト】環境保全型農業のためのカバークロップ導入の手引き
【参考サイト】カバークロップ名あいうえお順索引 | 中日本農業研究センター (naro.go.jp)
【参考サイト】農地による炭素貯留について
【参考サイト】農地への土壌炭素貯留と温室効果ガスの削減のために
【参考サイト】(研究成果) 農地の炭素量増加による3つの相乗効果を世界規模で定量的に推定 | プレスリリース・広報
【参考著書】土を育てる〜自然をよみがえらせる土壌革命」




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